第30話・秘策は真の力の糧に

ラクレタスの目の前には殺すよう依頼されたシールディアがいた。エリザべべからはシールディアと組みする者はラクレタスに任せると言われていた。ラクレタスは迷わずその場にいたサニーン、グレアスを殺す事にした。

「本当はその剣とは実践経験少ないのでは?」

シールディアの質問にラクレタスは眉一つ動かず、再び剣を握り締めて魔力を剣先に伝えるイメージをしていると、シールディアが先に己の剣先に魔力を込めてラクレタスに向けて剣を振るった。ラクレタスは攻撃する選択を失い、ただシールディアの攻撃から逃れる選択を選んだ。故に魔力を使った戦闘が慣れていない事がシールディア疎か、サニーンとグレアスにも分かり、ラクレタスは剣を後ろに投げ飛ばして手を上げて降参の気持ちをシールディアに伝えた。


「アスモはどこにやった?」

ラクレタスはシールディアが言っている意味が分からなかった。アスモとは何なのか。そのアスモとやらをラクレタスが奪った事に心当たりが無いと思っていたが、急遽足元がふらついたと思って足元に目をやると、落とし穴に嵌ったらしく、どんなに足掻こうと落とし穴から出る事が出来ず、シールディアの近くにいたグレアスから魔力を発してるのが分かって、グレアスに対して落とし穴から脱出したい気持ちを顔で必死にアピールしていたが、どんどん体が沈んでいくのが分かった。グレアスに殺されると思った矢先、エリザべから教わった事を思い出した。


「緊急事態に陥った時にこの剣は実力を発揮します」

そうエリザべに言われて特にどんな力があの剣にあるかは詳しくは聞いてなかったが、この死際に立たされた今実力を発揮しろと思っていた矢先、突如落とし穴は解除されて地上に身を投げ出された。どんな力が剣に眠っていたのか目で確認しようとしたや否や、剣から這い出でるように人間が現れたと思ったが、全身はラクレタスよりも三倍近く大きく、背中から翼を生えていて、全身真っ黒でまるで悪魔のようなものがラクレタス達の目の前に現れた。


「ここはお前も一緒に戦って貰う。 あのコレウサを倒す為に」

見た目に反して可愛い名前だとラクレタスは思ったのも束の間、コレウサがキーの高い叫び声を上げると、ラクレタスは耳を手で塞いで耐えていたが、耳を塞いでいた筈の手が黒い炎で焼かれ始めて強烈な痛みに襲われた。しかし、それは幻覚であってシールディア達からはただ一人苦しんでる様子にしか見えなかった。シールディア達はコレウサの叫び声は無音と等しく、神授魔力を持つ者は効果が無いものだった。しかし、それを知らないサニーンは叫び声が聞こえない筈なのに耳を塞いでいた。


シールディア達はコレウサよりも高く飛んで頭部を目掛けて剣を振り落とした。しかし、コレウサはノーダメージらしく、首を傾げると空中からコレウサの幼体達が現れると、シールディア目掛けて全部の幼体が襲いかかってきたが、サニーンが弓を構えると全ての幼体の頭部に弱点の印が現れて、放った一矢は分裂して全ての幼体の頭部を貫いて倒し、サニーンはシールディアに向けて拳を上げた。シールディアは剣を体全身を使って大きく円を描くと、描いた円は強い魔力を発して指先が円に触れるとコレウサ目掛けて放たれた。

「#”満月波動斬”《ムーンキル》!!」


コレウサの全身はシールディアの技によって木端微塵になったとサニーンとグレアスは思ったが、それは叶わずコレウサは深い傷を負ったものの、まだ生存しており、コレウサの手が天を指して、直ぐにシールディアの方へ指すと、シールディア目掛けて天空から魔力を凝縮させた衝撃波が放たれ、コレウサは満面の笑みを浮かべていると、サニーンは余裕を持って再び弓を構えた。魔力を込めた矢をサニーンは放つつもりだったが、さっきのシールディアの攻撃によって幻覚から逃れたであろうラクレタスがサニーンの前に立ちはだかった。


「自分で自分のケツを拭くから、黙って見ていろ!!」

ラクレタスはそう言って持っていた短刀に魔力を込めて、太陽のような暖かみと光がある円形の塊を作り出すと、コレウサに向けて放った。しかし、コレウサは片手で薙ぎ払って無傷だったが、ラクレタスは再び同じ攻撃を繰り返した。コレウサは再び片手で薙ぎ払った。勿論無傷なのだが、ラクレタスは何度も同じ攻撃を繰り返した。サニーンは溜め息をついて再び弓を構えようとしたが、その手をシールディアが止めた。グレアスに何か意見を求めようとしたサニーンだったが、グレアスは目を瞑って集中している様子だった。


ラクレタスが幻覚から逃れて、サニーンの前に立ちはだかる寸前、ラクレタスの足裏に極わずかに地面を隆起させてグレアスにはコレウサを倒す案があるとラクレタスは思ってグレアスの方を見ると、グレアスは顔を横に振った。シールディアの方を向くといつの間にかシールディアの目の前には、地面がゆっくり隆起させてあり、壁と化した地面にシールディアが持っていた剣で文字を刻まれているのが分かった。

「グレアスを信じろ。 お前は攻撃に徹しろ」

ラクレタスはその言葉を信じて短刀を手にした。


グレアスの神授魔力は地面の形を自由自在に変える事が出来るが、人間だけは無理だった。人間にしか無い”心”だけではなく、人間の”形”を作り出す事は出来なかった。何度も何度も試して、孤独から免れようとした時もあったがそれは暖簾に腕押しであり、グレアスは”真の力”を手にするまでこの手に入れた力を磨き上げる事を誓っていた。


ラクレタスとコレウサの戦いが続く中、グレアスがコレウサに勘づかれないように地下深くでマグマには当たらないギリギリの所に魔力を集中させていた。そこから剣山のようにコレウサの真下から突き刺すのもグレアスは考えたが、魔力を感じ取って避けられたら意味が無いと思って、別の方法で倒す事にしていた。


ラクレタスの魔力は限界に近かった。流石のシールディアでもそれを察して、剣を手に取ろうとしたが、足元から魔力を感じ取って何をグレアスは考えているのか分からなかったが、よく魔力の流れを見てみると自分の足元だけではなく、シールディア達がいるエリア一体がグレアスの魔力で包み込まれていて、コレウサもこの状況に焦っているのが分かった。




グレアスの攻撃は安らぎの蛹にも影響しており、レフトは外でも戦いが繰り広げられているのが分かった。デスボダが闇の力を押さえ込んで正気に戻った事に、ヤズパは腹を立てて本気の力で戦ってくると思ったが、ヤズパは拍手して寧ろ計画通りとも取れる様子で、ヤズパは後ろにワープゲートを開くと、それに向けて身を投げた。

「君達は更に強くなれる」

ヤズパはそう言い残すと、ワープゲートに触れて消えてしまった。そしてヤズパがワープゲートが閉じる寸前に投げ捨てた一枚の紙がデスボダの顔に引っ付いた。

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