第37話・後味悪い幕引き

ノナムはただ人と魔力を使って戦いたい。対するヤズパは余計な人間は片付けるべきだとラクレタスは理解していた。戦いが続く中一切手出し出来ず、会話に混ざる事も出来なかった。自分とは住む世界が違う人間が自分以外全員で、サニーンは第一印象使い物にならなそうに見えたが、魔力量を自身よりも余裕であって、しっかり状況を理解している様子で、他人に手を差し伸べる優しさと判断力を持っているとラクレタスは愕然していると、いきなりヤズパに話を振られた。


「君は彼女に会ったのかね?」

彼女とはエリザべの事だと分かったが、何故今なのかと思ったが、サニーンが閃いたらしくいきなり大声を上げたサニーンを冷めた目で一同見送る中、ラクレタスは何故ヤズパがその質問をしたのか答えを待っているとサニーンが自慢げにヤズパの方に指先を突き付けて答えた。

「誰かこっちに来ている!?」


予想外の答えにラクレタスは戸惑う中、周りはそんなに予想外の答えだと思ってないらしく、ラクレタスの答えを急ぐようにサニーンはラクレタスを睨み付けた。後からサニーンを殺す事を心の中で誓って答えた。

「会った。 確か花束で」

その言葉にレフトは違和感を覚えた。この世界になってしまってしばらく花を見ておらず、一輪どころか花畑があるのは可笑しいと思った。それはシールディア同様で考えられる花畑の場所も二人は一致していた。それは天国とも呼ばれる所でラクレタスは本当はこの世にはいるべき存在では無いという結論に至った。しかしそれが分かった所でストレートにラクレタスに事実を話すのはどうなのかと迷っていると、シールディアがストレートにラクレタスに事実を打ち明けた。


ラクレタスはシールディアが何をいきなり言ってるのか分からなかった。自分が死んでいる?何故エリザべが居た場所を聞かれただけでそういう結論に至るのか戸惑いを隠せないでいると、新たな来客が現れた。


「ややこしい展開繰り広げてる中、お邪魔しまーす!!」

その元気な声に一同驚いたが、それよりも驚く事があった。それはこの場にいる誰よりも魔力量が多くて、この男には勝てない事を確信していた。レフトはこの現れた男が味方なのか敵なのか警戒していると、いきなり男がシールディアを抱き締めた。レフトが呆気に取られている内に、シールディアが男の頬に強い張り手を食らわした。全く状況が飲み込めない中、シールディアが男の紹介をした。


「コイツは私の師匠のクラーケン野郎だ」

明らかに舐められているそう紹介されたクラーケンは特にシールディアにツッコミを入れる事なく、状況説明をするようこの場にいる誰に頼もうかと迷っていると、シールディアが状況説明をし出すとクラーケンは落ち込んで、その場にあった小石で遊び始めた。シールディアの状況説明を終えると、クラーケンは小石で遊ぶのを止めていきなりレフトとヤズパの間に泡が出現すると、どんどん泡の数が増えていった。レフトとヤズパは泡に触れないように離れた瞬間、全ての泡がはじけて虹が現れた。


「取り敢えずスネクダから片付けようか」

クラーケンがそう言うと、ヤズパは準備運動をしながらクラーケンをどうやって殺すかを考えた。今まで戦った相手で一番戦いを味わえる。そして殺しがいがあると思ったヤズパは、笑を零すと一気にクラーケンと距離を詰めて自慢の闇が込められた爪で襲ったが、クラーケンの体に触れる事なく何かに斬られて、斬られた指先が地面に落ちた。何の攻撃かとヤズパが考える中、クラーケンの掌から激しい水が放水するとヤズパの体を余裕で押し飛ばした。ヤズパは急いで闇の力で放水に抗おうとした最中、放水が止まった。次は何の攻撃かと警戒していると突如息が苦しくなった。いきなりヤズパは海の中におり、周りは薄暗く誰も居る様子では無かった。


レフトはクラーケンの次々行う攻撃に唖然としていた。まずクラーケンの体に触れる事なく、ヤズパの指先が斬られた。魔力で攻撃したならヤズパがそう簡単に指先を斬られる事は無く、避けられたと思えたが、シールディアがいきなりレフトの肩を叩くとクラーケンの周りに魔力の激流が起こっているのに気付いた。

「魔力は”隠す”事が出来る。 それが真の実力者だ」

どういう原理で魔力を隠してヤズパの指先を斬ったのか知りたくなったが、シールディアはそう言うだけでレフトの頬を突いた。


レフトは知りたい事を変えてクラーケンの能力を教えて貰う事にした。シールディアが説明しようとするとクラーケン本人から説明をし始めた。ヤズパは今どうなっているか確認すると、大きな水滴の中に苦しそうに手足をバタバタとするヤズパがいた。


クラーケンの能力は神授魔力の一つであり、”ポセイドン”と呼ばれるものだった。

「俺は海と繋がれる凄い奴よ!」

クラーケンの言ってる意味が分からない為、シールディアに聞こうとしたがシールディアも分からないらしく、余計な詮索は時間の無駄だと思って、ヤズパはこのまま放置しても良いのかとクラーケンに聞こうとすると、クラーケンの表情が突如険しくなると、水滴が崩壊して周りに水滴が飛び散ると思ったが、そんな事は無くやけに苦しそうにしているヤズパが現れた。この状況はクラーケンからしても予想外らしく、次の一手を考えているとシールディアがすかさず槍でヤズパをトドメに入ると、ノナムがヤズパの前に立って手を伸ばして殺さないよう立ちはだかった。


「殺し合いは嫌いって何で分からねぇのかな!?」

ノナムはやはりヤズパのおかげでアスモの体を借りているものの、蘇る事に成功した事に感謝していた。しかし想い人が同じという複雑な気持ちも相まって本人に直接感謝の気持ちを伝える事は出来なかった。その気持ちを汲み取るようシールディアに目で訴えたが、シールディアは魔力を槍に込めるとノナムに攻撃しようした。しかし、シールディアの手足を水状の輪っかで拘束されて魔力を上手く操作出来なくなった。これはクラーケンの仕業だと思った束の間、大きなワープゲートが開いた。シールディアはクラーケンに拘束を解くよう説得したが、聞く耳を持たずに大きなワープゲートでその場から立ち去るヤズパとノナムを見送った。ワープゲートが消滅する寸前に一枚の紙が風に乗ってシールディアの槍に張り付いた。


シールディアは地面に拳を強く叩き付けて、デスボダは遠くの暗雲を見上げていた。サニーンはどうすれば良いのかと戸惑う中、ラクレタスはまたしても状況が飲み込めずにいた。そんな中クラーケンは皆に向けて今後の取るべき行動を提案した。それは魔力を使える人間が集うお祭りに参加する事だった。シールディアは槍に貼り付いた紙を見るとそのお祭りの案内状だった。

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