第27話・ダークヒーロー

神殿は真っ直ぐで三十分程デスボダは歩いていた。頭が血塗れだったはずだが、頭を触ると血は付着しておらず、フサフサの髪の感触でしかなかった。痺れ切らしてゴールが見えない先に向かって叫んでみるが、デスボダの反響する声しか聞こえず再び静まり返ってしまった。仕方なく前を進み続けて足がダメになりそうになってやっと最深部の部屋に辿り着いた。ミニチュアサイズの祭壇があり、その祭壇を横に動かすとスイッチのようなものが現れた。そのスイッチを吸い込まれるかのように押してそのスイッチのせいか地震が起こると、隠し部屋が現れた。その隠し部屋は真っ暗で異常にカビ臭く中に入る気が失せてしまいそうになるが、ほんの一部光が漏れてる箇所があり、そこには古びた本が一冊あった。その本を手に取り開こうとしたが、どんなに力を使っても開かず、イラついてその場に投げ捨ててしまった。と、同時にデスボダは我に返ると目の前には目を見開いたヨヨアがいた。


「これから神器との同調実験を行います」

デスボダは寝かされ拘束されていて簡単には解けず、沢山のコードが体に繋がられていて、一つのコードが繋がられた先には自らが破壊したはずの神器の”黒卵”《こくらん》があった。

「アンタが壊したのはレプリカ。 神器はそう壊せるものではないっす」

そう説明したのは最近デスボダの中でも注目を集めていたコントペウだった。コントペウは口に咥えた棒付きのキャンディをデスボダの顔面に飛ばした。その様子を見ていたヨヨアはため息をつき、何か機械をいじりながら神器を時々様子を見ながら作業しているとデスボダは急に頭痛に襲われた。

「同調開始。 完了まで後五分」

デスボダの意識は再び途絶えようとしたが、頭痛が治まりコントペウの心臓部分に包丁刺さていた。


包丁を刺したのは見知らぬ男で、コントペウはデスボダに向けて飛ばした棒付きキャンディに向けて手を伸ばしたのを確認した男はすぐさまコントペウの腕をぶった切った。コントペウは意識が朦朧する中、ヨヨアに助けを求めた。ヨヨアは指先に闇を集めて球体を作り出した。その球体からランダムに放たれる闇の弾丸を男は逃げ続けた。コントペウは限界を迎えそうになるギリギリの所でコントペウの下には魔法陣が描かれて、その魔法陣は回復効果があるものでコントペウは一命を取り留めた。ヨヨアは器用に左手は攻撃を、右手は回復を、とこなしていた。


「ただの情報屋じゃなくなったようだな」

男はヨヨアとは以前から知っているようで長い間会っては無かったようだった。男は懐からカードの束を取り出すと横に広げた。するとカード達は宙を舞ってデスボダはその様子に見とれてしまっていたが、ある程度回復したコントペウは反撃を開始するべく一気に男の間合いを詰めて自慢の剣を振るうよりも前に男はカードを一枚コントペウ達に対して表になった。

「オープン、赤の4」

男が持っていたのはUNUと呼ばれるカードゲームの一種の物らしく、そう男が告げた瞬間にコントペウに向かって何処からか斬撃が繰り出された。コントペウはすぐさま己の身体能力の高さを活かして避けた。

「オープン、赤の6」

再び斬撃をコントペウは避けてヨヨアの隣に移動した。何故ならヨヨアが予想する男の能力について聞く事にしたからだ。それを察したのか男は怪しい攻撃を続ける。

「オープン、ワイルドカード青、青の2、青の3、青のスキップ」

次々に表になったカードにより、コントペウとヨヨアに向かって何処からかビームが放たれた。コントペウとヨヨアはそれぞれ避けて反撃を伺おうとするとヨヨアには何か違和感を感じた。


「ヨヨア、赤は斬撃、青はレーザーだな?」

コントペウはUNUの色と攻撃の種類の関係性に気付いて、それをヨヨアに確かめようとしたが、ヨヨアの様子が可笑しい事に気付いた。ヨヨアが口を開けどコントペウの耳に聞こえる事は無かった。コントペウがヨヨアに再び近寄ろうとした時、右足に違和感を覚えて右足を見ると消えていて左足が重く感じた。


「オープン、ワイルドカード黄色、黄色の9」

男は容赦なく次のカードをコントペウに対して表になり、何処からか打撃がコントペウを襲った。その打撃は見事鳩尾にクリーンヒットしてコントペウは血を吐いてその場に倒れた。ヨヨアは声が出なかったが反撃に移った。指先に闇を集めて球体を作り出して闇の弾丸が男を襲いかかろうとしたのだが、男は余裕を持って次の手を打って出た。

「オープン、黄色のチェンジ」

すると男とヨヨアの配置が入れ替わって闇の弾丸はヨヨアを襲った。ヨヨアは必ず男を仕留めるよう濃い闇で弾丸を作り出していた為、ヨヨアもその場に倒れてもう戦える状況なのは男、ずっと見ていたデスボダしかいなかった。男はデスボダに繋がられたコードを強引に引きちぎった。そして神器を手に取って何度もキスをした。


デスボダは体が自由になって男に感謝の気持ちを伝えようとしたが、男と神器が無くなっており、代わりに地面に紙切れが落ちていた。その紙切れの内容を見てデスボダはすぐにアジトを出発した。何故なら書かれた内容により男が実の父親だった事が分かったからだ。




デスボダは実の父親を追い続けるがあっという間に一年程経ってしまった。全く手掛かりがなくてUNUの攻撃の説明をするが、真面に聞いてくれる者もおらず、ある日森で野宿にて神殿での出来事が夢で見る事になった。


開かない本にイラついてその場に本を投げ捨てた続きの内容からかと思ったが、本をその場に投げ捨てずに今まで歩いてきた通路に向かって思いっ切りぶん投げた。思ったより遠くに投げてしまった為、本が見えなくなってしまった。気持ちを落ち着かせて本を探そうとしたが、本を投げた先から強い光が発してデスボダを襲った。その光はデスボダを包み込むと強い魔力を生み出してデスボダの内に眠っていた闇がそれを拒んで、魔力と闇による争いがデスボダの体内で巻き起こった。デスボダ自身は体が何かに支配される感覚で今にも気を失いそうな痛みが襲っていた。早くこの争いを止めて欲しいと願った瞬間、目を覚ますとデスボダが元々いた森にいて、目の前には何かを頬張りながら何かを優しく撫でていた長髪の男がいた。

「君は完全なスネクダの人間なのか?」

質問の意味が分からず、返答出来ずにいると長髪の男は笑うと指を鳴らした。すると青々と茂っていた木々達はどんどん切り倒されていき、大きな闘技場らしき建物が現れた。

「ここで一戦交えようか、未来のエリート君」

デスボダはやっと目の前にいたのは以前から苦手で近寄りたくは無かったヤズパがいた。

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