第22話・長旅

「結果から言うと私は”例の女”ではありません」

”例の女”とはシールディアが読んだソムサヂ村にあった古い本に出てくる人物で、村の秘密を知る為の大事な手掛かりになっていた。グレアスとは全く関連性は無くて村の秘密は知らなかった。レフトが肩を落としているとシールディアが肩を叩いた。

「いや、それを知るだけでも充分だ。 で、お前は何者だ?」

シールディアによりグレアスの話は再開され、グレアスは何故色々詳しいのかをメインに話し始めた。




瘴気は普通は存在してはいけないもので、世界のバランスを崩す存在だとグレアスは知った。教えた主はグレアスを救ったクラーケンだった。グレアスを救った日から色んな生きる術を叩き込んで浴びるように酒を呑み続けていた。瘴気で覆われた孤島”モナグア”に訪れた事があったクラーケンはそこで瘴気の恐ろしさを目の当たりにして瘴気で覆われたドラゴンが牙を剥いてクラーケンは少々苦戦を強いられた。その事は世界に知れ渡る事はなく世界からしては小さな事件として幕を閉じてその孤島はいつの間にか消えていたとクラーケンは語るとグレアスは欠伸をしながらもクラーケンの苦労を理解した。


クラーケンはグレアスと長い時間を過ごして行く中でグレアスの適性のある能力を導き出した。それは魔法陣を用いた魔力攻撃だった。グレアスの賢さと優しさ、ふと絵しりとりを二人でやった際に見せたグレアスの絵のセンスを見てクラーケンは魔法陣に関する本を街中からかき集めてグレアスに叩き込ませた。クラーケンの読みは正しくてグレアスはみるみる魔法陣を用いた魔力攻撃を身に付いていった。




クラーケンはどんどん年老いていく反面、グレアスは老けることなく少女の姿のままだった。クラーケンは何故そうなのか調べている内にある本に書かれた内容に驚いた。急いで階段を下って下の階にいたグレアスに話し掛けようとした時、グレアスは吐血して倒れていた。クラーケンは何度も話し掛けるがグレアスは無反応で焦ったクラーケンはグレアスを抱えて治療が出来る人を探しに行こうとした瞬間、グレアスの魔力が徐々に強まるのを感じた。




グレアスは濃霧の中歩いていて何処を目指しているのかは分からず、取り敢えず前を歩いていると目の前に神殿が見えてきて内部に入ると地面は芝生で奥には大きな滝があり、幻想的な空間を作り出していた。滝の裏側まで来ると更に奥へと続く通路を越えると、壁画があってそれは火山、氷山、花畑、砂漠、といった色んな自然の壁画がグレアスの心を染みさせた。正面の太陽に照らされている荒野にたった一つ芽生えた一葉の壁画へ近付こうとすると地面にあったスイッチを押してしまった。すると正面の壁画が回転すると祭壇があり、祭壇の中央には古びた本が一冊あった。グレアスは吸い込まれるように本に手を伸ばしてページをめくると真っ白で何も記されていなかった。まさかと思って次のページも真っ白で結局全部真っ白でグレアスはここはどういう神殿なのか分かる手掛かりはもう特に無いと思ったグレアスは神殿を後にしようとした時、突如神殿にあった本が光出した。


グレアスは警戒しながら徐々に近付いていくと本から声が聞こえた。

「そこの者よ。 神の力を授けるに足りるぞ」

グレアスは言ってる意味が理解出来なかったが、本からの声はグレアスの答えを待たずに話し続けた。

「もう一度本を手に取り、誓え」

グレアスは特に断る理由は無い上、断ったら何が起こるか分からないと判断したグレアスは本の言う通り、本を手に取って祭壇に向かって誓った。

「私の恩人を守れる力を下さい!!」

グレアスが誓った瞬間、グレアスの意識は現実の世界へと瞬時に変わった。

「おめでとうございます。貴方が獲得したのは”ガイア”です。」




グレアスの意識が戻る寸前に街で大地震が発生した。クラーケンはグレアスを担いで避難しようとしたが、震源がまさにグレアスでクラーケンは崩れていく地面に巻き込まれていった。どんどん下へとクラーケンは落ちる中、上に留まるグレアスに向けて叫んだ。

「強く生きろよ!! 新たな”神授魔力”を持つ者よ!!」

それがグレアスとクラーケンが一緒に過ごす時間の最後だった。




グレアスは新たな場所を求めて旅に出た。グレアスがいた街は約二十年過ごしていて色んな思い出が出来て愛おしささえもあったが、グレアスが”神授魔力”に目覚めた瞬間に地震によって街は崩壊して何十万の住民が無人になってグレアスに対して冷たい視線を注ぐ者が後を絶たなかった。クラーケンを探すにはグレアスの神授魔力を使うと容易なのは見え見えだったがグレアスが街を崩壊させた事に強く申し訳なさと後悔、住んでいた部屋に飾ってあったクラーケンと一緒に撮った写真の数々がヒビが入って割れて飛び散った瞬間が頭にこびり付いてグレアスは力を使う事に怖くて街を後にした。


隣り街は噂が既に広まっていてグレアスは即座に立ち去り、林道を歩いていると遠くで怪しげな光が見えるとその光はグレアスの方へと向かってきた。光とグレアスが触れた瞬間に光に洗脳されたかのうにグレアスの手が天に向かって手を伸ばして口を開いた。

”魔力創造・新天地”まりょくそうぞう・しんてんち!!」

グレアスが我に返った瞬間に周囲から地面が盛り上がり、魔力が周囲に湧き出るように発生して状況が飲み込めない中、ダンジョン”不届き山”を築き上げた。グレアスはここで初めて魔力を感じる事が出来てクラーケンから教わった事が現実味を帯びてもっとクラーケンの話を聞いておけば良かったと後悔していると、ふと空を見上げると空は血のように赤くて不穏な空気が漂っていた。


作ったダンジョン内には入口と出口と呼ばれるものはなく、実質ダンジョンに閉じ込められていてそこに住まう魔物を倒しながら、魔力の使い方や魔法陣を用いた魔力攻撃の実践をして経験値を上げていた。力を使う事に抵抗があったがここで死んだらクラーケンは一生許してくれないという気持ちと暇潰しを兼ねてラスボスであろうドラゴンが目の前に現れた。今までの魔物とは違って圧倒的な攻撃力、体力、スピードといった全能力の高さに苦戦しつつ、”ガイア”の力と魔法陣を利用して日が完全に落ちようとした時、ドラゴンが遂に戦闘不能になった。ドラゴンの顔はなんだか嬉しそうでその顔を見ているとグレアスもいつの間にか笑を零していた。そしてドラゴンが強い光を帯びて天へと召される時、ドラゴンがいたところには契約魔法陣が描かれていてグレアスはその魔法陣に手をかざしてその魔法陣を取得していると、ダンジョンが開く音が聞こえた。

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