第11話・二人の化け物

「レディに猿は失礼じゃないの?」

レフトとシールディアは剣を手に取って構えた。レフトは剣を構えると手が震えているのが分かった。するとシールディアが片手をレフトの手に重ねた。

「さっさと終わらして帰って酒飲むぞ」

「俺まだ未成年だから……」

レフトの頬が緩み、手が震えなった。


シールディアは意識を集中させて魔力を全身に巡りさせて一気に光へ変えた。それと引き換えにシールディアの心臓に強い痛みが走った。その様子を見たスネクダの男は”闇”ではなく、何故か”魔力”を手先に集中させて魔剣を作り出した。

「俺は闇は使わねぇ。 魔力で勝負だ」

シールディアは戸惑った。魔力で魔剣を作り出した事ではなく、闇ではなく魔力で勝負をしようとしている事にだ。スネクダは闇での攻撃が一般的で魔力そのものを持たない特殊な一族だと知られていた。

「一体何考えてやがる? 闇の分際が」

シールディアは光を剣先に集中させて問答無用でスネクダの男に攻撃を仕掛けた。剣先は一切揺らぐ事無くスネクダの男の心臓部分を捉えた。しかし、心臓に剣先が触れる寸前でスネクダの男は消えて、シールディアはスネクダが消えてどこに移動したか目を追っていたが、どこにもいなくもしやと思った時には遅かった。シールディアの背後より、スネクダの男の拳に込めた魔力の一撃を食らってしまった。シールディアは派手に飛ばされてしまい、大岩に激突してしまった。レフトは心配してシールディアに駆け寄ろうとしたが、シールディアは笑って見せた。

「俺の雷絶拳らいぜつけんを耐えるか……」

しかし、シールディアはダメージを負っているどころかノーダメージで即座に今度は剣先に魔力を集中させた。


「お前まさかと思うが、”神授魔力”持ちか?」

スネクダの男はシールディアにそう質問した。シールディアはその答えは言葉ではなく、行動で示した。自身に剣先を向けて心臓目掛けて貫こうとした。レフトはそれを止めようとしたが、小石に躓いて転んでしまった。レフトは顔を上げて手を伸ばしてシールディアに向けて声を上げた。しかし、シールディアは自ら剣を心臓に向けて振り落とした瞬間に高い音が響き渡り、シールディアの持っていた剣が少し割れてしまった。シールディアの方は無傷で剣が割れてしまった事に悔いていた。


「神授魔力持っているなんて 俺はなんてラッキーなんだ!!」

スネクダの男は興奮して自分周辺に何発ものの雷を落とした。レフトは何の事か今何が起きているのか理解出来なかった。スネクダの男は魔力を足に込めると、足が電気帯出し、その電気を生かしたスピードで一気にシールディアと距離を詰めて、足から拳へと魔力を移動して、電気を帯びた拳の攻撃が連続してシールディアを襲った。レフトには早すぎるのと圧倒的な魔力量を感じて一切動けずにいた。一方のシールディアは全ての攻撃を受けている様子で、スネクダの男は笑みを浮かべて一方のシールディアは歯を食いしばって攻撃を受けていた。防戦一方と思えたシールディアだが、片手で剣をスネクダの男目掛けて切った。


砂煙が立ち込み、二人の様子が見えなくなってしまった。先に声を上げたのは切られた筈のスネクダの男だった。シールディアが剣を手に取った瞬間にまた拳から足へと魔力を移動して、電気を帯びさしてシールディアの反撃を避けていた。それだけではなく、シールディアの髪の毛一本抜いていて、自慢げにレフトの方へ見せて来た。

「大丈夫少年。 騎士様は生きているぞ」

砂煙が無くなり、シールディアの姿がようやく見えたと思うと、シールディアの体は無傷であり、スネクダの男に抜き取られた髪の毛を気にしていた。レフトはこの時思っていた。とんでもない化け物が二人もいて訳が分からない言動をしている事に脳が追いつかずにいた。




スネクダの男は地べたに寝転んで赤い空を見上げていた。その様子を二人は見ながら、シールディアがまだ話していなかった自分の秘密について話し出した。

「神授魔力について話しておこうか」

神授魔力は魔力とは違い、神から授かったものとされていて通常の魔力攻撃の常識は通用しないイレギュラーな存在だった。無意識に発動する便利な物で熱い鍋を手で触れると手が勝手に引っ込んでしまうのと一緒だとシールディアは分かりやすく例えた。ちなみにシールディアの神授魔力は魔力を使わない通常攻撃や魔力攻撃を無効化してダメージを受けない能力だと自慢げに言った。しかし条件があり、仲間が半径五メートル以内に居ないと発動せず、味方が傷を負っているのにも関わらず、自分は無傷なのに心を痛めたり、一部味方から冷たい目で見られる経験を数え切れないほどあって自殺したい気持ちに何度も駆られて、百発百中自殺が失敗に終わっていた。それがシールディアの神授魔力「アテナ」だった。




「話終わったか……名前まだだったな。 俺はデスボダ・ヨグだ」

二人は少々名前を名乗るのに悩んだが、デスボダの耳が巨大化して二人の鼻が押し付けるまで大きくなった。続いてデスボダは再び電気の魔剣を作り出して己の心臓を突き刺そうとすると、レフトが自分の名を名乗った。レフトが罠に嵌った様な顔を見せるとデスボダは高笑いすると、シールディアにも名前を名乗るようしつこく耳を巨大化させてシールディアの顔を押し付けた。シールディアはデスボダの耳を剣で切り付けると名前を名乗った。シールディアはデスボダが痛がっている隙にデスボダはどういう人間なのかをレフトと互いに考えを示す事にした。スネクダでありながらも闇の力を利用せず、人間と同じ魔力を利用して攻撃するのに明らかな信頼性がありつつも、謎で何か裏があるのではないかと二人は考えていた。


「お前は何しに来た? お前は私達にとって敵なのか?」

シールディアは剣先をデスボダに向けて反応を待った。デスボダは山頂の方に体を向けて電気の魔剣を作り出して山頂の方を向けて剣を突き出した。シールディアはその様子を見てデスボダの横に並んだ。

「結果次第でお前の処刑を決める」




デスボダは一人山頂目掛けて突っ走っていった。二人は道中魔物の遺体を何個も見ながらデスボダの後を追った。先に山頂に着いたデスボダは唐突に強大な魔力を感じて走るのを止めて、指を鳴らすと強大な魔力を持つ何かに雷を落とした。雷によって発された黒煙が晴れていき、正体を表した。そこに居たのは電気を通さない体の丈夫なドラゴンがいた。

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