第18話・目覚めては

サニーンの魔力量は以前より比べ物にならない程多くなっており、瘴気は失っていた。サニーンは試しに近くにあった岩に対して手をかざして魔力を岩にぶつけると、あっという間に形残ること無くなり、サニーンは今の強さを実感してた。以前はレフトよりも魔力量が多くて魔力操作を上手く出来ていたが、岩を壊す事が出来たものの、岩の根元まで破壊して岩を跡形も無くす事は出来なかった。サニーンは今まで感じた事が無い全身に流れる魔力を味わっている中、少女は急にサニーンの胸元に頭を預けた事を受けてサニーンはただ黙って少女の頭を撫でて少女の行いすなわち、少女がサニーンを殺そうとした事を許す事にした。




デスボダの攻撃とスピードは徐々に増していった。化け物はそのからくりに気づいた時には遅く、攻撃をしようとした時にはデスボダの次の攻撃を食らって、避けようとしても攻撃を食らって、為す術もない状態だったが、化け物の胸部を蹴って空中で回転していたデスボダが急に苦しみ出した。デスボダが作り出した雷雲は跡形もなく消え去った。


黒煙でレフトの視線から見れなかった化け物は黒煙の中から出てきた。化け物は雷で焼かれた跡が体全身に残っていて仮面は割れ目があり、デスボダの攻撃は致命傷寸前だとレフトは思った反面、急に苦しみ出したデスボダの心臓部分から何かが煙状で出てくるのを確認した。それはデスボダが使うのに抵抗していたもので、身近に死亡者が出す事態に陥れた”闇”だった。化け物は苦しんでいるデスボダをチャンスと見たようで即座に魔力を込めた波動をデスボダに向けて放った。化け物の警戒を怠っていたレフトは攻撃に反応出来なかったが、シールディアは魔力を込めた波動の目の前に立ち、波動を切り裂いた。

「今のデスボダに攻撃したらどうなるか分からないわ。 攻撃するなら私に」


シールディアの言葉を受けて化け物はデスボダに対しての攻撃を一旦止めてシールディアに向けて攻撃を開始した。化け物の猛攻にシールディアは鮮やかに躱し、化け物のスキをついて攻撃しようと思っていたシールディアだが、化け物の鋭い爪がシールディアの頬を引っ掻いた。シールディアの神授魔力”アテナ”は”魔力”の攻撃はノーダメージだが、化け物が込めた僅かな”瘴気”の一撃はシールディアにとってはかなりのダメージになったらしく、シールディアは地面に膝をついてレフトの方を見ると無理矢理笑顔を作って心配無い事をアピールした。


「責めて名前ぐらい教えてくれてもいいのではないか?」

シールディアは化け物に対して名を名乗る事を提案した。化け物は頷くと、仮面を外して名前を名乗った。シールディアとレフト、何よりもアスモはその化け物の正体に唖然するしか無かった。

「私の名はリイロ・リネ。 名前も聞いても戦いには影響は無い」




サニーンが少女の手を引っ張る形でレフト達の方へと急いで向かっていた。するとサニーンは急に強い瘴気を感じて急に足を止めたが、瘴気魔神がサニーンの目の前に現れた反動で、瘴気魔神の足元から硬い地面の礫がサニーンの方へと襲いかかって来た。少女は地面から触手のようなものを作り出して硬い地面の礫を全て払い除けて瘴気魔神の第一の攻撃を凌いだ。

「ありがとう。えっと…… こんな状況で悪いけど、名前は?」

サニーンは少女の名前を聞くと少女は少し間が空いて自分の名前を名乗った。

「グレアス・ゲーミャ。 合ってる?」

「知らないから聞いたんだけど……」

二人が言葉を交わしている間に瘴気魔神は体内から瘴気を振り絞って作った瘴気の塊をサニーンとグレアスの方へブン投げた。サニーンはその様子を見るや否や瘴気の塊をいとも簡単に拳で破壊して壊れた瘴気の塊が煙状と化してサニーンを襲う事なく、静かにその場で消えていった。グレアスにはからくりが理解出来なかったが、サニーン本人はそのからくりを知っているだろうと聞いてみたが、サニーンはからくりは知らず、今の力なら自分自身そしてグレアスを守れるだろうと思って拳で破壊したようだった。


瘴気魔神の瞳の色が赤から紫に変わると、サニーンとグレアスに対して背を向けて逃げようとしたが、サニーンはもう一個試す事にした。それは村の武器屋にあった弓を以前使用した際に魔力を込めた矢は瘴気魔神に一つも命中出来なかったが、今の感覚と今の魔力なら上手く矢を放たれると思って弓を手に取って瘴気魔神に狙いを定めた。するとサニーンの視界には瘴気魔神よりも目の前に模様が浮かび上がったと思ったら、その模様はロックオンマークのようで真ん中の十時マークは瘴気魔神と重なっていて、十時マークが強く光っているのを合図と思って魔力を込めた矢を瘴気魔神に対して放った。放たれた矢は瘴気魔神の心臓に突き刺さり、矢は瘴気魔神の心臓を貫通すると、遠くに見える山の方へ飛んでいってしまった。心臓を射抜かれた瘴気魔神は悲鳴を上げながら救いを求めるかのように手をサニーンの方へ差し伸ばしながら風に紛れて消えていった。


「貴方も”神授魔力”を得たのですね」

グレアスはサニーンがロックオンマークを見えた事は”神授魔力”だと決めつけ、勝手に仲間意識を芽生えた。

「グレアスにはその……ロックオンマークとやらは現れないけど?」

サニーンはそう言うとグレアスは首を傾げた。それはグレアスも殺す気満々なのかと思って一歩一歩後退りした。その様子を見てサニーンがさっき言った言葉に問題があったと訂正しようと思ったサニーンとグレアスの間に再び瘴気魔神が現れた。サニーンは驚いて反応が遅れて攻撃に移れなかったが、グレアスは地面から何本も支柱を作り出して瘴気魔神を拘束した。拘束を解こうと暴れる瘴気魔神に合わせて拘束は柔軟さを持ち合わさて瘴気魔神の拘束が弱くなるどころか強まり、心臓を射抜かれた後遺症が功を奏したのか全く動かなくなり、体が縮んでいき、ピンポン玉サイズの球体にまで縮んでいった。


「助かりやした。 戦場の先輩!!」

サニーンはグレアスに向けて頭を下げた。グレアスはその様子を身向けもせずにピンポン玉サイズの球体になった瘴気魔神を掴み取り、懐から常に色が変わる液体の入った小瓶を取り出した。その小瓶の蓋を取り、瘴気魔神の上にかけると、瘴気魔神は虹色に光ると跡形もなく消えていった。そして、消えた跡にグレアスの手には魔法陣が描かれていた。グレアスは魔法陣をサニーンに射抜くよう要求したが、サニーンは流石にそれは不味いと思って拒んでいると、グレアスは地面から大きな拳を作り上げるとサニーンにお見舞してグレアスの予想よりも遠くに飛ばされていってしまった。残されたグレアスは地面から先を尖らさせた支柱を魔法陣が描かれた手を貫通させた。グレアスは溢れ出る血を見ながらボソッと言った。

「拒むから、こんな羽目になったじゃん」

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