第29話・初陣の襲撃者

安らぎの蛹内で戦いが続く中、シールディア達もまた戦いが始まろうとしていた。負傷したグレアスの血によって魔物の群れが近付いていたのだった。グレアスを守りながら一人だけ攻撃するのは難しいと思った瞬間、村の高台から高い魔力を感じた。目を凝らして見ると人影があって遠過ぎて誰だか分からなかったが、それは直ぐに分かる事になった。高台にいる人物は魔物の群れの真上に目掛けて矢を放った。放たれた矢は分散してまるで流星群のようになって、その分散された矢達は見事魔物の群れに直撃して見事全ての魔物を倒す事に成功した。

「これで俺の株上がったぜ!!」

そう言うと高台から飛び降りた。シールディアは不味いと思って飛び降りた人間に向けて猛ダッシュした。シールディアは地面上スレスレで飛び降りた人間を両手で持ち抱えるのに成功した。

「俺をお姫様抱っこするなんて株が下がるだろうが!!」

そう喚くのは何時の間にか居なくなっていたサニーンだった。


サニーンの能力は敵の弱点を見る事が出来た。それは一人、一体ではなく、何人、何体でも弱点を見る事が出来た。魔力は数が増える分減ってはいくが、サニーンからしてみればそんな事どうでも良かった。矢に多くの魔力を込めた時、分散時に均等に魔力が篭った矢が打てるとサニーンは直感で分かった。サニーンは密かにこの技を「”流星矢群”《ビューティースター》」と名付けた。




グレアスが目覚めると太陽の光が目を襲った。どれくらい眠ったのか確かめようとシールディアに話し掛けようとしたが、シールディアとサニーンが鞄龍のお腹をベッド代わりにして眠っていた。起こすのは悪いと思って村の近くの川で顔でも洗おうと出かけようとした時、皆のすぐ近くにあったはずのアスモの顔が無くなっていた。近くに怪しい足音が無いか確認したが、何も無く代わりに魔物の死臭がした。

「魔物臭っせぇな!!」

サニーンが魔物の死臭によって起きたらしく、まだ眠そうに目を擦っているとグレアスが何か慌てているのに気付いた。何事かと思っているとシールディアも起きてきて、寝ぼけているらしくサニーンにぶつかってサニーンは眠気が一気にぶっ飛んだ。改めてグレアスに慌てている理由を問おうとした時、シールディアがアスモの顔が無くなっているのに気付いた。寝てしまった事を悔いたシールディアは持っていた剣の剣先を頭に何度も叩き付けた。

「こんな時でも全然痛くないのかよ」

シールディアにはダメージは無く、剣先も綺麗なままでシールディアの神授魔力がまるで呪いのようだとサニーンとグレアスが思っていると、ヲゲナが悲鳴を上げて三人はヲゲナの方に視線を向けるとヲゲナの腹を切り裂いた一人の男がいた。


「随分でっかい鳥? ドラゴン? そんなのどうでもいいか」

男が持っていたのは怪しく光り輝く剣で、今は剣先がたっぷり血が付着しており、ヲゲナを足で踏み付けていた。サニーンがシールディアにどうしようかと聞こうとした時、既にシールディアは男に向かって走り出しており、手にしてある剣先に魔力を込めてその状態で男に向かって剣を振り下ろした。しかし、男は余裕で剣で受けて押し合いとなり、若干男が優勢の中、シールディアは魔力を増やして押し合いを優勢になろうとしたが、シールディアが増やした魔力をものともせずに男はずっと余裕そうで、剣を持っていない左手をポケットに突っ込むと、中に入れていた短刀でシールディアを切り付けようとしたが、シールディアはそれに気付いて間合いを取った。

「お前達は黙って殺されろ。 殺害依頼が出てるんでな」




男は綺麗な花畑に訪れた。彼は何でも屋を営んでおり、今回の依頼主は花畑の最奥にいるという情報を得て現在歩み続けていた。道中に鹿、小鳥、狐の親子といった野生動物にまるで道案内されるかのように着々と依頼主の所まで辿り着いた。

「大分動物さん達が怖がっているのですが……」

男が出会った鹿とその子供と思われる子鹿を撫でながら待っていたのは、色白で緑色の長髪で純白のワンピースを着ていて、まるでその様子は美しき姫のようで男は見惚れてしまってその場に立ち尽くしていると、突如地ならしが発生してその地ならしはどんどん大きくなっていって男は我に返った瞬間、何かに食べられる感覚を覚えた。


「アップルル、その人は食べ物じゃないわよ」

男は見上げると大きなリンゴのような体で目があって、この得体もしれない生き物に困惑していると、その謎の生き物のアップルルは男を吐き出して大岩にぶつかるとアップルルは大笑いした。

「すいません。 この子は私の友人です。 ……あっ、私の名前はエリザべです」

エリザべは男の手を取って、倒れていた男の体を起こした。


エリザべは改めて今回の依頼内容を男に告げようとしたが、アップルルが男の頭を小さな手で激しく何度も叩いてる様子を見たエリザべはアップルルが何かを伝えたい事に気付いて、エリザべは男の名前を尋ねた。

「俺の名前はラクレタス。 そんな事より、コイツをどうにかして!!」

エリザべはアップルルを優しく叱るとアップルルはエリザべに甘えているとラクレタスが咳払いをして、改めて今回の依頼内容をエリザべは告げた。


エリザべが依頼する内容は殺害依頼だった。ラクレタスにとって殺害依頼は久しぶりで、最近は珍しいアイテムの調達・強盗、家事代行、ペットのお世話が主だった。久しぶりの殺害依頼に思わず、ラクレタスはガッツポーズをすると早速殺す相手を聞こうとしたが、どうやらエリザべは殺害依頼を申し込むのは初めてなのを察して全力で相手を確実に殺せる事を猛アピールした。しかし、エリザべの様子は変わらず、どうしたものかと考えていると、どっかに行ってたアップルルが戻ってきて剣を口に咥えているのが分かった。アップルルが口に咥えていた剣は見た目は普通の剣で、ラクレタスが剣を手に取って素振りしても特に気になる事が無く、特殊な剣という訳では無いと思っていたが、エリザべべは指先に何かを込めると、その何かが剣を包み込んで、ラクレタス自身からエリザべべの指先に込めた何かと同じようなものが流出して剣を包み込むと、剣自身が光り出すとやがて怪しく光り輝く剣へと姿を変えた。


「この剣でしか対象の人物を死の世界へ誘えません」

エリザべべの言葉の意味が分からなかったが、ラクレタスが暫く剣を手に取っていると自身に波のようなものが流れているのに気付いた。その波は何なのかエリザべべに聞いてみると、”魔力”と呼ばれるものだと知った。またその魔力は先程、エリザべべが指先に込めたものと同様で今やっと、魔力をしっかり認識する事に成功していた。エリザべべの追加情報として魔力の使い方を教わったラクレタスは対象の人物へ向かう道中、ゴブリンやウルフの住処に訪れて全ての魔物を魔力を込めた剣で倒す事に成功した。自分の思わぬ能力に喜びを感じている最中、対象の人物がラクレタスの視界に入った。

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