第10話・光の覚醒
不届き山の道は険しさを増していった。ゴーレムの他にも巨大アリ、人喰い草が現れた。拳での攻撃よりも剣での攻撃の方が向いていると感じて、レフトは剣先に魔力を集めて深呼吸をした。以前にシールディアから簡単な剣術を教わっていた。レフトが振るった剣は巨大アリの心臓部分に当たったが、急所を与える事は出来なかった。それに加えてただ剣を振るったのと変わらない威力だった。レフトは石に躓いて派手に転んだのをチャンスと見た人喰い草はツタを器用に使って、レフトを掴んで食べようとした時、シールディアは剣で鮮やかにツタを切って、人喰い草の首元を切った。人喰い草は動けなくなり、暫く様子見だった巨大アリも倒した。シールディアはガッツポーズをした。
「こんな調子で本当に良いのか?」
レフトの魔力を使った攻撃は上手くいかず、落ち込んでいた。シールディアはその様子を見て剣を振るった。レフトが使った剣術とは違う色んな剣術をレフトの目の前で連続して見せた。
「自分に合う、剣に合う、敵に合う剣術を使うのがセオリーというものだ」
シールディアの声が大きかったのか、オーガの大群があちこちから二人の目の前に現れた。シールディアはすぐさまレフトに謝ると、お互いに背中を合わせた状態で剣を取って、周りを囲ったオーガの出処を探っていた。
「この状態を脱する術をレフトが考えてみよ」
レフトは急な無茶振りを受けて、頭の中をフル回転させて作戦を練った。作戦を練っている最中、レフトの意識は別意識に飛んでしまった。
レフトの目の周りは真っ白で、気が付くとレフトの目の前にはレフトにそっくりな青年が椅子に座っていた。
「君は見た目では賢く見えて、実際は馬鹿なんだね」
青年は立ち上がり、レフトの周りを回り始めた。
「君には剣の才能が無い。 魔力を使う才能も無い」
レフトはそんな事を分かりきっていた。しかし、いきなり偉そうに言われて少々腹が立った。
「お前は何を知っている?」
レフトの拳に魔力が集まる。その様子を見て青年は呆れた様子で青年も拳に魔力を込めた。レフトとは違って魔力量が多く、色鮮やかな炎が燃えている様だった。青年は徐々に形が崩れながらレフトに近づいていった。最後に顔と指先が残り、指先には色鮮やかな炎のような魔力が点っていた。それをレフトの頭の上にくっ付けた。レフトの頭の中に今までに無かった情報が流れ込んで来た。
「最後に俺の名はレフト・シン。 覚えておけ」
オーガ達が雄叫びを上げると一斉にレフトとシールディアに攻撃をしようとした時、シールディアにはオーガ達の首筋に一瞬だけ、まるで流れ星の様に何かが通った気がした。レフトの方を見てみると剣を手に取って、レフトの顔にはアルファベット「L」の字が浮かび上がっていた。一方の剣には凄まじい魔力がこもっていた。
「”想い斬り・流星”」
レフトの使った剣技は、シールディアが教えた回転しながら斬る事で威力が出やすい”独楽斬り”、素早さ重視で低威力な”盗賊斬り”、加えて何故かレフトの剣技には”光”と思われるものが含まれていた。
オーガ達の顔が吹っ飛び、オーガ達の顔以外は崩れ落ちて辺りが静まり返った。オーガ達の体は風に吹かれて消えていく中、レフトの剣先はシールディアを捉えた。
「正気に戻れレフト!!」
シールディアはレフトの連続斬りをかわし続けた。何時ものレフトとは違い、素早く華麗で一振一振が重くて確実に相手を仕留める強い意志をシールディアは感じ取った。シールディアは剣を取って自らの魔力を光に変えてレフトの動きを止める手段に変えた。シールディアはスネクダと戦った時よりも弱めの光でレフトが剣を持つ左手に向けて攻撃を放った。
「”#神の道標”《ゴッドロード》!!」
通常は槍専用の技だったが、威力はだいぶ落ちて命中率が下がってしまうが、それは考えがあってこの技を選んだ。剣先中心に光を集めてそれをビームの様に発射した。見事レフトの左手に直撃して、レフトの顔に浮かび上がっていた「L」の字が消えてその場に倒れた。シールディアが選んだこの技はシールディアの意思が効果を発揮するものだった。何よりこの技を選んだ理由は光を行使する者に他の強い光が触れると、己の光が抹消される性質を利用してこの技を選んだのと、近距離攻撃よりも遠距離攻撃の方が安全で万が一レフトに大怪我を負わせてしまうリスクを考えての事でこの技を使ったのだった。
レフトは目を覚ますと、シールディアの目と合った。
「起きなくて構わない。 少し休め」
シールディアの膝の上に頭を乗せてレフトは膝枕だと気づくと顔を赤くした。その様子を見てシールディアは微笑んだ。シールディアによりレフトが光を用いてオーガを倒した事、その後にシールディアを襲った事を聞かされたレフトは膝枕されている状態から即座に頭を地面に着けて謝った。シールディアは剣を手に取って、レフトの頭目掛けて剣を振るってレフトの頭に触れるギリギリの所で剣を止めた。
「休めって言ったんだ。 謝れとは言ってない」
レフトは反射的にまた謝りそうになったが、シールディアの顔を伺うと謝る言葉は出なかった。
シールディアはレフトに対して回復技を施し、ダンジョン攻略へと再び歩み始めた。魔物に出くわす度にレフトは魔力を用いて攻撃しようとするが、十分な魔力が無く、魔物に致命傷を与える事が出来ずに数十体を迎えた。勿論最終的にはシールディアが全ての魔物を倒していた。魔物がいなくなるタイミングを見計らってシールディアはレフトの使った光の技について言及する事にした。
「技使った時は全く記憶が無いし、俺は光との関係性は一切無い」
レフトはそれの一点張りで、話が一向に進まないでいると山の頂上から砂煙が起きて二人を襲った。砂煙のせいで視界を奪われた二人は動けずにいたが、山頂の方に体を向けて警戒して砂煙が治まるのを待ったが、砂煙が治まったがそこには何も無く魔物の気配も無かった。
「いちよ警戒して早く先に進もう」
レフトとシールディアは山の異常が起きる可能性を考えて山頂を目指してペースを早めた。シールディアは何か感じたのか歩むのを止めて隠れて様子を伺っている何かに向けて瞬時に拳に魔力を込めて魔力の塊「#魔塊」を投げた。岩場は崩れ隠れていた者が現れた。
「綺麗な女だと思ったら、凶暴な猿だったか」
現れたのはスネクダ、闇の力を行使する人間だった。
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