第35話・彼女の名は

ノナムと女性はスネクダのアジトの一室にいた。ノナムはヤズパに会った後、カードに魔力を込めて舞ってヤズパからノナムの姿が見えなくなったのを利用してワープしていて、今はカードに付着した血を拭き取っていた。血はウルフの死体に付着していた血をカードに付着させていて、態とヤズパに喧嘩を売っていた。何故なら女性を死んでいる事にするのが都合が良かったのと、ヤズパの怒り顔がただ見てみたかったからだった。ノナムはこれからどういう作戦でヤズパを甚振って楽しもうかと深いソファーに体を任せていると、ソファーが変形すると、ノナムの口を抑えて体を強く拘束した。ノナムはソファーの方を見てみると、ドラゴンのような姿をしていて、目がノナムを睨み付けていた。


「企み全部話してくれないかしら」

女性の能力は闇を介して家具限定で生き物に変化させて操る能力だった。女性の能力を把握していなかったノナムは今の状況の突破方法を導く事が出来ないまま、女性の指示でソファーから変化したドラゴンがノナムの右手をくるっと回して右手の骨を破壊した。ノナムは悲鳴を上げるよりも白状する選択を選んだ。


女性はドラゴンからソファーに戻して、ノナムの企みを全て漏れる事無く聞いた。ノナムは左手でソファーの下に落ちたカードを手に取ろうとしたが、ソファーから低い唸り声が聞こえたと思ってそっちの方を振り向くと、さっきのドラゴンの目があって、それはノナムを睨み付けていた。カードを手に取るのを諦めてどうやったら目の前にいる女性を殺す事が出来るか考えていると、女性は提案をした。


女性の提案はまず女性の血をノナムが飲む事だった。ノナムはスネクダでは無い為、スネクダの人間の血に含まれている濃い闇を体の中に取り入れる事で理性を失って、魔物になるか、灰のように風に吹かれる事で消えてしまうのを知っていたノナムは、血を飲む事に抵抗したが、床に敷いてあったカーペットから水面が立っていて中からワニが現れると、ノナムの足を噛み付いた。女性は左小指をナイフで切り落とすと、ワニはそれを見るなり、ノナムは左小指を食べた。女性は小皿に左小指を切った手の断面から血を貯めて入れて、ノナムに差し出した。


ノナムは差し出された小皿にある血を恐る恐る飲んで、心臓に痺れを覚えたが、表情に出すのを我慢して全て飲みきった。変な汗が出て女性が何人もいる幻覚が見えている中、心臓が何かに弄られる感覚を覚えて、いよいよ理性を失って魔物になってしまうと思っていると、誰かが近付いてくるのが分かって別に隠す必要は無いが、スネクダの中では綺麗好き、鼻が敏感の者と女性にとって迷惑者だったらと思っていると部屋の扉は開くと共に、大きなくしゃみが部屋に響いた。


「寒い中、私をパシリにしやがっ……て……」

部屋に来たのはヨヨアで、寒そうに厚着して全身震えていた。ヨヨアは二人の今の状況を見てどう判断すべきか考えていると、ノナムから闇の臭いがして女性に対してその場から避難するよう言う前に、ノナムは女性の首筋をカードで斬りかかった。切り傷が浅かった女性はすぐさま避難する事が出来て、女性とヨヨアは部屋を閉めてその場から一目散に逃げる前に、閉めたはずの扉が粉々に斬られてその斬撃にヨヨアは巻き込まれて、ヨヨアは女性に手を伸ばすが、その手はノナムの斬撃に巻き込まれて手は切り落とされた。二人はノナムの方を見てみると、ノナムは倒れていて近くにあったソファーの上には、酒を味わうヤズパがいた。




「まだ甚振り合いを続けようじゃないか」

ヤズパの目の前には遺骨があってその遺骨は以前に愛した女性であり、ノナムに取られた女性でもあった。ノナムは濃い闇から拍手しながら脱してきて、ヤズパの心臓を足で踏み付けた。遺骨にヤズパの手が触れた瞬間、大量のカードに化けて華麗に舞って、遺骨はそこには無くなっていた。

「闇のマジック楽しんだら、そろそろ君が寝る番だ」

ヤズパはノナムが闇を使えるようになったのか完全には信じきっては無かった。何故なら闇の血を体に取り入れた事で死ななかった上、闇を使えるようになったケースが一度も見も聞きもしなかった上、あの時荒地に薪を用意して火を付けて、そこにノナムを放り投げて燃やして灰にして天に召したはずだったが、闇を介して復活したのかと疑問の壁とぶつかっていた。しかし、闇を介して肉体を復活出来るが、一時的復活もしくは理性の無い魔物になるか魂だけが蘇って最悪、地縛霊になるといった完全な復活は不可能だとスネクダの中では常識だった。


「この遺骨はどういう事だ?」

ヤズパは結局、ノナムに対しての疑問よりもこの遺骨に対しての疑問を早く解決したかった為、その疑問をノナムにぶつけた。すると、更にノナムが質問を質問で返した。

「この女性の名前知っているか?」

ヤズパは意外な質問に答えられなかった。好きな相手の名前を知らずに今まで生きていたのが恥ずかしかったが、それはノナム同様だった。ヤズパは同じスネクダなのに、名前を知らないのも可笑しい事ではあるが、ノナムはてっきり知っているとばかり決め付けていた。彼女は以前からミステリアスだったが、限度があると思っていると、二人の所にヨヨアがやって来た。


ヨヨアは大量の資料を持ち合わせていて、ノナムは事前にヨヨアに彼女の情報を集めるよう手配していた。

「”スネクダでは無い”人間ですが、できるだけ調べておきました」

そうノナムを見ながら棘のある言葉を言い放った後、それぞれの資料の説明をし出した。彼女の誕生日、産まれた地、彼女の人生それぞれ記されていて、今一番気になっている彼女の名前が書かれた資料を強引にヤズパが取り上げて、その欄を見ようとしたが、丁度そこに血が飛び散った。どういう事かと周りを見渡すと、ノナムが倒れていて、ヨヨアの手にはナイフが握られていた。




アスモの体を借りていたノナムは生きている中での記憶をレフト達に話した。ノナムを復活させたのはヤズパであり、エリザべの神授魔力とヤズパの”闇術式”の”合技”によってアスモの体にノナムの魂が定着した事をヤズパから事前に知らせていた。ノナムを殺したのはヨヨアだったが、ヨヨアに復讐心は無く、ただ戦いを楽しみたい気持ちでノナムはいっぱいだと打ち明けた。何故ヤズパは復活させたのか特に気にしてなく、アスモの能力について高く評価していてアスモの能力”でしか”使えない事には悪くないと思っていた。


「さて、答えは任せるよ息子よ」

しかし、もう一つデスボダは疑問が出来た。父はノナムだが、母は誰なのか。答えを待っていると、アスモの体で魔力を双剣に込めるとデスボダに斬りかかった。

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