第14話・偽物

「また来たんだねじゃねぇ!! ここはどこなんだよ? お前は本当はどこにいるんだよ!?」

レフトは辺りが暗闇の中、目の前にいるライトに向けて言葉をぶつけた。レフトはこれまでライトに再開する為、様々な壁がレフトの目の前に現れた。しかし、それはライトに会うための手段なのか。そう考える日もあった。別意識に飛んでライトと会うのが、変わり果てたサニーンと戦った時と、リイロの闇の中で出会ったスネクダの男と戦った時にライトと再開していた。しかし、それは本当のライトなのか。確かな事実にはなっていなかった。レフトの頭の中はもう爆発寸前だった。デスボダに殴られた時に笑ったのは前向きに考えて

「今は敵を倒そう」という気持ちでは無かった。

「俺はトコトンついてないや。 ただライトに会いたいだけなのに……」

そういう気持ちで、シールディアやデスボダ、少女とは少なからず同じ気持ちでは無かった。


「兄さん待ってるから」

ライトの答えはそれだけを言ってレフトに背を向けて立ち去ろうとしたが、レフトはライトの手を強引に掴んだ。

「もう我慢出来ないんだ。 俺は本当のお前に会いたい」

レフトは怒りと悲しみが混じった感情で、自分でも知らない内に涙していた。


「何だか照れるなぁ……なら本当の事を言うよ」

ライトは決心したようで、レフトに真実、本当のライトについて話そうとした時、レフトの目の前にいたライトは急に倒れた。ライトの後ろにはレフトにそっくりな青年がおり、右手にはナイフがあり、ナイフには血が付着していて下にぽたぽたと、落ちていた。

「本当の事言うなよ。まじ無いわ」

青年の目は暗く、怒りの感情とナイフでライトを刺した喜びの感情がレフトにひしひしと伝わってきた。

「お前は……俺の何だ?」

レフトは言葉を選んで青年に質問した。ナイフで刺されたライトは全く動かない。

「前に言った筈だ。 俺の名はレフト・シン。”罪を名に残す者”だ」

確かに青年に以前会っていて、それは不届き山でオーガの群れに出くわした際、今と同様、別意識で名を名乗っていた。しかし、”罪を名に残す者”という事は以前には言っておらず、その言葉がレフトは引っかかった。レフトは仮としてレフト自信に似ているが、別の人間として認識する事にした。


「俺がお前を操って力を貸してやった時もあった」

レフトが別意識に飛んでいる間に何度も敵を倒した事は、今まで証明されていて、レフトの潜在能力だとシールディアには理解されていた。レフト自身も自分がシールディア達の役に立てるチャンスであると思っていたが、正確にはレフトの能力ではなく、あくまで借り物で、他の自分が努力して身に付けた能力でシールディア達の役に立ちたいとレフトは思っていた。


「俺は俺の力だけで生きて行きたい」

レフトはレフト・シンに向けて自分の考えをぶつけた。レフト・シンは耳の穴をほじくると蔑む目で言った。

「無理だ。 どんだけ頑張ってもお前は強くなれない」

レフト・シンはそう言うと、以前のように指先に色鮮やかな炎のような魔力が点っていた。レフトの頭の上にくっ付ける寸前にレフトはレフト・シンの手を掴んだ。

「これだけは言っとく。 お前の言う通りになると思うなよ」

レフト・シンは無言のまま、レフトの頭の上に指先をくっ付けると、再び意識は在るべき意識へと戻った。戻る寸前にレフトは足にライトの手が掴んだような気がした。




「レフト危ない!!」

シールディアは今目の前にいる瘴気魔神の相手で精一杯で、ただレフトに注意を促す事しか出来ずにレフトの目の前にいる瘴気魔神は鋭利な爪でレフトの心臓を突き刺そうとした瞬間、レフトの魔力は一気に跳ね上がり、共に”光”も混じっており、顔にアルファベット「L」の字が浮かび上がっていた。レフトは利き手である左手を使わずに、右手に剣を持って剣に凄まじい魔力を込めて瘴気魔神の腕をまるで、豆腐を切るかのようにいとも簡単に斬った。

「”想い斬り・流星”!!」


「レフト、お前のその魔力といい、”光”まで!! お前何者だ!?」

デスボダはレフトの姿に心奪われた。闇の力を行使するスネクダの一人であるならばレフトに牙を剥いても可笑しくない状況だったが、デスボダは素直に目の前にいるレフトの姿、レフトが振るった剣さばきに魅了していた。加えてレフトと一戦混じりたい気持ちに駆られていた。


一方のシールディアはレフトが以前に覚醒して暴走して、シールディアに対して剣を振るった事があった為、シールディアは警戒していた。シールディアは魔力を高めて光を作り出した。デスボダは即座にシールディアが魔力を光に移す工程を直ぐに気が付いてまたしてもデスボダは心を奪われた。シールディアが魔力を光に移す技術、この場に二人も光の力を行使するという現実にデスボダは豪快に笑い泣きしてしまった。その様子を横目に見ていた少女は指を鳴らすと、地鳴らしが起きてデスボダ付近の地面が隆起して、デスボダは空高く飛ばされてしまった。


「シールディア、何故だか分かんないけど意識はある」

レフトの意識は確かに正気であり、レフトの目の前には腕を斬られて腕が無くなった事に焦ってる様子の瘴気魔神がいた。シールディアには正気である理由は分からないと言ったが、本当は心当たりはあった。それは別意識から今ある意識へと戻る寸前にレフトの足をライトの手が掴んだのがレフトが正気である理由だと思った。


「ならば三人でここは乗り越えるぞ」

シールディアの一声でレフトと少女は頷くと、瘴気魔神に対して剣を振るったり、地ならしを起こして地面を変化させて拘束させようとしたが、瘴気魔神は急に逃げ出した。レフトは逃がすまいとデスボダの魔力を足に集中させて神速のスピードを作り出す技術を真似て、飛び去っている途中の瘴気魔神の足にしがみついた。瘴気魔神はレフトに気付くと体を大きく揺らしてレフトを下へ突き落とそうとしたが、レフトは手先に魔力を込めて瘴気魔神の足にしがみ続けた。レフトの手先が限界に近づいてる状況の中、レフトの頭上にて強い魔力を感じた。レフトは頭上を見上げると、魔力から作った魔剣を手に取り、瘴気魔神に狙いを定めているデスボダがいた。落下中である中、体は一切ズレずに瘴気魔神の頭上を剣先が刺さり、瘴気魔神と足にしがみついたレフトは真下へ落ちた。瘴気魔神は頭を打ち付けて気を失った。レフトは落ちる瞬間に瘴気魔神の足から手を離して、受け身を取った。

「俺まで殺す気かよ……」

デスボダは追い打ちで瘴気魔神の頭上から剣を抜き取って、再度瘴気魔神の頭上を剣で刺して、今度は深く刺して瘴気魔神のトドメを刺した。

「殺す気あんのは、こっちだけだ」

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