最終話 義足の少女は恋をする

次の日、詩花は少し緊張しながら登校していた。どう返事をしようかと一晩中ベッドの中で悩んでいた。そのせいか、目の下には薄いクマが出来ていた。詩花は小さく息を吐き、『ちゃんと言わなきゃ……』と心の中で呟いた。



学校に着いた詩花は少し息を整えて教室のドアを開いた。クラスメイト達は詩花に「おはよ皇」 「おはよう詩花ちゃん!」と声をかけた。詩花は笑みを浮かべながら「うん。おはよう」と答えた後席に座ろうとした時、「間に合ったー!」と蓮の声が響いた

「おーおはよう杠葉。」「珍しいじゃんお前がこの時間に来るって」とクラスの男子たちが笑いながら言った。詩花は少し悩んだあと、「蓮くん。お昼休み……時間あるかな?」と問いかけた。蓮は瞬きしたあと頷いた。その頷きに詩花は少し安心した表情浮かべた。


時間はすぐに過ぎ、あっという間に昼休みになった。詩花はゆっくり立ち上がり蓮のところへ向かい「蓮くん……いいかな?」と問いかければ蓮も立ち上がり、2人で屋上へ向かった。

ガチャリと屋上のドアを開けた瞬間、澄み渡った綺麗な空が見えた。蓮は少し息を吐いたあと「詩花……話って?」と問いかけた。詩花は肩を揺らしたあと真っ直ぐと蓮の方を向き「昨日の返事……しようと思って」と告げた。その言葉に蓮は小さく頷いた。詩花はゆっくり口を開いた。

「私……蓮くんに好きって言って貰えて凄く嬉しかった。学校を案内してもらった時初めて歩幅を合わせてもらってとても嬉しかったの。でも同時に怖かった。私には恋なんてしちゃいけないと思ってたから」詩花は一瞬目を伏せて告げた。蓮はその言葉に否定しようとするもすぐに詩花は口を開いた。

「でもね、蓮くんの事好きだって……大好きだって気づいたの。何度も諦めようと思った、何度も忘れようと思った。でも……ダメだった……私の中で蓮くんが大きな存在になってたの。」詩花は真っ直ぐと、目を逸らさず蓮に告げた。その言葉に蓮は瞬きしたあと目を逸らさず詩花を見つめた。

「蓮くん……私は義足だし……俗に言う幽霊とか見えちゃうけど……それでも私と付き合ってくれますか……?」詩花のその言葉は震えていた。蓮は笑みを浮かべたあと「幽霊が見える?そんなの関係ない。義足?そんなの関係ない詩花は詩花だ。」と告げた。そして「俺は詩花だから好きになったんだ……詩花。俺と付き合ってください」と優しい声色で告げた。詩花はその言葉に目を潤ませ「っ……はい……!」と笑みを浮かべながら大きく頷いた。

「これからよろしくな。詩花」蓮はそう言って詩花の手の甲にそっとキスを落とした。手の甲に落とされたキスに詩花は顔を赤くさせながら「こ……こちらこそ……」と告げた



ℯ𝓃𝒹

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