第36話・親子の形

ヤズパは”混合・変化”の能力を持っていたが、分身体が存在しており、もう一人のヤズパは人の能力をコピーして一度だけ使用出来る闇術式を行えるようになっていた。分身体はスネクダの研究員によって研究の最中、偶然の産物のデータを利用してボスの命令により、ヤズパの分身体を作る事になった。一週間程時間を要した分身体はヤズパと瓜二つで、すぐに能力が発現してその晩はスネクダ達はお祭り騒ぎで二日酔いになる者が多数現れていた。




「”狼狩り”《ウルフハント》」

デスボダは残り少ない魔力で剣を作り上げて、アスモの体を借りているノナムの攻撃を受けて立った。剣と剣がぶつかり合う反動で、体が後ろに飛ばされそうになったデスボダだったが、魔力を込めずに足で踏ん張って、ノナムの攻撃を読む事に専念する事にしたが、ノナムが持っていた双剣を重ねて息を吸うと、魔力を再び双剣に込めると剣先をデスボダに向けて走り出した。


「”猪突”《ふたつのきば》」

レフトは見た事が無い技にあの技の攻略方法をシールディアに聞こうとしたが、シールディアに対してノナムの攻撃が発動していて、デスボダはどうしたのかと探していると、デスボダがレフトの肩を叩いて顔を横に振った。その意味はデスボダの魔力切れである事を察した。


魔力がまだあるシールディアにターゲットを変えたノナムだったが、シールディアを包むように魔力があって、鉄のように硬い感触をノナムは覚えて、今の攻撃を諦めて一旦距離を取って、別の攻撃を試した。

「”巨熊体現”《おさのかんろく》」

この技でシールディアの魔力を封じる事に成功したとノナムは思ったが、シールディアの魔力は衰えなく、反撃に打って出た。しかし、グレアスの治療はどうしたのかと疑問を持ったが、グレアスの代わりに見知らぬ女性が治療していた。聖職者なのか十字架のネックレスをしていて、その女性はレフトとデスボダに対して手招きして二人は顔を見合わて頷くと、その女性の所に来ると、突如レフトの頬を舐めた。頬を赤くしたレフトに笑いそうになったデスボダだったが、デスボダの頬も舐めた。すると二人は魔力が少量ではあるが、回復した感覚を覚えた。二人は礼を言ってシールディアの方へ向かおうとした最中、眩しい光が二人を襲った。その光の中にシールディアの後ろ姿が見えて手元には剣を持っているらしく、シールディアの”光”の攻撃である事を察した。光をこの状況で使うのは正解なのか思っていたが、光に抗うかのように闇が現れて二つの存在が衝突した。互いに大きなダメージになる二つの存在は激しい衝突を起して反動で、シールディアは後ろに吹っ飛ばされて光の反応と同時に闇の反応も消えた。皆揃ってノナムはどうなったか気になって見てみたが、周りに舞った土煙が晴れていくとその結果が丸わかりになった。


ノナムを庇うようにノナムの前にはヤズパがいて、その場に倒れた。ヤズパは息をしているかノナムが確認するが、心臓が動く音が聞こえて一安心したが、魔力が少量だが回復したデスボダは足に魔力を集中させて一気に、ヤズパの心臓目掛けて拳を振るったが、ノナムの双剣により手を斬られそうになって、手を引っ込めて急いで距離を取った。デスボダの舌打ちがレフトの耳に聞こえたと同時にノナムの魔力量が増えたのを皆分かって警戒する中、ノナムの目線の先はデスボダでそれに答えるかのようにデスボダは魔力で剣を作り出して構えると、ノナムの激しい連続攻撃が続いた。


「”狼狩り・群れ”《ウルフズハント》」

アスモの応用した技は連続技として進化を果たした。対するデスボダは全ての攻撃を剣で耐える作戦に打って出た。激しい連撃によって剣がボロボロになって、デスボダ自身が連撃の巻き添えになるのも時間の問題だと考えていると、ノナムの連撃が終わってその場に倒れて手足を伸ばして大の字になった。何かの攻撃かとデスボダは思ったが、デスボダに向けてノナムは手招きした。デスボダは警戒しつつノナムの隣に立ってノナムが頷くとノナムの隣に座った。ノナムから何の話かと思っていると

「お前の全てを聞かせてくれ」

そのノナムの言葉の意味は、今までの人生、やりたい事、ノナムに望むものなど色々な話をデスボダがしろという意味だとデスボダは理解して、思い出しながらデスボダの経験した事や、これからの目標など思い付く限りの話をする中、ノナムは無言でただ頷いていた。レフトからしてはただの父と子の会話に見えた。邪魔だと思って二人の様子が見えなくなるまで離れようとしていると、強引にシールディアがレフトの腕を引っ張った。何事かとシールディアの顔を見ると険しく、魔力を全身に巡らせて警戒を強めていた。


デスボダの話はデスボダ自身も予想外に長くなって、話が終わるとみたシールディアは高めた魔力を光に変えて一撃を放った。

「”神の道標”《ゴッドロード》!!」

シールディアはいつの間にか剣ではなく、槍を手にしていた。シールディアと顔馴染みらしいグレアスの治療を行っている女性から受け取った物だとレフトは思っていると、今はそんな事より今の状況でシールディアの大技とも言えるこの技を使うのは正解なのか。それにシールディアが親子の会話に水を指すのは冷たいと思っていると、槍から放たれた光の光線によって体の傷が治ってるように見えるデスボダがレフトの視界に入ったが、ノナムはデスボダの近くにはいなかった。何処かに避けたとレフトは思ったが、デスボダは顔を横に振って何事かと思っていると、レフトの首に冷たい感触を覚えた。


「君達は色々と勘違いし過ぎた」

レフトの首には双剣が当てられていて、恐る恐る双剣を持っている人間は誰かと確認すると、ノナムではなくヤズパだった。ノナムは何処にいったのか周りを見渡すと、一際大きな木にノナムの体がめり込んでいて肝心のノナムは木に頭をぶつけたらしく、頭を触りながら大丈夫だとアピールしており、取り敢えずノナムの無事が分かったが、ヤズパの言ってる言葉はどういう意味かと考えていると、ヤズパは何かを踏み付けて骨が折れる音が辺りに響いた。レフトはそっとヤズパの足元に目を向けると、全身が真っ白になった”もう一人”のヤズパがいた。


サニーンは足音を当てる事なく、木にめり込んだノナムを助けた。ノナムはゆっくりサニーンに体を支えられながらレフト達の近くに来て、ノナムは口を開いた。

「別に殺し合いをやりたい気分では無い」

ノナムとヤズパが互いを見つめ合う中、また別の来客がその地に訪れようとしていた。

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