第12話・雷神地神

ドラゴンの叫び声により、デスボダは反射的に耳を手で抑えた。しかし、手を抑えても耳の奥まで音は届き、デスボダが攻撃出来ずにいると、ドラゴンのしっぽの一振をデスボダは真面に食らってしまい、後を追っていたレフトに向かって投げ飛ばされてぶつかってしまった。デスボダはレフトに非礼を詫びる事無く、反撃しようと拳に魔力を込めて高圧の電気を作り出してドラゴンの額にお見舞した。

「”雷絶拳”《らいぜつけん》!!」

しかし、殆どダメージはなく雄叫びと共に砂煙を発生させてデスボダを襲った。砂煙に閉じ込められて視界を奪われて身動きが取れずにいると、いてもたってもいられなくなったシールディアは砂煙に向かって歩き出して砂煙に手で触れると砂煙は消え去り、砂煙によって宙に浮いていたデスボダは真っ逆さまに落ちた。落ちたデスボダは何故か笑っていた。デスボダの掌に魔力で出来た紋章のようなものが浮かび上がっており、魔力を足に込めるとあっという間にドラゴンの腹部まで辿り着いた。ドラゴンと地面との間は極わずか。その間をデスボダは滑り込んで腹部にて放電した。その放電と共にドラゴンはうめき声を上げた。ドラゴンは真上に打ち上げられてデスボダは追撃としてドラゴンの腹部に電気を帯びた拳を振り上げた。

「”雷絶拳・昇の演”《らいぜつけん・しょうのえん》!!」

その様子を見てシールディアは理解した。ドラゴンの額にお見舞した一撃はただの一撃ではなく、ドラゴンの情報を知る為に仕向けた魔力攻撃であるという事に。


「言うの遅れたけど、”俺も神授魔力持ってるから”」

デスボダは追加で拳に魔力を込めて青白い稲妻がドラゴンの腹部を襲った。ドラゴンは気を失ってその場に倒れた。デスボダは勝利の雄叫びを上げて雷を何度もドラゴンに向かって打ち付けた。ドラゴンからはまるで肉をこんがり焼いたような匂いが漂い始めた。二人はその状況、一分も経たない一方的な戦いを見ていた。レフトはいつの間にか拍手をしていた。シールディアはデスボダが言い放った言葉に理解するしか無かった。


デスボダがレフト達の所に歩みを進めようとした時、ドラゴンは再び目を覚まして大空を飛んだ。周りは砂煙のせいでドラゴンに追撃は出来ずにいた。シールディアは懐から

「火光石」を取り出した。火光石は再び弱く発光していつの間にか術式が組み込まれていた。シールディアは火光石を手でかざして念じると術式が解除されて空中にいた筈のドラゴンは消えており、弱く発行していた筈の火光石は強く光出した。それは魔力を多く持ち、危険レベルである事を示していた。


ドラゴンは消えて周りが静まり返った中、デスボダはドラゴンを倒し損なった悔しさから周りにあった岩石を壊し続けていた。しかし、シールディアはここのダンジョンの仕組みを理解しようと試みていた。火光石は術式が組み込まれてヒヨっ子が挑めるダンジョンどころか一つ山場を超えた者が挑めるダンジョンだったと。オーガが現れた時から不信感を抱いていたシールディアはここで確信に変わっていた。

「さっさと出てこい真のラスボス!!」

シールディアの声は山中に響き渡り、再び静まり返った。


レフトは意識を集中して巨大な魔力のあり所を探り始めた。レフトの近くにも巨大な魔力が二つあるのが分かるとそれとは別の魔力を巨大な魔力を探っていた。魔力を隠す方法があるのだろうか。「隠す」という事からライトとの隠れんぼを思い出していた。


ライトは隠れんぼの天才で、いやレフトが隠れんぼに向いていなかった可能性もあるのだが、ライトが隠れると六時間経つのが当たり前で体の柔軟さと行動力を活かした隠れテクは鬼側のレフトは惚れ惚れしてしまう事もあった。逆の場合も数分でライトがレフトを見つけ出して三個の蒸しパンから二つを食べてしまうパターンがレフトには見えていた。そんな中でライトが隠れた事がある所を一つずつ思い出して一つ隠れてる可能性がありそうな所を絞り出した。

「地面はどうか?」

ライトは地面に穴を掘って自分が入って地面の上に地面の色に似た布を上に被せて隠れた事が何度かあった。地面に耳を傾けると静かで魔力も感じなかった。シールディアは剣を地面に突き刺して手をゆっくり合わせて叫んだ。

「”地伝導波”《マウォール》!!」

剣先から魔力を発して地面の下へ下へと伝わっていき、また静かな時間が流れた。しかし、突然に巨大な魔力がレフト達の近くに感じたと思うとその正体が地面から現れた。


大きな玉座に座った少女から膨大な魔力を感じていて、明らかにこの山のボスであり、シールディアとデスボダ同様、”神授魔力”持ちである事をレフトは悟った。少女は何も語る事無く、レフト達の顔を交互に見ていた。デスボダは早く決着を付けたいようで魔力を体全身に巡りさせて、高電圧の雷が少女を襲った。しかし、少女は全く効いていないようで指を鳴らすと、地鳴らしが起きてデスボダ付近の地面が変形してデスボダを拘束した。放電させて拘束を解こうとするが、より拘束が強くなり、デスボダは地面に埋め込まれてデスボダの声は聞こえなくなった。

「ガツガツする人は嫌いなのです。 貴女方が知りたい情報はどのようなものですか?」

少女は口を開き、レフト達の目的を見透かしている様子だった。レフト達の目的はダンジョンのクリアも目的の一つだが、真の目的はソムサヂ村の秘密を知っているであろう女に出会う事であり、レフトは目の前にいる少女がその女と同一人物である可能性があると思っている一方で、数百年前の話の為、女が生きている筈は無いのと、ましてや少女はまだ産まれていない筈という固定概念にも駆られていて果たして目の前にいる少女は一体何者なのか想像以上の化け物なのかという様々な考えが巡っていたが、急に地鳴らしが起きて謎の少女は口を開いた。


「急ぎの用事でなければ、急いで村に戻って下さい」

地鳴らしを少女が発生させて、地面からデスボダが飛び出てきた。シールディアはその言葉を受けて嫌な予感がした。それはシールディアの経験にあって何度も屍を見る羽目になってしまった事からシールディアは嫌な予感を敏感に感じてしまう体になっていた。


強制的に少女によってダンジョンを抜けたレフトは暫く気を失っていて意識が戻った。直ぐに恐ろしい何かがいてレフトは体が暫く動けなかった。恐る恐る村の方を見ると村は黒い炎に包まれていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る