第15話・絆

サニーンは暗い樹海の中、彷徨っていた。さっきまでソムサヂ村にいたのにも関わらず急に知らない樹海を彷徨う事になっていた。

「アスモ!! お前もここにいんのか!?」

サニーンは一緒にいたアスモに向けて大声で叫んでみたが、不気味に鳥が鳴いたり、羽ばたく音しか聞こえず、アスモの返事は返ってこなかった。サニーンは樹海を彷徨う中、目の前から霧が襲ってきた。霧には嫌な何かが混ざっていると気付いたが、もう既に遅く、サニーンの意識はここで途絶えた。




サニーンの体は数倍に大きくなり、蛇のように細長く、何個も手足を生やし、サニーンの内部は常に動いていて、人の顔達がアスモの方へ覗かせていた。

「サニーンダメ!! 何時の馬鹿面に戻れよ!!」

アスモは自分でも気付かない内に泣いており、手に持っていた剣は地面に落ちた。アスモの想いには反してサニーンは口元に瘴気を集めてアスモ目掛けて放った。瘴気の塊は地割りを起こす勢いでアスモを襲った。アスモは地面に落ちた剣を拾う事無く、アスモはサニーンをただ見つめるだけだった。サニーンの目からは涙が出ていて、アスモはサニーンに殺されるならいいと思ってしまった。アスモと瘴気の塊が衝突する寸前にアスモは何かに庇われて、アスモは飛ばさると何かに柔らかい物に激突した。柔らかい物に目を向けると巨大な熊の縫いぐるみのお腹で、巨大な熊の縫いぐるみはアスモ目掛けてウインクした。一方のアスモは顔を赤くして少女から視線を外した。


「間一髪でしたね」

アスモの目の前に現れたのはアスモよりも小さな少女だが、アスモよりも魔力が多い少女で巨大な熊の縫いぐるみは少女の能力らしく、地面に紛れて消えしまった。少女が差し伸ばした手をアスモは手に取って、少女からアスモの剣を渡された。アスモは剣を手に取る事無く、剣を振り払って、サニーンの方へと剣を飛ばした。サニーンはゆっくりアスモ達の方へ向かってきた。少女は地鳴らしを起こすとサニーン付近の地面が変化してサニーンを拘束した。サニーンは体を大きく動かして拘束を解こうとするのを見ると、少女は魔力を追えて拘束を強めた。サニーンの全身から瘴気を放ち、拘束の僅かな隙間から漏れている程度で、アスモと少女に対したダメージになる事は無かった。アスモは止めを刺す為に拘束を解いて地面は変化すると針状へと変化すると、サニーンの体を突き刺した。その状況をただ見るだけじゃ留まる事が出来なくなったアスモは少女の前に立ち、落ちていた剣を手に取り、サニーンにこれ以上攻撃しないよう魔力を全身に巡らせて魔力は体の外へ流出して魔力で巨大な熊を形どった。

「”巨熊体現”《おさのかんろく》!!」

アスモの思わぬ攻撃を受けた少女の魔力は弱まり、地面を変化させる能力を封じた。


「何のつもりです?」

攻撃を封じられた事と、サニーンを庇った事に少女は静かに怒りを露にした。

「俺は貴方ともサニーンとも戦いたくない」

そのアスモの言葉でようやくサニーンを庇った理由を悟った。アスモとサニーンは知り合いで、かなり親密な関係だと少女は悟った。少女の魔力は回復し、地鳴らしを起こすと、アスモ付近の地面が変化してアスモを拘束した。アスモは抵抗するが、ビクともせずに少女は指を鳴らすと、また地面は変化してアスモを遠くへ飛ばした。

「戦場で”絆”とやらは要らないです」


アスモは飛ばされてる空中にて、涙を流しており、涙は風に吹かれてサニーンの人間の時の顔を走馬灯のように浮かんでいた。悲しみに浸っていると、また別の知っている声が聞こえた。声の方へ振り向いてみるとそこには足を気にしているレフトがいた。


レフトはデスボダの攻撃を受けて瘴気魔神と共に落ちて受け身を取って着地した事により、足に痛みが走って足を気にしていた。

「折れてないだろ。 折れてても男なら関係無い事だろ」

そのデスボダの言葉にイラついたレフトだったが、遠くから何かが飛んでくるのに気付いた。徐々にレフトに近付いてきてそれはアスモだと分かった。レフトは飛んでくるアスモを受け止める為構えたが、後ろからシールディアが走って来ると、アスモをお姫様抱っこした。




レフトとデスボダが協力して瘴気魔神と戦っている頃、シールディアはもう一体の瘴気魔神と戦っていた。その瘴気魔神はシールディアの攻撃「”割り剣”」のダメージを受けており、瘴気魔神は体制を整える為か戦場から逃げており、シールディアは瘴気魔神の背中に乗り、翼を使って乗り物の運転気分を味わっていた。ずっとそれを楽しんでいる訳にはいかず、シールディアは背中から剣を刺した。剣を刺された瘴気魔神は急降下し出したのを確認すると、シールディアは剣先に魔力を込めて、耐えられなくなった瘴気魔神は激しく体を動かした為、シールディアは瘴気魔神から離れてしまった。しかし、瘴気魔神はシールディアから受けた魔力攻撃に耐えられなくなり、瘴気魔神の体の内部から爆発した。一方のシールディアはその様子を落下しながら見届け、瘴気魔神から離れた剣はシールディアの方へと落ちて、シールディアはそれを取り、足に魔力を集中させて地面に着地した。




瘴気魔神はレフトとデスボダ、アスモ、シールディアによって倒され一安心と思いきや、アスモはサニーンが再び瘴気に飲み込まれて禊の森遺跡のような変わり果てた姿になってしまった事を告げた。そして、少女が今戦っている事を告げ、ここで今少女がこの場にいない事に皆気付いた。皆今すぐにサニーンの所に行こうとした時、とんでもない何かが急に近くに現れた感覚をレフト達は覚えた。その方へ振り向くと、ゆっくりと近いづいてくる瘴気、闇、光でもない謎の化け物が現れた。




少女は容赦なく地面を針状に変化させてサニーンを突き刺した。サニーンの呻き声を上げる度に突き刺さる針は増えていき、少女の視線からは針でサニーンの様子が見えなくなる程だった。少女は仕上げに地ならしを起こしてサニーンの周りで地割れが起こると、サニーンの体の真下に地割れが起きて、巻き込まて下へ下へと誘われていった。少女は勝ちを確信したその時、サニーンは意識を取り戻して少女に対して告げた。

「皆にもう一度会い……」

辺りは静まり、サニーンの声は再度聞こえる事は無かった。少女はその場に暫くは動けず、ただサニーンが消えた一点を見つめ続けていた。

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