第38話・剣を磨け

祭りが開催される場所は、今いるソムサヂ村から北東に位置する中都市フロワカだった。何で祭りに参加する必要があるのか。クラーケンの考えに皆、納得いっていないと思ったがサニーンが祭りに参加する気満々で、今屋台で何が食べたいか迷っているところだった。レフトはため息をつくと眠り続けるシールディアを視界に入れながら剣を振り続けた。レフトの魔力はある程度回復しており、クラーケンによる剣の稽古を受けていた。クラーケンの性格は基本的には明るいのだが、優しい口調とは裏腹に激しい稽古の日々を過ごしていた。稽古に参加しているのはレフトだけではなく、拳だけではなく剣も極めたかったデスボダも参加していた。デスボダは父のノナムと剣を交えた事をきっかけに更に高みを目指す目標を立てていた。


稽古から一週間、シールディアは目を覚ましてそれにいち早く気付いたレフトは冷たい水をゆっくりシールディアに飲ました。シールディアはレフトに礼を述べると料理をしているクラーケンの後ろに正座して、頭を下げた。クラーケンは自慢の料理を作り上げてシールディアの前に正座した。シールディアは一週間眠り続けた事に詫びを入れて祭りに参加する事に反対する意志を顕にした。レフトはその様子をこっそり伺っていてクラーケンはどうでるか心臓の鼓動が自分でも聞こえるぐらいの中、後ろからデスボダに声を掛けられて変な声を上げた挙句、二人にレフトがいた事がバレてしまった。言い訳を考えている中、クラーケンがシールディアにスープを手渡して口を開いた。

「祭りといっても下手したら死んでも可笑しくない」

そのクラーケンの言葉に重みを感じてシールディアは気持ちが揺らいだ。レフトはサニーンがこの事を知ったらどんなに落ち込むだろうかと考えていると、その場にいた筈のデスボダが居らずまさかと思って、サニーンがいた所に戻るとサニーンに事実を告げているデスボダがいて、レフトの予想通りサニーンは落ち込んで、近くにあった薪を斧で割り始めた。




次の日、ソムサヂ村残留組と中都市フロワカに向かう組に分かれる事になった。前者は治療中のグレアスとその治療を行うシールディアの知り合いの女性、完全に落ち込んでいるサニーン、今は読書して落ち着いているラクレタスで、後者はレフト、デスボダ、シールディア、クラーケンとなって四人は残留組に手を振ってすぐ洞窟に入った。


着・心音の洞窟

洞窟の中は静かで、いきなり現れるスライムはレフトとデスボダだけで討伐していた。

クラーケンによってシールディアは一切助けてはならないと止められていた。かなり進んでどんどん辺りが薄暗く中、突如明るい光が見えて警戒すると、後ろに洞窟の岩石とは違う硬い感触を覚えてしまったと思った最中、後ろからも明るい光が現れて何かが起動する音が聞こえた。槍を手にしたシールディアだったが、デスボダは気合いの雄叫びを上げると見えない何かに向かって拳に魔力を込めて、見えない何かと拳が触れた瞬間、その見えない何かは後ろにぶっ飛ばされてその衝撃で外から光が漏れた。その光によって見えない何かはゴーレムだった事が分かってよく見ると、周りには起動はしていないもののゴーレムの大群があった。


起動した二体のゴーレムはレフトとデスボダに向かって、拳を振り落としたりミサイル発射の二パターンで、ゴーレムの行動を暫く見て攻撃に移ろうとしていたレフトに対して、デスボダは身体中の魔力を両手の拳を重ねて集中させて新たな技を生み出そうとしていた。この様子を見て関心したらしくクラーケンは扇子を平げて華麗に舞を見せた。シールディアは適当にあしらってる中、デスボダの拳の辺りが強く発光してタイミングを見計らって、重なった拳を離すと、生み出された高圧な電気がゴーレムを襲った。ただの高圧の電気ではなく、高圧な電気は炎へと変化してゴーレム全身を炎が包み込んだ。


もう一体のゴーレムはレフトが倒す事になった。レフトはゴーレムのミサイルを全て避けて、反動で動けないゴーレムをチャンスと見て以前、不届き山にてシールディアから教わった”魔力殴り”《ボディブレイク》を使おうとしたが、折角クラーケンから剣を教えて貰った為剣での攻撃を選んだ。まだ能力の使用方法が分からない”光の覚醒”を使うのは自分の為にならない。また暴走して余計な迷惑は掛けたくない気持ちを汲み取ってか、シールディアが槍を持つ手に力が入るのを見てレフトは一旦心を落ち着かせ、剣に適当な魔力を注いでゴーレムを斬った。

「”想い斬り・白”」

たった一回の斬撃はゴーレムにとって大きなダメージとなって、デスボダがダメージを与えたゴーレムとぶつかってチャンスと見たレフトとデスボダは、互いに剣を手にしてゴーレムを斬った。デスボダは雷を帯びた剣が炎を帯びた剣に変えて、レフトは”光の覚醒”でしか使った事がない技”想い斬り・流星”を試してみた。


クラーケンが見るからに二人は充分な剣のセンスがあると判断した。レフトから能力について聞いて正直、どうすれば能力を自由に使えるか分からなかったが、レフト自身が強くなればレフトの言う”もう一人のレフト”も認めて力を自由に使える権利を得れるのではないか。そうレフトに考えを伝えて少し様子を見る事にした。クラーケンはお茶を飲みながら、以前剣を交えた事がある男とレフトを重ねた。


二人の斬撃はゴーレムの体の崩壊へと繋げた。瓦礫は砂煙に紛れて消えていってコアだけが残った。残りのゴーレムが目覚める事はなく、二人はハイタッチをしてシールディアに向けてドヤ顔をみせた。デスボダは魔力が電気に変えて、更に炎に変える技術を確かに物にした。今は軽く作り出した電気を、今度は風に変える練習をしていてまたクラーケンが扇子を平げて舞を見せようとしたが、シールディアに足を踏まれて舞を見せるのを止めた。


心音の洞窟は体感一時間となったデスボダは特に魔物が現れる事なく静かな空間が飽きたのか急に叫んだ。一同驚いたがシールディアに強めの膝カックンをデスボダに食らわした。また叫び声を上げたデスボダにリンクしたかのように、いきなり一同の目の前に下から扉が現れた。現れた門は鏡のように透明で自分の姿が反射して見えた。シールディアは門に触って魔力を注いで門の先は何処に繋がっているのか調べた。調べている中、いきなり辺りが悲惨な状態になる前のソムサヂ村の景色になった。状況が飲み込めない中、誰かに話し掛けられて振り向くと亡くなった筈のシールディアの母がいた。

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変わり果てた世界でたった一人の弟を探し続ける。 ねしちご。 @sitigo

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