第43話 地雷を踏みまくるギルマス

「そうだな、欲をいやあレッドドラゴンの皮と骨と鱗・あればバジリスクの牙・鋭い爪・腱・ユニコーンの角と毛、それと・・マジか! デーウの爪を持って帰ったのか、最高だぜ」


「レッドドラゴンの素材なら持ってます。あとは、バジリスクとユニコーンか・・」




「今度は杖だな。コイツは芯と木を選ぶ。

ミイに貸したやつはユニコーンの毛とアカシアで出来てる。安定して強い魔法を放てるやつだ。


芯に使うのは、


 ・ユニコーンの毛は、忠実・安定

 ・ドラゴンの心臓の琴線は、最強の芯・派手な魔法

 ・不死鳥の尾羽は、希少・広範囲の魔法の種類

 ・その他にはセストラルの尾毛、角水蛇の角


こんな感じだな。


それから、使う木の素材はすっげえあるぞ。


 ・ヒイラギ 所有者を守る

 ・アカシア 所有者に忠実、強い魔法

 ・トネリコ 所有者に忠実

 ・ハンノキ 無言呪文

 ・クリの木 専門職向け

 ・ニワトコ 強力な魔力

 ・ヤマナラシ 戦い向け、魔法力高い

 ・ナナカマド 最強の防御魔法


まあ、他にも腐るほどあるがオススメはこの辺りだ。

ヨーロッパナラの木は魔法使いのマリーンが使ってたと言われてる。

ミイが薬師だって事を考えたら、クリの木とドラゴンの心臓の琴線なんてのは薬草研究者が涎を垂らすだろうな」



「・・多過ぎて、どうしよう」



「ミイなら二本持っても良いかもしれん。薬草採取ん時はクリの木で、それ以外の時用には攻撃力重視のやつ。アカシアかニワトコなんかはどうだ?

木を直接持ってみた方が良いからな、ある程度絞ったらここに持って来れる」



「そうですね、確かに触ってみたいです。ではアカシアとニワ「ディー、お前何持ってやがる!」」



 突然ガンツが立ち上がりディーに向けて怒鳴った。ディーはフェンリルの上を飛び回りながらキョトンと首を傾げている。


「おま、お前それ・・その木」


「貰ったの、良いでしょ?」


 ディーはふわふわとやって来て、机の上を飛び回りながら木の枝を振り回している。


「前のやつはもっと短くて細かったよな」


「うん、あれはお遊び用。これは戦い用なの。先っちょのちっちゃい葉っぱが可愛いでしょ?」


 ガンツの目の前で枝をフリフリとみせびらかしている。




 暇つぶしにユグドラシルに何度か遊びに行っていたディーは、フレースヴェルグラタトスク栗鼠と仲良くなったと話してくれた。


 その時ディーが木の枝を振り回していたら二本の木の枝がユグドラシルからハラリと落ちてきた。

 不思議に思っているとフレースヴェルグが、


  『ユグドラシルからのお礼だって』


と教えてくれた。


 ニーズヘッグに根をあまり齧られなくなったのが嬉しかったとか。



「で、で? 貰った・・マジかよ」



「ミイのもあるよねー」


「えっ? あの木ってディーから預かっただけだと思ってた」


「ひどーい、ディーとお揃いなんだよー」


 ディーが頬をぷくっと膨らませた。



(かっ可愛い、可愛すぎる)


 ソフィアの目がディーに釘付けになった。




 ミリアがアイテムバックから木の枝・・ユグドラシルの枝を取り出すと、ガンツが枝を見ながらうっすらと目を潤ませ『よし、よし。よっしゃあ』と呟いていた。


「こっコイツを使って、ささ最高のワンドを作るぜ。ドラゴンの心臓の琴線もあるし。

ユグドラシルの枝を使った杖なんぞこの世界にゃ一本もねえ、間違いなく」



 ガンツはその後も『一生の夢が叶う』とか『伝説の杖』とか呟きながらニマニマ一人で笑っている。



「ガンツぅ、その顔怖いよぉ」



 すっかり怯えてしまったディーはフェンリルのもふもふに隠れて出てこなくなってしまった。



(あ、モフモフ・・いいな)



 未だ勇気がなくてフェンリルにもふもふをお願いできていないミリアだった。





 ガンツが素材を持って工房へ帰ることになったが、これだけ貴重な素材が集まると一人では不安だと言い出した。


「ならソフィア一緒に行って来い」


「えっ、冒険者に頼んだ方が良くないですか? 私じゃ何かあっても戦えませんし」


「いや、お前のならAランクはいける。下手に冒険者連れて歩いたら目立つしな」



「だったら帰りにうちにあるコンポジット・ボウを持って帰って貰えば練習に使えるな」



 納得がいかない顔のソフィアだったが、やると決めた途端気合の入った顔でガンツとギルドを出て行った。



「はあ、疲れたな。ちょい昼寝でもするか」




「あ、あの。さっきはすみませんでした」


 ソファにゴロンと横になっていたギルマスは、突然頭を下げたミリアを見て不思議そうな顔をしている。


「あの、きっ着替えをその・・」


「ん? ああ、気にすんな。そんな前も後ろもわからんようなの見ても・・うわ、魔法はやめ! 冷え」


 ミリアから冷気が飛び出し、ギルマスがガチガチと歯を鳴らしながら飛び起きた。


「前と後はわかりますから」


「わっわかったから、ちびはナイスバディだ! なっ、ディーもそう思うよな」



「思わなーい、ミイちゃんはち○ぱいだもん。ふふ」


 フェンリルの中から飛び出して嬉しそうに笑うディー。


「おま、禁句。今はダメ俺凍死するから、夏の街中で凍死する! 落ち着け、ちっこいのはいいぞー・・ぎゃあー」




 

 はあ、と大きなため息をついたギルマスが冷えた身体をさすりながら、


「お前そんなんで貴族とかよくやってられたな。あの澄ましたようなくそムカつく話し方とか出来んのかよ」



「あら、郷に行っては業に従えと申しますわ。

ギルドマスターにはお出来になりませんの?

それではお困りになられる事もございますでしょう?

そう言えば先日ソフィア様からお聞きしたのですが、ギ「わかった! すまん」」



 ミリアに完敗したギルマスだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る