Another story10〜文化祭本番編5〜

詩花がシンデレラと名乗った時、観客席からは小さな歓声が漏れ聞こえた。


「どうか、私の妃になっていただけますか?シンデレラ。」


「……私は……私は一国の姫ではありません。ただ、貴方のことを愛してしまった何も取り柄がない普通の娘です。それでも私を妃にしてくださいますか?」


「あぁ……あぁ!勿論!君がいい。君しかいない!」


蓮がそう告げればそっと手を差し伸べた。その手に詩花は瞬きをしたあと笑みを浮かべそっとその手に自分の手を重ねゆっくりと立ち上がった。



「さぁ、行こうかシンデレラ」


「……はい」


詩花はにこりと笑みを浮かべた後、蓮と一緒に歩き出したあとくるりと継姉役であるクラスメイト達の方へ振り向いてみせた。


「シ……シンデレラ……そのっ……」


「許されないとわかっているわ。でも……ごめんなさい」


2人はゆっくりと頭を下げてシンデレラの言葉を待った。詩花は笑みを浮かべ2人の方へ近寄って「お姉様……私は貴女方を許します」とだけ告げて蓮と共に舞台袖へと戻って行った。




その後、継姉や継母役のクラスメイト達のセリフが終わり舞台のライトがゆっくりと消えていき観客席からは大きな拍手と歓声が響き渡った。暫くしてから舞台上が明るくなり詩花や蓮、メインキャストを務めたクラスメイト達が舞台に上がるともう一度大きな歓声と拍手が響いた。


「王子役!杠葉 蓮!」


「シンデレラ役 皇 詩花」


役名と自分の名前を全員が言い終えたあと蓮と詩花は顔を見合せて「せーの!」と声を揃え合図を促せば「ありがとうございました!」とキャスト全員で言った。歓声と拍手が響くなかブザーが鳴り響き舞台の幕がゆっくりと降りていった。



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