第4話・魔の手

サニーンの体はレフトよりも大人な男性だが、人間にしては色白で、口元は血のような物で汚れていた。

「さぁ”俺様の作ったダンジョン”へようこそ」

「”ダンジョン”を”作った” ? 作れるものなのか?」

レフトは、横のアスモの方を見て確認した。

「ダンジョンを作ってる奴がいる話は初めて聞いた」

すると、再びサニーンは豪快に笑った。

「”魔窟製作”《ダンジョンクリエイト》。 まぁ俺様の特技みたいなものさ」

サニーンが人差し指を挙げると、人差し指の先で空間が歪んでいる部分がある事をレフトとアスモは確認した。


「で、どうする? 殺す? 殺さないよね? ね? 」

一瞬にしてサニーンがレフトの直ぐ隣に来て、レフトの耳元で囁いた。レフトは恐怖を感じて体が小刻みに揺れてるだけで動く事は出来なかった。

「返事しないと俺怒るよ」

サニーンは笑顔でそう言った。アスモは持っていた剣をサニーンに向けた。

「お隣さんは俺を殺すつもりだって。 で、どうする? 弱虫レフト君は?」


「”鳥獣・斬撃の舞”」

アスモはサニーンに対して攻撃を放った。乱れゆく斬撃はサニーンは躱し続けた。アスモは距離を取って別の技を放つ為の構えに移った。アスモは深呼吸をして一気にサニーンに近づく。

「”生物循環”」

アスモは剣をサニーンの目の前に突き出し、サニーンの目の前に虫や鹿、猪や熊といった生物の幻影が回り始めた。サニーンは自ら放つ瘴気を強めた。が、瘴気は浄化されて暖簾に腕押しだった。サニーンの体は徐々に縮まり出してまるでサニーンの体そのものが瘴気のようにどんどん消えていった。レフトはこのままサニーンを倒せると安堵したが、突然アスモは急に気を失って倒れた。レフトはすぐさまアスモに駆け寄るが、レフトはアスモの体に触れる事無く体が固まってしまった。


「危ない。 危ない。 マジで俺を殺そうとしたからさぁ、ちょっと本気出しちゃった」

サニーンの体は無傷で、サニーンの周りにいた幻影は瘴気にかき消されて、さっきよりも瘴気を強く放っていた。

「この女ももうすぐ死ぬよ。 良かったじゃん、友達と仲良く死ねて」


サニーンはレフトに近付いていく。が、レフトは恐怖で体が動けずにいた。サニーンは笑顔で、指先に瘴気の塊を作った。

「瘴気というのはちょっとなら、害はそんなに無い。でも、大量に一気に触れると、確実に死ぬ。 さぁ、君も彼女達の跡を追いな」

しかし、サニーンは瘴気の塊を作るのを止めて、何かを避けた。

「あれれ? 何で生きてんの? おチビさん」

レフトはまさかと思って、サニーンが見ている方に合わせて見てみると、そこには死んで階段に化したはずのリイロがいた。




数時間前ーーーー

リイロの意識はまた別の所にあった。リイロはあの世に来たのかと思ったが、リイロの目の前にはアスモがいた。リイロがアスモに駆け寄ろうとすると、アスモは黒い煙のようなものに包まれて倒れてしまった。リイロがアスモに対して手を伸ばそうとした時、リイロは遺跡の中にいた。

「私、生きてる?」

リイロは小袋の中を確かめてみると、魔石が四つとリイロが持っていた魔石とは別の複雑な術式が施された魔石が1つの入っていた。

「魔石が使えるようになっている……そうだ!! アスモ達が危ない!!」

リイロが先を急ごうと走り出した先には無かったはずの階段があった。

「なんであんの? まさか、アスモが!?」

リイロは階段を使って次の階へと進んだ。




「魔石も復活してやがる。 だが、おチビ一人で何が出来る?」

リイロは三つの魔石を真上に軽く投げ、祈りを捧げた。

「”輝石の加護”《ストーンイリュージョン》」

リイロが祈りを捧げる中、サニーンの腕に入れ墨のようなものが浮かび上がり、魔石に対して念じた。

「”封魔の伝令”《ブラックメッセンジャー》」

サニーンからどす黒い名もなき魔物が産まれ、リイロに噛み付いた。が、リイロが持っていた複雑な術式が施された魔石が光出し、魔物を一瞬にして消し去った。


「その魔石は……何故お前が……」

サニーンは今までの自信たっぷりの顔ではなく、初めて焦った顔を三人に見せた。一方の魔石の効果により、三人は全回復と攻撃力の上昇、防御力の上昇した。瀕死状態だったアスモも無傷の状態プラスアルファまで至る事が出来た。アスモはリイロに抱きついて再会の嬉しさを分かちあった。この時レフトも早く弟ライトに再開して、アスモとリイロと同じようになったらいいと思いにふけた。


「不愉快だ。 さっさと死にやがれ!!」

サニーンの怒りは沸点にまで上がり、サニーンが再び体を変わり出した。体は数倍にも大きくなり、それと伴い、部屋も広くなっていった。サニーンの体は蛇のように細長く、何個も手足を生やし、サニーンの内部は常に動いていて、人の顔達がレフト達の方へ覗かせた。


「気分は最悪だが、お前達を殺せるならマシだ。」

レフトとアスモは剣を構え、リイロは複雑な術式が施された魔石をサニーンに向けた。サニーンから無数の手が伸びてリイロの持っている魔石を奪おうとしたが、レフトとアスモが声を合わせて切り刻んでいった。

「無駄だ。 俺の作戦をぶち壊した責任をみっちり償って貰うぞ」




「見える。 見える。 三人森にやって来る。 久しぶりに殺す面白さを味わえる」

サニーンは自らの魔眼で、レフト、アスモ、リイロが来るのを知った。その後は上手くレフトから疑いの目は背く事に成功した。その後もアスモ、リイロにも会い、サニーンが作り出した遺跡のスイッチを押して、遺跡を登場させて中に入った。

「(誰から殺そうか。 この青年か。 この男女か。 やっぱり一番チョロそうなチビからにしよう!)」

三人が遺跡の中にて階段を探している中、サニーンだけ三人をどうやって殺すか。ダンジョンをクリアさせないか。と、色々作戦を練っていた。


サニーンは指先に瘴気の塊を作って、直ぐにバレないようそして本人に気づかれないよう、リイロの耳から瘴気の塊を入れ、上手くリイロの体内に瘴気を大量に取り込まさせ、殺した。

「(仕上げしよう。 仕上げは”思想変化”《リマインドチェンジ》」

サニーンの手により、リイロは階段の姿へ変えた。更に自分の戦いの場に行けるよう、階段の先を仕組んだ。

「(残り二人は中々の実力者。 しかし、この体の状態維持も時間が無い……)」

サニーンの偽りの姿を維持するには時間制限があり、隠していた瘴気が漏れだしそうになっていた。


三人が一つの部屋に辿り着いた時に、サニーンは限界を迎えた。

「(もうタイムアップだな……どうするかな)」

その時、つい癖で頭を掻いてしまい、瘴気が合わせて漏れ出てしまった。それをアスモは見逃さず、サニーンは戦い得ざる終えなかった。




「俺は殺されない。 絶対に!!」

サニーンはレフト目掛けて大量の瘴気の塊を数個作って、投げ打った。

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