第21話 頭を抱えるギルマス

「じゃあ、ドリアードとトレント呼んでくるわね」


「行かなくてもいい。おい! ドリアードいるんだろ。出てこいよ!」


 ケット・シーが怒鳴ると少し離れた場所にふわっとドリアードが現れた。


(あっ、やっぱ可愛い)


「うるさいわね、怒鳴らないでよね」



「ドリアード、トレント達に戻って来れるよって連絡したいの」


 ミリアが言うと、えっへん! と胸を張ったドリアードが、


「もうこっちに移動してる。でも、ここ凄く臭い」


 確かに、猫のおし○このにおいがする。


「じゃあ、私が綺麗にするね。これからは別の所でして貰えばいいし」


 ミリアは何度も場所を移動しながらクリーンの魔法を重ね掛けしていった。



 ザワザワと音がしはじめトレントが戻って来た。


「言っとくけど、ミリアとは知り合いじゃなくて友達だからね」


「ありがとう」


「こっちこそ、ありがとう。ここの場所好きだったの」


 頬を赤く染めて含羞はにかむドリアードは超絶美少女だった。

 それを見たケット・シーが顔を赤らめたような気がした。



(黒猫だから分かんないけどね、なんとなくそんな気がしたのよね)



「大変! ネトルの葉を採取して帰らなくちゃ。馬車に乗り遅れちゃう」


 ミリアが慌てると、


「あたしが送ったげる! だから、あたしにもコンフェッティちょうだい」






 馬車に乗り遅れたミリアだったが、ドリアードのお陰でネトルの葉を採取して街の関所前に辿り着いた。



 突然現れたミリアを見た関所の兵士が驚いて、

「お前今どこから出てきた?」


「あっ、えー。私ちっこいから見えなかったのかも」


「そうか、そうだよな。突然現れたのかと思って吃驚した」


「はは、まさか」





 ギルドの入り口のドアを開けると大勢の冒険者がいて、小柄なミリアからはカウンターが見えなかった。


 巨大な冒険者の横をすり抜け、大楯を持った巨人を躱して・・漸くカウンターに辿り着いた。

 ミリアが短めの列に並ぶと、ソフィアがこっちに並べと手で合図をしてきた。



「完了報告したいんですが?」


 ネトルの葉をカウンターの上に乗せると、ソフィアの仮面が外れた。


「とっトレントは?」


「いなくなりました。で、それも完了報告です」


「はあ? ちょーっと待っててくれる?」


(すっごくやな予感がする・・)



 ソフィアが二階に駆け上がって行った。


(やっぱり)



「ちびすけ! 上がってこい! ん? 逃げたか?」


(はあ、やっぱり。逃げてないし、登録名はミイだし)



 渋々階段を登ってギルマスの部屋に入った。


「トレント討伐完了だと?」


 ソファを指差しながらギルマスが怒鳴った。


「討伐してません。元の住処に帰りました」


「・・さっぱりわからん」


「トレントって元々余程のことがない限り住処は変えないじゃないですか。

だから元の住処に帰ってもらっただけです」


「どうやって? それから後ろのそれは何だ?」


 吃驚して後ろを振り返るとドリアードがふわふわ浮かんでいた。


「どうしたの? 何かあった?」


「面白そうだからついてきたのー」



 ミリアはギルマスの方に向き直り、


「だそうです」


「じゃねえよ! お前は精霊使いか?」


「まさか、この子は友達です」


 堂々と宣言したミリアの後ろでドリアードが頷いている。


「そう、友達になったのー。ケット・シーも友達だって言い張ってるけどねー」


「・・」


 ギルマスが頭を抱えた。


「それはともかく、これで二件と言う事ですよね」


「何が? あっ、ああそうだな。ぶったまげすぎて忘れてた」



 ミリアは立ち上がり、「じゃ、そう言う事で」と言いながら部屋を後にした。



「昼から出かけて夕方までにトレント討伐・・引っ越しさせてきた。

訳わかんねえ」





 ギルドを出たミリアは宿に戻ることにした。

 ドリアードの姿は見えないので帰ったのか姿を隠しているのか、どうも後者の気がする。


 宿は二日分の宿代しか払っていないので、もう一週間分の宿代を前払いしておいた。



 部屋に戻ると案の定ドリアードが姿を現した。


「なんにもないとこねー、ここに住んでるの?」


「ここは宿と言って、仮の住まいって感じかしら。荷物は全部アイテムバックに入っているの」


「ふうん、ねえこれからどうするの? ずっとここにいる訳じゃないんでしょー?」


「ええ、ここでもう暫く依頼を受けたら別の国に行く予定なの。その国で仲間に会えるはず」


「どうして直ぐに行かないの? なんで家に帰らないの?」



 ミリアはドリアードに今までの経緯と現状、今後の予定を簡単に説明した。


「酷い! ローデリア最低、あたしがぶっ潰してあげようか?」


 真っ赤な顔でプンプンと怒りまくるドリアードは右に左にと瞬間移動している。



(えっ? 出来るの? 精霊って凄い)



「自分の手でやり返すつもりだから」


「そっかぁ楽しみ~。頑張ってね」


「ありがとう、一人も許さないから」


「うん、それとここから移動出来ないのは今日会ったおじさんのせいって事ね。

今日のお礼にぶっ飛ばしとけば良かった」



「ありがとう、それは気にしないで」


「ところで、Bランクって何?」


「魔物の強さのことよ」



「ふむ、だったらあたしが手伝ったげるね」






(ドリアードとパーティー組んだって事?)

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