第19話・失い
闇を司る民のスネクダであり、長髪でガタイが良い男のヤズパはソムサヂ村に潜入していた。村は突如現れた瘴気魔神から逃げる者、無造作に殺されている者をヤズパは己の爪を噛みながら見ていた。ヤズパの目的はそれを見て楽しむのではなく、”光”を行使してスネクダの一人に確かな大ダメージを負わせたシールディアと一線混じるのがヤズパの目的だった。しかし、仕入れた情報ではソムサヂ村にいるとされていたが、ソムサヂ村にはそれらしき人物はいなかった。ヤズパは代わりに今の瘴気魔神に村を崩壊させらせる様を見ていたが、急に強い魔力が近くに現れた感覚を覚えた。早速バレないように様子を見にいこうとしたが、一人の青年が少女を抱えて走っている様子を目に入った。少女は仕入れた情報にあってそれは”リイロ”であり、闇によって既に息を引き取った証拠である闇の残り香を嗅ぎ取り、目的を変更して青年に狙いを定めて青年が気付くよりも前に青年の心臓を爪で貫いた。青年はその場に倒れてリイロは青年の手から投げ出されると重い音を響かせながら地面に落ちた。
「ちと実験体になって貰うぞ」
ヤズパは全身から闇を放出してリイロを包み込んだ。ヤズパは再び青年の心臓を左手の爪で貫くと、爪から闇を放出して目を閉じていた青年は目を覚まして起き上がった。ヤズパは右手で指を鳴らすと、リイロを包み込んでいた闇を凝縮させて右手の指先をリイロから青年に移すと、闇を凝縮されたリイロは青年の口の中に吸い込まれて青年は飲み込み、さらにヤズパは懐に入れていた球体の瘴気魔神を青年の口の中に放り込んだ。リイロと瘴気魔神を飲み込んだ青年は徐々に姿を変えていった。身体は筋肉質になって顔真っ二つに避けて青年の顔が薄い皮状になって風に吹かれてしまい、中からリイロの顔が生成されて、ヤズパは仕上げに顔に爪で傷を付けた。
「化け物の完成だな」
レフト達の思考は完全に止まってしまい、その場に立ち尽くしていた。何故リイロが生きているのか。そもそも生きているというのか。そもそも本当にリイロなのか。
「リイロ~!!」
アスモは泣き叫びながらリイロに飛びつこうとしたが、シールディアは我に返るとアスモを止めようとしたが、一方遅くリイロは手刀でアスモの首を切り、アスモの顔がシールディアの方へ飛んでいった。
「少女の涙で情けを掛けるとでも思ったのか?」
リイロの淡々として愛の無い言葉はレフトとシールディアの心の奥深くに突き刺さった。それに加えて泣き顔で止まったアスモの顔の根元から血が地面に飛び散り、悲惨さを物語っていた。
シールディアは泣きたい気持ちと怒りたい気持ちを抑えて無言でアスモの頭を撫でた。撫で続けていて堪えていた涙が溢れて、レフトはその様子を見てもらい泣きして、頬を伝った涙を拭ってリイロの方を見てみると、リイロは状況が分からないようでその場に立ち尽くしていた。
「何故貴様らも泣く? 泣くのではなく、戦え!!」
リイロは声荒げれて魔力の塊を適当に周囲にぶちまけた。レフトは魔力の塊を避けつつ、アスモの頭の根元から飛び散った血で汚れた地面も合わせて避けて、オマケにアスモの顔を手にしたシールディアに当たりそうな魔力の塊を”光”を込めた剣で跳ね返して、リイロの腹部へと直撃した。レフトは覚悟を決めてリイロをここで倒してアスモの仇を取る事にしたが、シールディアにそれは止められた。
「仇を取ろうとするな。”アスモ”ならそうする」
レフトはそう言われても納得いかず、剣に強い光を込めてリイロに向かって走り出したが、目の前にいたリイロが急に苦しみ出し、リイロの体全身には魔法陣が描かれた。
レフトは光を弱めてリイロの様子を見よる事にした。リイロの心臓部分から二体の瘴気魔神が現れてまるで風船が割れるように大きく膨らんだ後に破裂して、風に紛れて跡形も無くして消えていった。レフトはここであることに気づいた。リイロが倒される寸前の瘴気魔神を回収したのは三体だったが、リイロの心臓部分から出てきたのは二体の為、一体はどこにいったのか。それともまだ出さずに切り札にも使うのかと警戒していたが、そんな中強い魔力がレフト達の方へやってくるのを感じた。その一方で偉く大人しいデスボダだと思って振り向いて見ると、心臓を抑えて苦しんでいたデスボダは何とか闇を放出するのを抑えるのに成功したらしく、レフトの視線に気づいてデスボダは無理に笑顔を作って大丈夫なアピールをした。
リイロの筋肉質な体は若干筋肉量が減って小さくなり、何かがリイロから消えた事を感じた。
「何故かは知らないが瘴気が消えた」
デスボダは体をふらつきながらレフトの隣に立ち、さっきよりも有利な状況だとレフトは悟った。それに加えて村中に広がっていた瘴気が晴れていき、瘴気魔神の幼体達は一体も残らずに消えていき、リイロは状況を察したのか額から汗をかいており、上空から何かが飛んでくるのに気づいた。
「待たせたな仲間共!!」
弓を構えて魔力を込めた矢をリイロ目掛けて放とうとしているサニーンが上空から落ちてくるのを皆確認した。サニーンはまだ矢を放とうとしている相手がリイロである事に気づいていないらしく、容赦なく矢を放った。放たれた矢はリイロの弱点であろう心臓に向かっていたが、リイロは動いて矢が命中するのを避けようとしたが、矢はリイロの動きに合わせて補正して心臓を貫こうとした時、サニーンはリイロに向かって矢を放った事に気付いて魔力を込めた矢を消失させて攻撃を中断した。姿は変われど顔の作りはリイロのままであってそれ以前に何故リイロが生きているのかサニーンは理解出来なかった。
サニーンは状況を説明して欲しいとレフトに聞こうとした時、不意に血で汚れた地面に目がいった。目で血を辿っていくとそこにはアスモの顔があった。サニーンの思考は止まり、周りの顔を伺った。皆揃って目線を外して余り話したくない事を察してサニーンは自分で考える事にした。アスモを殺したのはリイロであり、リイロは知り合いである事がサニーンの頭の中でパンパンの中、デスボダがサニーンの顔を引っ張叩いた。
「一人でどうこうしようという話では無いんだ!!」
デスボダは今の状況は直ぐに行動に起こす状況ではない事をサニーンに伝えたかったが、思わず引っ張叩いた為にデスボダはあたふたしているとサニーンは豪快に笑い出した。
「どこのどいつか知らねぇが有難うな、新メンバー!」
サニーンはデスボダに握手を求めると、デスボダは強い握手で返した。そんな様子を見たレフトは少し気持ちが晴れた気がした。
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