第12話 初めての寄り道
詩花はクラスメイト達とカラオケ店に来ていた。転校、いや詩花にとって初めての友達との寄り道に嬉しそうに笑みを浮かべながらクラスメイト達の歌を聞いていた。「詩花ちゃんカラオケ初めて?」と歌っていないクラスメイトに聞かれれば詩花はこくりと頷き「前の学校には友達居なかったから……寄り道も考えてなかったよ」と告げた。その言葉にクラスメイトは詩花を軽く抱きしめたあと「私たちもう友達じゃん!これからもいっぱい寄り道しようね!」と笑みを浮かべながら言った。その言葉に詩花は瞬きをしたあと何度も頷いた。
「次、皇も歌ってみたら?」
「詩花ちゃんの歌聞きたい!」と蓮とクラスメイトの言葉に少し悩んだあと「じゃあ少しだけ」と告げればマイクを握った。詩花はすぅっと息を吸いそのまま歌い始めた。クラスメイト達はその声に瞬きをしたあと目を閉じ詩花の歌声を聞いていた。暫くして歌い終えればクラスメイト達の反応が無いことに首を傾げながら「え……えっと大丈夫?」と少し不安げな表情を浮かべながら問いかければ蓮が「皇すっげー歌上手いのな!」と笑みを浮かべながら言った。その言葉に詩花は少し顔を赤くさせながらも嬉しそうに「あ……ありがとう」と告げた。
外に出れば辺りはすっかり暗くなっており詩花とクラスメイト達はカラオケ店前で別れた。はずだったが蓮だけその場に残った。
「杠葉くん帰らないの?」
「俺が今帰ったら皇1人じゃん。それ危なくね?もう暗いし」
「大丈夫だよこれくらい……杠葉くんのお母さん心配するんじゃ……」
「俺が残りたくて残ったんだから良いんだよ。」
といったやり取りをしていれば車のクラクションの音が響いた。運転席から詩花の母親が「詩花お待たせ」と声をかけた。「あっお母さん。杠葉くん私行くねカバン持っててくれてありがとう」と告げれば詩花は母親の車に乗り込んだ。「皇!」と蓮が少し慌てた表情を浮かべながら名前を呼べばスマホを取り出し「連絡先!さっき交換すんの忘れてた!」と告げた。その言葉に詩花は瞬きをしたあと頷きスマホを取り出した。
「よし皇の連絡先ゲット。あとでクラスのグループにも入れとくな」と笑みを浮かべながら言ったあと「じゃあまた明日な!」と言い残し蓮は駅へ向かった。詩花はその様子を見送ったあと少しだけ赤くなった顔を母に見られないように下を向いた。「あの子いい子ね詩花。」と母の言葉に「……うん。」と返せば車の窓の外に流れる光をぼーっと見つめた。
『……杠葉くんの連絡先貰えて嬉しい……なんてまるで杠葉くんが好きみたい……そんな事あってはいけないのに……』と心の中で思いながら帰路へ着いた。
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