第16話・連撃と雷界

化け物は筋肉質な体に派手な仮面を付け、瘴気魔神よりも遥かに上の存在だとレフトの勘は言っていた。瘴気、闇、光どれでも区別出来ず、魔力はあるものの、驚く程の魔力量とは言えなかった。居ても立ってもいられなくなったデスボダは足に魔力を集中させて化け物と距離を詰めた後に魔力を手に集中すると、化け物の溝内目掛けて攻撃した。

「”雷絶拳”《らいぜつけん》!!」

デスボダの自慢の攻撃だったが化け物は頭を搔いただけで反撃する様子も無く、ただレフト達を見つめるだけだった。


「レフトも攻撃して見ろ」

デスボダはレフトも化け物に攻撃するよう指示した。レフトの顔にはアルファベット「L」の字が未だに浮かび上がっており、魔力量も上がり、オマケに”光”の力も有している事を見込んでの事だった。レフトはシールディアから教わった剣術を思い返して連撃技を繰り出した。

「”連撃・奇味の灯火”《れんげき・きみのともしび》!!」




「連撃さえ決まればどうにかなるってもんよ」

ソムサヂ村が惨事になる前、シールディアはレフトに剣術を教えていて、様々な技を習得させていた。正確に言えば未完成の技でシールディアが言う技としては完成していなかった。レフトには魔力が少ない上に魔力操作がなっていないとシールディアに何度も指摘された。指摘されたが、何度も上手く出来なかった。

そこでシールディアは連撃の良さを執拗い程レフトに伝えた。連撃は通常の単発の技とは違い、何度も敵に魔力をぶつける行為を行う事でいつの間にか魔力操作が上手くいき、敵に対して確かなダメージが与えられるというシールディアの自論を信じてレフトは連撃技の練習もした。




レフトの連撃は全て化け物に直撃した。化け物は不味いと思ったのかレフトの攻撃範囲から逃れようとしたが、デスボダから真似た手足の魔力の移動を活かして、連撃を更に繋げた。シールディアは連撃の場合、単発技とは違って一回ヒットしても威力は落ち、敵が対策方法を見出してしまうと使えなくなってしまうと考えていたが、今のレフトの場合、高い観察力と連撃技との適正があってシールディアの心配は要らなかった。


化け物は防戦一方だったが、距離を取り、魔力で出来た槍がレフトを襲った。レフトは間一髪で全て避けきり、反撃を伺っていると、デスボダが魔力を込めた波動を放った。

「”雷絶弾”《らいぜつだん》!!」

化け物は真面に食らったが、大したダメージにはならなかった。デスボダの急な攻撃はレフトが危ないと思ったのもあるが、一番は化け物が攻撃した際、一瞬に魔力量が増えて瘴気、闇が漏れ出た事により本能でデスボダは攻撃していた。シールディア、アスモも同様気付いたが、思わず手が引っ込んでしまっていた。今まで出会った事が無い味わった事が無い得体も知れない存在に手出し出来なかった。


「弱過ぎますね」

化け物はそう語ると、片手でそれぞれ瘴気の波動、闇の波動を放った。瘴気の波動はデスボダが受け止めた。威力はデスボダの予想を遥かに超えて、レフト達の視界では確認出来ない程はるか遠くに飛ばされてしまった。一方の闇の波動はシールディアが受止めた。

「”女神領域”《ベール》!!」

シールディアは魔力を光に変えて周りに広がって、闇の波動と衝突した。シールディアは追加で魔力を光へ変換して攻撃を防ごうとしたが、光は闇の波動に飲み込まれ始めてシールディアが危機に立たされてしまうと、レフトは自信の光を闇の波動にぶつけて何とかシールディアは攻撃を受けずに済んだ。シールディアの”神授魔力”は魔力の攻撃は受けずに済むが、瘴気と闇は対象外の事はレフトが理解していた為、レフトはせっかくある光の力でシールディアを手助けした。


「瘴気魔神を倒した気になってるのでは?」

化け物はそう言うと心臓部分から三つ球体を取り出した。その球体には瘴気魔神の特徴であった三つ目があり、瘴気魔神は倒した訳では無く、倒される寸前で回収されていた事をレフト達は知った。それに今更瘴気魔神とは違って目の前にいる化け物は、理性がしっかりあり、言葉を交わせる事は”死”に近い状況だと思ったが、余計な事を考えてしまうと余計”死”への道が近くなってしまう気がした為、レフトは頭を軽めに叩いてレフトは再び連撃技を決めようとした時、いつの間にかレフト達の所に戻ってきたデスボダに肩を叩かれた。


「レフトが知らない裏技を見せてやろう」

そう言うと、デスボダは手を合わせて目を瞑った。その様子を見て意図が分かったシールディアは出来るだけデスボダから離れないようにと言うと、シールディアの言う通りにデスボダを囲う形で化け物の様子を伺いながらデスボダの近くに集まった。デスボダの魔力量は変わらないものの、魔力独特のオーラが変わった印象をレフトは覚えた瞬間、デスボダは目を見開き周りに雷雲が立ち込み、その雷雲からは魔力を発している事が分かった。


「”魔力創造・雷界”《まりょくそうぞう・らいかい》!!」

周りに広がる雷雲の隙間から雷が覗かせて、デスボダは莫大な魔力で空間を作り上げた。この状況をシールディアは何か悔しそうな表情を浮かべながらレフトに説明した。自身の魔力を外へ流出させてその魔力を特定の空間内に漂わせた。魔力量がただ多いだけではなく、魔力を操作出来る技術と才能があって始めて出来る技だとシールディアは説明し終える所で泣き崩れた。その様子を見てシールディアには出来ない代物で会得したい技だとレフトは察した。


化け物がゆっくりデスボダに向かって歩み寄ろうとした時、化け物に対して全方位から雷雲より雷が直撃した。化け物は呻き声を上げ、白い煙が立ち込め、煙が晴れて姿を露にした化け物の体は所々焼けたような跡があり、化け物が反撃しようと手先に魔力を込めようとした時、違和感を覚えたらしく反撃を止めたと思えたが、そうではなく化け物は麻痺状態になり、体が上手く動かなくなっていた。


デスボダはこの状況をチャンスと見て追撃を仕掛けた。化け物に対して真正面にデスボダは突っ込んだ。いくらなんでもそれは不味いとレフトは思ったが、今までの魔力を手足に移動して戦うスタイルではなく、雷雲から放たれた雷がデスボダを襲うと、一気に加速して見事化け物のみぞおちに会心の一撃を食らわした。デスボダの攻撃はこれでは終わらずに化け物の胸部を蹴って空中で回転すると、また雷を受けたデスボダは再度化け物のみぞおちに一撃を食らわした。これを何度も繰り返す中、レフトは更に恐ろしい事に気付いた。


「どんどんスピードと威力が上がってる!?」

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