第9話・一歩前進

シールディアが目を覚ました喜びを分かち合おうという気持ちにはなれなかった。一人の罪の無い明るい未来が待っている筈だった少女、リイロがこの世を旅立ってしまったからだ。リイロと関わりのあった人が教会に集まり、悲しみを分かち合った。今回の件を受けて村の教会やシールディア達教会関係者に対して疑念を抱く村人が現れた。教会のお陰で村が守られていると言われながら、闇による死者が現れた事により、この村の教会を解体して教会関係者のシールディア達を村から追い出すか村人達の目の前で火で焼き殺かという活動団体が村の中で出来た。


レフト、シールディア、アスモ、サニーンは教会から繋がっている隠し部屋にて、今の状況の整理と今後の計画を練っていた。

「俺が村の人達を説得してやる。 事の発端は俺にある」

サニーンが開口一番に言ったが、今の状況だと火に油を注ぐ事になるのがほぼ確実の為、三人は揃ってそれを却下した。サニーンは意識無しにやった行いだったと言えど、反省しており、村人に毎日頭を下げては村人にぶん殴られたり冷水を被せられたり酷い仕打ちを受けていた。


「教会の守りを強める事は出来ないんですか?」

アスモはシールディアにそう聞くと、シールディアは何やら一つ方法があるらしく、部屋にあった古い本を取り出した。そこにはこの村の成り立ちや教会の力でどうやって村を守ってきたか書かれていた。


その本の字は今は使われてない古い文字だった。その文字をシールディアだけ読む事が出来たため、本の内容を読み上げ始めた。




ソムサヂ村が出来る前にその土地には神殿があった。ある日神殿に一人の男が現れた。その男の暴動により、神殿は破壊されてさら地になってしまった。そこからは何年も放置されてしまったが、旅人がさら地に一つの芽を見つけた。その芽からは巨木が育ち、その巨木を見て旅人は決心してここに村を作った。村は少しずつ大きくなり、旅人だった長老は亡くなり、その息子が教会を村に作る事を決めた。教会は何十年も掛けて作り、やっと出来た次の日に長老の息子は病に掛かった。病に掛かったのは教会のせいだと、一人の村人が夜に教会の中に忍び込んで火を付けた。教会はあっという間に全焼してしまった。後日、長老の息子の病が急に治って、長老の息子は複雑な思いに駆られた。悩んだ結果に村の高台から身を投げ出して自殺を図った。しかし、身を投げ出した高台の真下には女がいた。女からは未だに感じた事が無い心が洗われそうなオーラを放っていた。その女と目が合って急に意識が無くなると、暫くして意識が戻って気が付くと村で寝ていた。外に出ると、全焼したはずの教会があり、以前作った教会よりも大きく、村の空気が綺麗になっているのを感じた。




「その高台がここだ」

レフトとシールディアは本に書かれていた長老の息子が自殺を図ろうとした高台にやって来ていた。見下ろすと、下は真っ暗で何があるのか分からない状態だった。二人は近くにあった下り坂を利用して、女がいたと思われる所まで下りて行った。すると二人は違和感を感じて歩きを止めた。空間が捻れている”ダンジョン”の入口を見つけた。ダンジョンの入口は道中でまだ先に道が続いて見えた。シールディアは懐から綺麗な施しを得た石をを出した。その石「#火光石__ひこうせき__#」の内部がまるでとろ火の様に弱く発光した。

「これが光れば光るほど危険なダンジョンという仕組みだ。 あの時に持たせておけば良かったわね……」

シールディアは過去の禊の森の遺跡のダンジョンの事を悔いていた。レフトはこのダンジョンに挑むかと尋ねると、シールディアはちょっとした実践訓練になるだろうと挑む事に決めた。レフトとシールディアは剣を手に取り、ダンジョンの中に入った。




着・不届き山

レフトとシールディアの目の前には突如、山が現れた。二人がいるのは山の入口で「不届き山」の立て札があった。シールディアは念の為、火光石を懐から取り出したが、先程同様とろ火の様に弱く発光した。シールディアの発案でレフトが優先的にダンジョンにいる魔物に攻撃する事になり、レフトの後ろにシールディアが着いていくスタイルで先に進む事になった。


山の中は木々が少なく、岩山で歩きにくい道が続いていた。すると二人の目の前には体が岩石で出来ているゴーレムが二体現れた。ゴーレムは二人を認識すると直ぐに二人を攻撃しようと向かってきた。レフトはシールディアの前に立ち、目を閉じて深呼吸をした。目を見開き、左手を握りしめて魔力を込め始めた。一つのゴーレムがレフトに対して拳を振り落とすよりも早く、レフトは左手でゴーレムの腹部を殴り付けた。

「”魔力殴り”《ボディブレイク》!!」


ゴーレムは後ろに倒れ、中々立ち上がれずにいた。一方のレフトは魔力を消費して立ちくらみを起こしたが、直ぐに立ち直った。レフトはゴーレムに追撃しようとした時、また別のゴーレムが襲いかかってきた。ゴーレムの重い拳はレフトの腹部を強打して、レフトは遠くまで吹っ飛んでしまった。それを見ていたシールディアは右手を握り締めて魔力を込めた。

「拳での攻撃は苦手だけど……”魔力殴り・改”《ボディブレイク》」

シールディアの拳がゴーレムの腹部に触れるとゴーレムが粉々になった。シールディアは間髪入れずにもう一体のゴーレムも粉々にした。


この後もゴーレムが現れ、魔力を拳に込めて攻撃を繰り返したが、魔力をしっかり込めきれずに自身の拳を痛めたり、魔力を強め過ぎて直ぐに足元が覚束なくなりゴーレムから攻撃を食らったりと散々な結果が続いていた。一方のシールディアはゴーレムを次々に一掃していく上に魔力消費を抑えていた。二人はゴーレムが現れる事が無くなったのを確認して休憩を摂ることにした。レフトは持ってきていた水筒の水を一気に飲んで飲み干した。赤い空を見上げて、拳に軽く魔力を高めようとすると、レフトの拳の上にシールディアが手のひらを乗せた。

「少しずつでいい。 さっさと私を追い抜いてくれよ」

レフトは苦笑いすると立ち上がり、拳での魔力攻撃ではなく、剣での魔力攻撃の練習をする事にした。




同刻、ソムサヂ村では村人の暴動が強まっていて、教会の前には村人達で埋まっていた。教会内部では牧師はじめとした聖職者が集まっていた。牧師は指に傷を付けて一つの魔法陣を描いた。

「古の盟約を破棄及び、自由の許可を幸せを」

魔法陣は怪しく光り、魔法陣の中から何かが現れると、その場にいた聖職者達は現れた何かに殺されていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る