第15話 この気持ちにもし名前をつけるなら
ホームルームも終え放課後になれば詩花は立ち上がり「じゃあ私帰るねばいばい」とクラスメイトに告げて教室を出た。「悪い俺も帰る!じゃあな!」と詩花を追いかけるように教室を出て行った蓮をクラスメイト達は見送ったあと「あれ、いつくっつくかな?」「もう少しなんじゃない?」「でも詩花ちゃん恋しないって決めてるって言ってたじゃん」「でもそのうちくっつくでしょ。」と噂をしていた。
「皇!」と蓮は肩で息をしながら詩花を呼んだ。詩花はその声に振り向き「ゆ……杠葉くん?どうしたの?」と瞬きをしながら問いかけた。蓮は額の汗を軽く拭ったあと「お前と帰りたかったんだよ。いろんな話もしたかったし」と笑いながら言った。その言葉に詩花は目を逸らしたあと「じゃあ……一緒に帰ろ杠葉くん」と告げて2人は歩き出した。
「そーいや俺の苗字呼びずらくね?名前でいいよ」
「えっでも……」
「いーから。1回呼んでみ?」とやり取りをした後詩花はその場で立ち止まり「……蓮くん」と呼んでみた。すると蓮は嬉しそうに笑みを浮かべながら「おう!」と返事をした。その笑顔に詩花は少し顔を赤くさせながら俯いた。暫く沈黙が流れたあと「……帰ろうぜ。」と蓮が告げたあとまた歩き出した。すると、蓮がコンビニの前に立ち止まり「なぁ寄ってかね?」と笑いながら言った。詩花は頷きながら「私学校の帰りにコンビニ寄るの初めて……」と告げた。蓮はその言葉に笑えば2人でコンビニの中に入っていった。
「皇は何買う?」
「勉強する時に食べるお菓子とか買おうかな……杠葉くんは?」
「俺?俺はなんか適当に……って名前。」
「あっごめん」といったやり取りをしながら2人はお菓子やジュースを選び会計を済ませた。
「じゃあ俺持つから。お菓子は皇の家着いたら渡すな」と蓮は笑いながら言ったあとまた歩き出した。詩花はそれを追いかけるように歩き出せば考えていた。この気持ちには覚えがあった。名前を呼び、名前を呼ばれる度に感じる胸への締めつけ、脈打つ鼓動、所謂『恋』と呼ばれる感情だった。だが、詩花はぶんぶんと首を横に振り必死に忘れようとした。その様子を見た蓮は「皇?どうかしたか?」と問いかけた。詩花は咄嗟に笑みを浮かべ「なんでもないよ……蓮くん」と告げ、何も知らない、気づかないふりをした。詩花にとって、この感情は不要なもの、あってはならないものといった思考が離れずにいた。
この気持ちにもし名前をつけるなら『不要なもの』が1番だと思いながら詩花は蓮の隣を歩いた。
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