第31話・お帰り.......

一つの戦いが終幕して、もう一方の戦いが終幕に向かっている中、綺麗な花畑にエリザべの姿があった。エリザべがシールディアを殺そうとした理由は自分でも分からなかった。でもラクレタスの手を止めようという気持ちにもならなかった。つまり、”無”の感情で、ただそこから見える大きな滝を見つめていた。




ワープゲートが消え去り、その場にいなくなったヤズパにより、安らぎの蛹が破壊されてシールディア達に加勢しようとレフトは考えたが、安らぎの蛹が壊れていく様子は全く見せず、どうしたものかと考えていると、安らぎの蛹に侵入した外部からの魔力が急に消えた事に気づいた。戦いが終わったのか。それとも何らかの敵に倒されてしまったのか。良い事と悪い事両方の事を考えていると、デスボダが目を覚ましてレフトと目が合うと今の状況を察した。

「相変わらずアイツの事全く分からない」

ヤズパとデスボダは同じスネクダであり、考え方が二人違えど何か強い関係性が結ばれているとレフトは考えていると、天井に何か吊るされているのに気付いた。


デスボダが早速余った魔力で一気に安らぎの蛹の壁を駆け登ろうとしたが、レフトはデスボダの肩に手を置いて無理はするなと顔を横に振ったが、デスボダは優しくレフトの手を肩から離して手を下ろすと、

「お前は俺の恩人だ。 こんな事朝飯前さ 」

デスボダはそう言うと足に魔力を集中させて一気に安らぎの蛹の壁を駆け登ってレフトが見つけた天井に吊るされているものを手に取って、今度は壁を駆け下ってまだ余裕がある事をレフトにアピールした。


吊るされていたものは風呂敷で包まれていて、その風呂敷を解くと、魔力を込めた御札が貼り詰められた木箱が出てきた。レフトはどうしたものかと考えている内に、ヤズパがワープゲートを利用してこの場から消える際、一枚の紙が投げ捨てられてデスボダの顔に引っ付いた事を思い出した。デスボダにその紙をどこにやったか聞いてみたが、デスボダは起きてすぐその紙は手紙だったらしく、宛名がヤズパと分かってすぐ高圧高電流の電気を利用して、発火して手紙を燃やした様子で、悪気が無いデスボダに対してレフトは拳を振り上げそうになったが、ずっと黙っていたレフトの剣が喋り出した。


「さっさとここの闇のオーラの裂け目ぶった切って脱出しろよ!!」

突然喋り出したデスボダは驚いて距離を取ってレフトは頭を掻きながらこの剣の説明をする事にした。この剣は”父の形見”のようなもので、死にかけた寸前に別意識にて現れた神殿で手に入れたと説明するが、デスボダは理解出来ずに喋る剣を何度も突っついた。

「コイツ俺嫌いや。 レフトコイツ切り殺せ」

そう淡々と喋った剣にそんな事する訳が無いとデスボダは高を括っていたが、レフトは剣を手に取ってデスボダに向かって剣を振り落とした。瞬時にデスボダは避けたものの、剣は大剣となって再びデスボダに向けて剣を振り落とそうとしたが、デスボダは土下座して謝罪してレフトの思わぬ攻撃から免れる事に成功した。




アスモは確かに首を刎ねられて息を引き取った。しかも首を刎ねたのは可愛がっていたリイロであり、アスモの生涯は悲惨な出来事で幕を閉じた。しかし、アスモが天国へと旅立つ事は無く、真っ暗な空間でずっと眠っていた。何を考える事も無く、何かをする事も無く。

「神授魔力……」

何処からか聞こえたその声に応じて真っ暗な空間の中、一筋の光が見えるとその光から沢山の手が現れると、手はアスモを包み込んで光の方へと引っ張り出した。

「神授魔力・”ペルセポネ”・”裏”」

謎の声に導かれるようにアスモは目を覚ました。




レフトは安らぎの蛹にて目を瞑って意識を集中させていた。安らぎの蛹内は濃い闇の中、裂け目があると剣は言った。その言葉の言う通り、闇が激流の如く流れていて激流と激流の間に裂け目が出来ているのが分かった。覚醒状態は保っていたが、吐き気が覚えて軽く頭痛をしたが、裂け目に向けて剣を振るった。すると、安らぎの蛹の壁には割れ目があちらこちらに出来て、安らぎの蛹内の濃い闇は徐々に消えていくのが分かった。レフトは外に闇が放出すると思ってどうすれば良いか分からないでいると、剣が喋った。

「俺で闇を巻き取るイメージで闇の放出を阻止するんだ!!」

レフトは剣の言う通りにまず剣を大剣と化して、 剣で闇を巻き取っていった。ただ巻き取るだけでなく、”光”が込められた大剣は巻取られた闇と打ち付け合った結果、光が勝ってどんどん空間が美化されていき、安らぎの蛹内の闇の量はどんどん消えていった。黙ってその様子を見ていたデスボダは見様見真似で魔力を使って雷剣を作り出して、その雷剣に闇を巻き取ろうとしたが、レフトと違って闇の量が減らずただ雷剣に巻き付いた闇をどう処理しようかと考えていると、安らぎの蛹の壁は更に割れ目が増えていって、今にも完全崩壊してしまう状況になった。


「お前は黙って見ていろ、”ゴミボダ”!!」

剣に怒られたデスボダは落ち込んで安らぎの蛹の隅にいって体育座りした。レフトは特にそれに対して気にすることなく、今すべき事を努めた結果、ついに安らぎの蛹の壁の裂け目をどんどん増えていって崩壊し始めた瞬間、外から見た事が無い魔物がいるのを目の当たりにした。




グレアスはデスボダ同様、”魔力創造”を使えるが、”自分の意思”で行う事は出来なかった。グレアスはその事を利用してコレウサを倒す事を考えていた。魔力創造を使うには一定のエリアを魔力で満たす必要があり、ただ魔力が多い人間が使える訳ではなく、”神授魔力”を持つ人間の中で一部の人間しか使えないレアな技だった。また魔力創造を使う際、魔力で満たされたエリアとエリア外には”歪み”が発生してその歪みに人や魔物が巻き込まれた際ほぼ必ず死ぬ特徴があった。グレアスは歪みがコレウサの全身が丁度発生するよう目を瞑って魔力のコントロールをした。そんな中、何かが壊れる音が聞こえるのと共に新たな魔力の反応があった。片目で確認するとレフトとデスボダが安らぎの蛹から出てくるのが分かった。レフトに向けて頷くと魔力のコントロールに再び集中しようとした最中、デスボダが持っていた木箱に貼り詰められた魔力が込められた 御札が光り出すと、木箱は破壊してその木箱からは一人の人間が現れた。


「こんな雑魚に手こずってるなんて俺が”蘇った”事に感謝しろよ」

その人間が手に持っていた双剣によってコレウサは悲鳴を上げながら血しぶきが派手に飛び散りながら倒れた。

「お帰りでいいのか?……アスモ」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る