第20話・闇に生きる者達

スネクダが操れる闇の量はそれぞれで、操れる闇の量が多い事は確かな脅威となり、同じスネクダでも恐れ戦く存在である事を示していた。そんなスネクダの中でも操れる闇の量が多い一人だったのがヤズパだった。


「ちょっと殺してきてよ」

ヤズパは作り替えたリイロに向けてそう言うと、ヤズパは素性は勿論魔力量を誤魔化す特殊な仮面をリイロに被せてリイロを見送った。リイロを向かさせた先はレフト達一行であり、作り替えたリイロの実験と実力を確かめるのと合わせてレフト達の実力も観察しようと、ヤズパは殺してストックしておいた魔物を吐き出して、それを結界に変えて存在とヤズパが放つ闇を隠した。


リイロとレフト達の戦いはヤズパの予想よりも長期戦となり、思わず欠伸が出てしまい欠伸が出ている途中で肩を叩かれた。振り返ってみると同じスネクダの一人であるコントペウがいた。

「先輩また趣味悪い事してますね」

コントペウはヤズパよりも操れる闇の量は少ないものの、ほぼ無傷で魔物や人を葬った実力者だった。

「光の反応が”二つ”ありやすね」

ヤズパはレフトから光の反応を感じていたが、光の使い方に納得いかずにシールディアの方が気になっていた。一方のコントペウはよく目を凝らして見てみるとレフトの顔に文字が浮かび上がっているのに気付いた。光の量もレフトの方が多い事も加えて気付いてそれをヤズパに教えようとした時、デスボダが雷雲を作り出した。


「デスボダか……ちょっと黙らせろ」

ヤズパはコントペウにデスボダの動きを止めるよう指示を仰いだが、直ぐにそれを察する事が出来なかった為、ヤズパ自信がデスボダの動きを止める事にした。デスボダの攻撃はリイロを確実に追い詰めていた中、デスボダは闇の術式を発動させた。


「”奪取強者・闇呼”|《ダークネスキャプチャー》」

デスボダから闇を奪い、奪った闇をデスボダが吸収した。コントペウはデスボダの肩を叩いたのを合図に、コントペウにも闇を分け与えた。ヤズパが使った闇の術式は術式を発動した本人が対象の生物よりも闇の量が多い場合に限り成り立つ術式でデスボダよりも闇の量が多い事を知っていた為成功する事を確信してこの術式をヤズパは発動させていた。


デスボダが作り出した雷雲は跡形もなく消え去り、リイロとシールディアの戦いは白熱してシールディアが名前を名乗るよう要求した事にヤズパはまだ化け物の正体がリイロであることを明かすタイミングではないと思ったが、正体を明かす事を止めさせるにはリイロの脳の中に凝縮させたヤズパが作り出した闇を振動させて信号を送る案もあったが、信号を送る際に居場所を特定されて実験の中止や余計な戦いは嫌でなおかつ、コントペウと共闘も嫌な為ここで化け物の正体がリイロであることを明かすことにした。


「一人消えたね~」

コントペウはそう言うと大きなキャンディを口に加えて、レフト達はどういう行動を取るか興味深々に目を輝かせた。一方のヤズパはその様子関係無く別の考え事をしていた。それはレフトの顔に浮かんだ「L」の文字についてだった。一瞬だけレフトの顔に何かの文字があると思ってその際は特に気にしなかったものの、レフトの顔に浮かんだ「L」の字が強く発光した事により、ヤズパは浮かび上がった文字が「L」であると気づいた瞬間にヤズパはシールディアよりもレフトの方に目にいってしまった。


リイロは苦しみ出し、体全体に魔法陣が描かれると瘴気が途絶え始めて村全体の瘴気が完全に無くなった。ヤズパはリイロを作り替えた張本人だった為、代償なのかヤズパは吐血して吐血はコントペウの顔に飛び散った。

「ちと不味いかな」



サニーンも参戦して、話や関係がこじれるのを期待していたがどうやらそう上手くいかずに、痺れを切らしたコントペウは顔に付いた血を拭き取り、自ら出向いてレフト達と戦おうとしたのを察したヤズパはコントペウの目の前に闇を含んだ火を放火して足を止めた。ヤズパの脳は代償でグラグラと揺れ始めて視界もボヤけ始めた。コントペウに弱みを握らせまいと強引に立ち上がり、撤退する決断に至った。

「そろそろ帰るぞ、ボケ」

コントペウは状況を飲み込めずに説明を求めたが、ヤズパは強制的に手を掴んでスネクダのアジトへとワープした。そんなワープする最中の光をグレアスは見ていた。




コイツらは何話し合いをしているのか。さっさと私を殺しに来ればいいのではないか。リイロの頭は疑問でいっぱいになった。そんな中、一瞬だけ少女の声が聞こえた。気のせいだと思ったが直ぐに同じ少女の声が聞こえた。何故か分からないがどこかで聞いた声で懐かしい感情に駆られた。プラスアルファで疑問が増えて頭が吹っ飛びそうになる中、デスボダに話し掛けられた。

「困ってる最中悪いんだけど、君に武器を突き付ける事は無いよ」

リイロは分からなかった。何故争いはここで区切る必要があるのか分からず、リイロは大量の魔力を込めた波動をデスボダに向けて放った。レフトは不味いと思ったがデスボダは片手でそれを受け止めた。デスボダの波動を受け止めた右手からは煙が立ち上がってるものの、デスボダの顔は涼しい顔をしていてリイロに向かって歩み寄り、リイロの頭を撫でた。その瞬間に誰かに頭を撫でられた知らない記憶が蘇り、脳が思考停止した。頭を撫でたのはさっきの少女ではなく大人の女性で優しい声でリイロに声をかけていた。その女性に対して心が安らぎリイロが知っている事は全て話しそうになる感覚を覚えたが、頭を撫でていた女性の首筋に細い糸が通ると、女性の顔が弾け飛びリイロを撫でていた手は止まってしまった。リイロの意識は在るべきところへと戻ってデスボダは未だにリイロの頭を撫でいた。どれぐらいの時間が経ったのか知らないがレフト達はただ微笑んでこっちを見ている状況だった。リイロはいつも間にかさっきまで考えていた事が頭から消え去っており、どこかしら安心した気持ちが芽生えた。その様子を見てデスボダは安堵の笑みを浮かべると、急に闇が目の前に感じ始めた。


「デスボダ離れろ”リイロ”から!!」

シールディアがそう叫んだが時は既に遅く、リイロから大量の闇が吹き出てデスボダの体を強引に縛り付けた。デスボダは必死で抵抗しても暖簾に腕押しでまるでリイロとデスボダが一体化するかのようにレフトには見えた。暫くすると巨大な蛹になり、全く動かなくなった。




「実験その2の開始だ」

ヤズパの実験は中止ではなく、次なる段階へと進んでいた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る