第5話 デッサン開始

美術室に着いた詩花はキョロキョロと周りを見たあと「これって席順とかは決まってるの?」とクラスメイトの男子に問いかけた。男子生徒は「いや自由だぜ。」と答えた。 詩花は出口から1番近いところに座れば少し遅れて蓮が美術室に着いた。「おい蓮おせーぞーw」と男子生徒が揶揄うように言えば「うっせーよw」と笑いながら告げたあと詩花の前に座った。

「あっもしかしてここ誰か座る予定あった?」

「んーん。空席だったから杠葉君が座っても大丈夫だと思う。」

「そっか。」

蓮と詩花が近くのクラスメイト達と話していると美術教師が入ってきた。

「はーいじゃあ日直さん挨拶お願いね」

「起立、礼、よろしくお願いします」美術教師の合図で日直が号令をかければ生徒たちは席に着いた。

「じゃあ今日は……前に座ってる人のデッサンをしてもらいます。イーゼルとキャンバスは準備室にあるから取りに来てね」と教師からの指示が出れば生徒達は準備室に向かった。男子生徒のひとりが「皇は座ってろよ。俺が取ってくるから」と告げれば詩花は瞬きしたあと「ありがとう助かる……ごめんね」と告げたあと男子生徒を見送った。


暫くすればクラスメイト達はデッサンに取り掛かった。詩花も同様に目の前に座った相手……蓮をしっかり見ながらデッサンを始めた。それを見たクラスメイトの女子が「うわ皇さんすっごい上手!」「さすが元美術部……」と詩花のキャンバスを見ながら言った。

「そ……そうかな……なんか照れるね」と詩花は少し照れくさそうに笑いながら言った。

「おい蓮羨ましいぞ皇に描いて貰えるなんて!」

「たまたま前の席座っただけだってーの!」と蓮は男子生徒達と騒ぎながら筆を進めていった。


「杠葉君。私の方は出来たけど……杠葉君はどう?」と詩花が蓮に問いかければ「出来た。んじゃ見せ合おうぜ」と蓮が言ったあと2人は同時にキャンバスを見せた。蓮のキャンバスには笑っている詩花が、詩花のキャンバスにも笑っている蓮が描かれていた。それを見たクラスメイト達は「蓮お前絵得意だよなくっそ」「へへーん!」と騒いでいる横で詩花はクラスの女子に囲まれていた。「皇さん凄い……!」「どうすればこんなに上手く描けるの?」等、詩花に質問をしていた。詩花はそれに1つづつ答えるように「前の学校が美術系に強いところだったから……それに絵が好きだから……」と答えれば照れくさそうに笑った。

美術教師がちらりと時計を見ればチャイムが鳴った。「今日はここまで!また来週」と号令をかけたあと「皇さんはイーゼルとキャンバスそのままでいいわよ。後で先生がしまっておくから」と告げた。

「ありがとうございます先生。」と詩花が短く言ったあとクラスメイト達に急かされるように教室へと戻った。

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