第5話・輝き

瘴気の塊がレフトに襲いかかろうとしていた。この時、急にレフトの視界は真っ暗になってしまった。

「敵の攻撃? ……待てよ確か、似たような事が以前に……」




レフトの幼少期に時は遡る。両親もまだ生きていて、レフトとライトは村の近くの空き地で遊んでいた。遊びの内容はヒーローごっこで、レフトは悪役、ライトがヒーロー役だった。その時、レフトの視界は暗くなって、徐々にレフトの視界には光る紐のようなものが見えて、端の方が強く光を放っていた。レフトはその光が気になってレフトは白い線を辿り始めた。そして、もうすぐ強い光の所まで辿り着こうとした時、線は切れて消えたと思ったら、レフトは父に腕を掴まれていた。


「お前は何を考えているんだ!! ライトに謝れ!!」

レフトはライトの方を見てみると、体中に怪我をしていて、所々出血していた。

「誰にやられたの?」

すると、父はレフトの左頬に平手打ちした。

「誰にやられた? レフト、お前に決まってんだろ!!」

でもレフトはライトに怪我を負わした記憶が無かった。すると、ライトは笑顔でレフトを庇った。

「気にしないで兄さん。 兄さんは悪くない。 たまにはヒーローだって、負けるよね」




「レフト!! 避けて早く!!」

アスモがレフトに瘴気の塊から逃げるよう言ったが、レフトには聞こえておらず、変わりにレフトの顔にはアルファベット”L”のような文字が浮かび上がり、レフトの瞳が光り輝いた。

一方のレフトの視界は真っ暗から、幼少期にあった出来事の様に、徐々に光る紐のようなものが見え始めて、幼少期と違うのは紐全体が強く光輝き、複雑な線で、幾つか紐が絡まった所も見えて、端には更に強い光見えた。


「死ねや白髪!!」

サニーンの作った瘴気の塊は、いとも簡単にレフトが振るった剣によって、真っ二つにされて瘴気は形が残る事無く、消えた。

「バカな!? 瘴気の塊など人が簡単に切れる代物ではない……しかも、瘴気は切れた後、周りに瘴気が広がる筈なのに何故消えた!? 」

サニーンが驚いている中、レフトはサニーンに目掛けて攻撃を始めた。


レフトは紐を辿って強い光へと走った。そこにライトがいると感じたからだ。


サニーンから生えた無数の手がレフトによって切られていった。反撃しようとサニーンが急いで再生したら、またレフトに切られてを繰り返した。

「殺せお前達!!」

サニーンの体から分離して、人型の魔物がレフトを襲い出した。レフトは反撃せず、あくまで攻撃の対象はサニーンの為、剣は常にサニーンに向けていた。人型の魔物をを踏み台にしたり、壁を蹴りと、所々攻撃パターンを変えならがら、サニーンの弱点を探っていた。


レフトは線を辿る中でも、痛みは感じていた。それはサニーンの人型の魔物の攻撃だった。少し、紐が切れそうになるが強い光へと走り続けた。遂に強い光に辿り着こうとした時、光から誰かがレフトの方へと向かってくるのが分かった。レフトは走るのを止めて立ち止まった。何故ならそのレフトの方へと向かってきた人物は弟のライトだったからだ。


「兄さんここに来たんだね」

レフトはライトに対して話そうとするが、一切声が出ずに、レフトが一方的に話し掛ける形になった。

「暫く会いそうに無い。 でも安心して、僕は大丈夫だから。 僕は元気にしているから」

レフトはそう言うと、また光の方へと帰って行った。レフトが後を追おうとしたが、足が何者かに引っ張られている感触を覚えて、ライトの後を追うことは出来なかった。光とライトは徐々に小さくなり、ライトは振り返って手を振った。そうして再びレフトの視界は真っ暗になった。


サニーンの内部から沢山の人の顔が覗かせていたが、一つの顔にレフトは狙いを定めた。サニーンの首元にそれはあり、レフトは宙に浮いていた。その時レフトは我に返った。真っ暗な視界から急に怒り狂うサニーンの目の前で、サポートしているアスモ、リイロが見えた。レフトは定めたサニーンの内部にある人の顔に剣で貫いた。

「安らかに眠れサニーン」

サニーンの体は複雑に動き、まるで風船の中の空気が無くなっていくかの様に、サニーンが取り込んでいた瘴気が外部に吹き出て、外部に出ていた人型の魔物は苦しみながら、消えていった。瘴気は徐々に薄れていき、サニーン本体のみになった。レフトの様な青年の姿となり、目を瞑り、ただ地面の上に立ち尽くしていた。レフトはサニーンと徐々に距離を詰めて、レフトはサニーンの額の上に左手を乗せた。


「リイロ、石一つ余ってるだろ」

リイロは戸惑ったが、最後の一つとして袋に入っていた魔石をレフトに向けて投げた。魔石をレフトは右手に握り締めて、レフトは深呼吸した。魔石は光り始めて、レフトの左手とサニーンの額の境が光り始めた。その光は暖かく、まるでサニーンを癒して天国へ送り届けるかのように。レフトの頭にはサニーンの記憶が流れ込んだ。レフトの目には涙が溢れ始めた。




「母さん! 俺、騎士になりてぇ!」

サニーンの幼少期、彼は騎士に憧れがあった。単純にカッコイイという印象があるに加えてサニーンが住んでいた村には揉め事が無ければ、魔物も生息してなく平和な村な為、騎士はちょっとした村の問題の解決や話し相手になる仕事を行っていて、楽なイメージがサニーンにはあった。しかし、ある日そのイメージは無くなった。村は焼かれ、ゴブリンの群れが村を占領して、騎士達は普段から鍛える事が無かった為かゴブリンによって次々に殺されていった。村の子供達は奴隷となり、サニーンも奴隷の一人になった。


「全部アレのせいだ。 アレが俺達の平和な村を奪った」

朝起きて日課の愛犬の散歩をする為、外へ出た。すると、眩い光がサニーンだけではなく村中を包み込んだ。暫く意識が飛んだ後、気が付いたら村は変わり果てていた。


知らない洞穴にサニーン達の子供は囚われていた。サニーンはその囚われた日の夜、ゴブリンが眠気と葛藤している隙に、静かに逃げ出した。その道中、魔物の群れに出会してしまった。その魔物の群れの中から男が現れた。

「君を助けてあげよう。 さぁ、私の手を取って」

サニーンは男の手を取った瞬間、魔物が二人の周りを回り始めた。サニーンは体が動けなくなっており、目の前にいたはずの男が消えていた。魔物は徐々に瘴気へと変わっていき、その瘴気がサニーンを飲み込んだ。そうしてサニーンが魔物として生まれ変わった。




レフトは目を覚ますと、禊の森に倒れていた。あったはずの神殿は消えており、レフトの近くにはアスモ、リイロが倒れていた。そんな状況で、別の人間がレフトの方へと向かってくるのが分かった。レフトは起きてすぐだったが、近くにあった剣を手に取って、構えた。構えた拍子に騎士のような女が襲いかかって来た。

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