第3話・消えた仲間

「これが噂の遺跡……アンタお手柄じゃねぇか」

アスモはそう言うと、遺跡に入ろうとした瞬間、レフトがアスモを押し飛ばした。アスモは文句を言おうとしたが、アスモは直ぐにその気は無くなった。何故なら、遺跡の入口がまるで空間が捻れているかの様だったからだ。すると、リイロが口を開いた。


「これが噂の”ダンジョン”ですかね……」

「”ダンジョン”? 何だそれは?」

レフトがそう言って疑問を持つと、リイロが緊張した面持ちで話し出した。

「特別な領域で、最近そういった場所が増えてるそうです。恐ろしいのは、入ったらそこの”ダンジョン”の条件をクリアしない限り、外へ出る事が出来ないみたいです。」

「例えばどんな条件?」

サニーンが今までのトーンとは違い、落ち着いたトーンでリイロに質問した。


「奥地まで辿り着く事、特定時間いる事、特定数の魔物を倒す事、ボスの魔物を倒す事、そして……」

リイロが最後に条件を言おうとした瞬間、レフトが思い付いて言った。

「死ぬ事?」

周りが静まり、リイロが黙ってゆっくり頷いた。お互いがお互いの様子を探っている中、レフトは遺跡の入口の方を見るとある事に気付いた。遺跡の入口直ぐの柱にて不思議な印が記されていた。レフトはその印に見覚えがあった。その印は、”変わる前”の世界でミバヤコルホの時計台の最深部にて見た大きな球体にも同じ印が記されていた。


「……入る。俺には入らなければならない理由がある」

レフトは覚悟して遺跡の中に入る事を決めた。何故なら弟がいなくなった要因の一つでもある大きな球体と遺跡が同じ印があり、手掛かりがあると思ったからだ。

「俺も行くぜ! 俺の足だけは引っ張らないでおくれよ」

サニーンはレフトの肩に触れ、さっさと遺跡の中に入ろうとすると、アスモに羽交い締めされた。

「おい話聞いてたか。お前みたいな人間が直ぐ死んでいくんだぞ!!」


リイロは懐から綺麗な石を取り出した。すると、アスモが口出した。

「リイロまで何考えてるの!? リイロが一番分かってるでしょ!?」

「でも……レフトさんは興味本位じゃないみたいです」

リイロはレフトの方を見ると、レフトは黙って頷いた。するとアスモは少し考えた後、口を開いた。

「死んでも知らねぇかんな」


リイロは手に持っていた石を真上に軽く投げ、祈りを捧げた。

”輝石の加護”ストーンイリュージョン

石は緑色に輝き、石が粉々になると、その粉々になった石の粒が光となり、レフトに触れると、ズタボロだった体がみるみる治り、全回復どこらか前より力が増した様な感覚を味わった。

「この魔石は、回復と攻撃力及び防御力を上げる効果がある石です。そんなに持ち合わせがありませんが、私も為になりますからね」

リイロが持っていた小袋には四個魔石が入っていた。


四人は遺跡の中に入る事を決めた。レフトを先頭として、順番ずつ入る事にした。レフトは遺跡の入口の直ぐで止まり、後ろにいる三人に対してゆっくり頷いた。対する三人もゆっくり頷いて、四人は遺跡の中に入った。




着・禊の森ー遺跡

四人は遺跡の中で暫く眠っていた。四人は辺りを見渡すと遺跡の入口が無く、異様に静かで古代文字の様な文字が壁にぎっしり記されていた。

「階段をまず探してみましょう。ダンジョンのクリアに繋がるかもしれません」

リイロがそう判断して、三人はそれに納得して階段を探す事にした。何個も道が別れており、行き止りだったり同じ道に来てしまったりと、階段が存在していないとさえ、レフトは思い始めていた。レフトはそんな中、違和感を感じていた。それは静か過ぎる事。魔物が現れる訳でもなく、罠がある訳でも無かった。


「階段本当にあんのかよ? もしかして隠し階段的な?」

「確かにそれも一理あるな。 ん? リイロ如何した?」

三人はリイロの方を振り向いた。その瞬間、リイロは吐血し出した。アスモは急いでリイロが持っていた小袋から魔石を取ったが、魔石が黒ずんでいて魔石がただの石と化していた。

「こんな事あんの? リイロしっかりして!! お願いだから!!」

アスモはリイロを抱きかかえて泣き叫んだ。リイロは残りわずかの力で喋った。

「何時ものアスモさんじゃないですよ……男勝りでいて下さい……」

リイロはそう言うと静かに永い眠りについた。


アスモはリイロを抱き締めた。アスモは涙を拭き取って、強く心に誓った。

「リイロを殺した野郎出てこいよ。 透明化する能力でも持ってんのか!!」

アスモは心の底から激怒していた。しかし、遺跡の中は相変わらず静まっており、返事が返っくる事は無かった。すると、リイロの体が光出した。リイロの体は形を変えて、最終的に階段へと姿を変えた。


「この方法じゃないと、先に進めなかったって言うの……」

アスモは体に力が抜け、床に手を付いた。怒りが悲しみと悔しさに変わって、再び涙が流れた。

「俺のせいで、アスモの”友人”を死なせてしまった……」

レフトはアスモに頭を下げた。アスモはレフトの方は見ずに顔を横に振った。それに加えて、レフトは最悪な結末を思い描いてしまっていた。それは階段を探す度に仲間が死んでいき、階段へと姿を変えて、運良ければ一人生き残り、最悪は皆ここで死んでしまう事を考えたが、そんな中サニーンが口を開いた。


「リイロならどうする? もしも犠牲がアスモで、リイロが残された場合」

アスモはサニーンの方を振り向いた。今までのサニーンとは違い、真剣な顔で明日の方を向いてる様に思えた。

「リイロなら……何としてでも仲間の為にダンジョンをクリアする」

アスモは徐々に気持ちが前を向き出した。

「レフト、サニーン。 頼りにしてるからね」

アスモは優しい口調で、ダンジョンクリアへの続行を告げて三人は階段を使って次の階へと進んだ。




次の階へと進むと、階段は消え去り、さっきとは違い1つの部屋だった。

「ボスの間か、試練の間のどちらかだね」

「試練の間っていうのも存在すんのか。 面倒臭せぇな」

サニーンが頭を掻きまくっていると、レフトはサニーンの頭から何か出てるのに気付いた。黒煙のようで徐々に出てくる量が増えていくと、アスモは剣を手に取り、サニーンに対して剣を構えた。

「お前何もんだ?」

「何もん? 俺はサニーン。 ただの冒険家さ」

「ただの冒険家は頭を掻いていると”瘴気”が出てくるのか?」

サニーンはレフトとアスモに背を向けて、豪快に笑い出した。

「ヤバいよ。ヤバいって!! 俺様演技の才能無くねぇ!?」

サニーンの体は変わり始めた。不気味な音と共に。

「始めようか。 俺様による”一方的”な殺人を!!」

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