第28話・友は許しを求めて

闘技場にヤズパ、デスボダは対面してヤズパはその場に軽くジャンプしたり、肩を回したりと準備運動をしていた。対するデスボダはヤズパが何故ここにいるのか。自分を殺しに来たのか。ヤズパの心境が分からぬままヤズパは手招きしてデスボダから攻撃をしてくるよう迫ってきた。しかし、闇は使いたくない為に今までのように身体能力を活かした攻撃だけでいこうと思った矢先、ヤズパが口を開いた。

「せっかく”魔力を手に入れた”んだから、それを使ってみなよ」

さっきから違和感を感じていたデスボダは、それは魔力を得た為だと理解した。しかし、スネクダは魔力を持たない一族だと常識として知っていた。魔力とはどういうものなのか分からず困っていると、ヤズパは急に大声を上げた。スネクダはビックリして尻もちを付くと何かが全身に流れてくるのを感じた。これが魔力だと実感して試しに左の拳に魔力を集中させるイメージをすると拳が痺れる感覚を覚えた。


「魔力を使いこなせるよう俺と戦え 」

ここでデスボダのやりたい事が分かった。しかし、それは本当の目的なのか。そもそもなんでここにデスボダがいるのが分かったのか。冷静に考えていると雲行き怪しくなると、すぐに雨が降り出して戦い所ではないとデスボダは思っていたが、痺れた左手が電気を帯び出した。どういう現象なのか分からぬまま右手も電気を帯び出した。もしやと思って今度は右足に魔力を集中させるイメージを浮かべると、デスボダが思った通りに右足が電気を帯びた。その状態でヤズパに攻撃してみようとすると、何時もよりも右足が軽く感じて思ったよりも早いスピードでヤズパの目の前に迫って、勢いに任せて右の拳をヤズパに向けて振るった。


ヤズパはデスボダの右の拳を右手の指先だけで受け止めた。ヤズパは指先に強い闇を込める事でデスボダの攻撃を防いでいた。デスボダはすぐ様ヤズパから間合いを取る事に成功してデスボダは拍手してそれを祝った。こうしてデスボダによる一方的な攻撃の稽古的な戦いが続いていよいよ本降りになる中、デスボダは自身の攻撃の完成形を見出した。デスボダから溢れ出る魔力と曇天の空が触れた瞬間、雷雨となって雷がデスボダを襲った瞬間に今までに無いスピードとパワーを持ち合わせて渾身の拳をヤズパに振り上げた。ヤズパはデスボダの凄まじい覇気に押されつつ、闇の力でバリアを作り出して攻撃をガードした。どんどん後ろに押されていき、耐えきれず闘技場の壁に激突してしまった。

「闇の力使わなくても化け物になりやがって」




闇の力を解放して感情を無くした化け物と化したデスボダがレフトの目の前にはいた。今からデスボダを殺さないといけないのか。それとも死ぬ前まで追い詰めないといけないのか。はたまたデスボダの闇の力を抑えないといけないのか。そもそもそんな事出来るのか。様々な考えがレフトの頭の中に巡る中、レフトが持っていた剣は大剣が徐々に縮小して元の大きさの剣に戻っていった。


「どっちの方が化け物に見える?」

ヤズパはいつの間にかレフトのすぐ隣にいて、レフトの真意を探った。魔力のある何時ものようなデスボダも化け物だし、今目の前にいる闇の力を解放したデスボダも化け物でレフトの答えはどちらも化け物であると答えようとしたが、ヤズパはレフトが答える前に口を開いた。

「そうだよね~。 まぁ、実際は戦ってみればいいっか」

ヤズパはすぐ様デスボダの隣に移動してデスボダの額にキスをした。するとデスボダはレフトに向かって真っ直ぐ突進してくると、電気を帯びた拳では無くて、闇の力が篭った拳をレフトに向けて振り上げた。


レフトは急いで横に避けたが、デスボダの目的はレフトに拳で攻撃するのでは無くて、壁に拳をぶつけて術式を発動させる為だった。

「”暗黒漆界”《あんこくしっかい》」

安らぎの蛹内の闇は濃くなり、濃くなった闇は礫となってレフトを襲った。礫はデスボダが壁にぶつけた箇所から供給されていた。剣でガードしようとしたが、ガードした以外の体の部位に礫が襲ってきて若干立ちくらみを起こしたが、レフトは防御から攻撃へ思考を変えてみた。


「”連撃・奇味の灯火”《れんげき・きみのともしび》!!」

レフトは連撃技で礫達を切り裂いて余裕が出来たら礫に剣を当てて、デスボダ達に当たればいいと思ったが、それは甘い考えで礫を切り裂いて己をガードするしか出来なかった。何かこの状況を脱する方法が無いか考えていると、安らぎの蛹の壁がミシミシと音を立ててる事が分かった。それはまるで壁が破壊されて安らぎの蛹も破壊する前兆のようだった。レフトは今度は外に今ある濃い闇が放出するのを防ぐ方法を考える事にした。レフトの連撃技も限界に近い事もあって考える事に集中出来ずにいると、デスボダの攻撃は術式を発動させて終わりでは無かった。


デスボダは再び拳を振り上げてレフトはそれを避けようと思ったが、避けても礫に襲われるのがオチだと思ったがどちらにせもダメージを受けるのは確実な為、デスボダの拳をわざと受けようと思ったが、デスボダの拳が迫り来るに連れて迫力を感じて反射的に避けてしまった。しまったと思った時には遅く、礫に襲われてサンドバッグ状態になっていると、ヤズパはデスボダの影を踏むと礫の攻撃は止んでデスボダはヤズパの隣に戻っていった。

「もっと俺みたいにデスボダに攻撃出来ないの?」

レフトとヤズパでの戦いはヤズパの満足に至っていたが、レフトとデスボダでの戦いは満足いかずに少々腹を立てていた。レフトはヤズパが自分勝手だと思ってレフトも腹を立てて、ヤズパに向けて剣を振るおうとした時、デスボダが右手で剣を防いだ。デスボダは左手でレフトの顔をぶん殴った。ぶん殴られたレフトは壁に激突してしまい、激突した箇所から闇が放出してレフトは思わず悲鳴を上げて、またしても意識が途絶えそうになるが、レフトは堪えて剣を強く握り締めて剣先をしっかりデスボダに向けた。


「全力でお前を殺しに行くからな!!」

レフトは剣を強く握り締めてデスボダに向かって走り出した。

「戻ってこないと許さねぇからな!!」

レフトは剣先に光を集めるイメージをするとそれに答えるかのように剣は大剣と化して、豪快に振るった。対するデスボダは拳に闇を集中させてレフトに答えるかのように全力で振り上げた。剣と拳が当たった瞬間に、光と闇が互いに衝突して暫くどうなったか分からなかったが、目の前にいたデスボダが涙を流しており、レフトに抱きついた。

「お前の声聞こえたぜ。 これで許して貰え……」

デスボダはレフトに抱きついたまま気持ち良さそうに眠ってしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る