変わり果てた世界でたった一人の弟を探し続ける。

ねしちご。

第1話・死んだ平和な世界

今日も血の匂いがした。数多の死体が創られ、死体から出された血によって、池や湖が幾つも創られた。一人の青年は、剣を手に取った。ろくな物は食べておらず、今にも倒れそうだった。そんな状況の中、ずっと”彼”の顔が青年の頭の中にこびり付いていた。”彼”を見つける為、”彼”を助ける為に、青年は剣を振るった。




数日前ーーーー

レフト・カモラヲは、野菜畑の雑草を取っていた。レフトが住むヌヌメイ村は、のどかで魔物といった人々に被害を加える物ははなく、絵に書いたような”平和”な村であった。寧ろこの村だけではなく、世界全体が”平和”な世界だった。


「またまた、剣を振るってばっかりだなライト」

「兄さんも剣術を少し身に付けたらどうなの? 護身術として」

レフトには弟のライト・カモラヲがいて、実の双子であり、違いと云えば、兄レフトは白髪、弟ライトは黒髪ぐらいしか違いが無かった。兄弟仲は、村皆が認める程仲良く、生まれて今まで喧嘩一つもしてこなかった。また、両親は既に亡くなっており、兄弟だけで今現在まで暮らしていた。


「ミバヤコルホまで一つの書物を探しに行こう」

ライトがレフトにそうお願いした。ミバヤコルホは隣街は隣街だが、レフト達が住んでいるヌヌメイ村とは違い、発展した街であり、ヌヌメイ村はお年寄りばかりであるが、ミバヤコルホは子供からお年寄りまで住んでいて、技術や産業も発展していた。


二人は村を離れ、村のはずれから架かっている大きな石橋からミバヤコルホへ向かっていた。村と街の間には川が流れていたり、山脈が連なっていた。釣り人が群がるスポットでもあった。

「書物って、どんな書物?」

「実は一つじゃないんだ。だから兄さんにも手伝ってもらいたいんだ。レシピ、剣術、物語と色々読み漁りたいんだ」

ライトは昔から本好きであり、年に何度か今回のようにミバヤコルホまで本を求めて行っていた。しかし、レフトもそれに付き合わせられるのは初めてだった。




着・ミバヤコルホ

「いつ見ても立派な時計台だね」

ミバヤコルホの中心には大きな時計台があり、もう一つの顔を持っていた。二人は時計台の思い扉ではなく、その真裏の自動扉を使って中に入った。時計台だけではなく、細長い図書館にもなっていた。様々が種類の本が揃っていて、上を見上げると、本が無限に並んでいる様に見えて、レフト達は中々目的の物をは探し切れずにいた。


レフトは一つの本を手に取ろうとした時、上から妙な光が見えた。レフトは一人でこっそり光を発している所を目指して登り始めた。図書館の頂上に辿り着き、まだ上に光が見えていた。それと共に地響きと聞いた事がない機械音が響いていた。図書館の頂上には鎖で封じられた扉があり、その扉の奥は誰も入る事が許されていなかった。

「兄さん? どこいった?」

ライトはレフトが何処にいったのか下の方で探し始めていた。レフトはやはり上に見える光と機械音が気になり、鎖を解いて扉を開き、更に上を目指して時計台の最深部へ続く階段を上り始めた。




着・時計台最深部

レフトは恐る恐る歩き、最後の扉と思われる錆びた扉を開けた。開けた瞬間、光がレフトの目に飛び込み、視界を防いだ。暫く見えなかったが、視界が徐々に広がり、目の前に何が起きているのか理解した。いや、理解しようとしたが、具体的な状況は理解出来なかった。見た事が無い機会で溢れ、幾つものモニターがあり、光の正体が大きな球体である事に気付いた。大きな球体の目の前に女が立っているのに気付いた。レフトは暫く様子を見る事にした。


「お客様が来たようね。御用は何で?」

その女はレフトの存在に気付いた。

「一体何をやってるんだ?」

女と大きな球体の間には一冊の本と赤い液体の入ったガラス製の筒があり、筒と本を交互に優しく撫でていた。

「貴方は何も知らないのね。関係者以外立ち入り禁止よ」

レフトは恐る恐る女に近づき、モニターや大きな球体に近寄り、見上げた。

「せっかく来たんだから、黙って見てて下さい。もうすぐですから」

女はそう言うと、筒にヒビが入り初め、女は笑みを浮かべた。ヒビは大きくなり、遂に割れ、赤い液体は常に形を変え続き宙を浮き、大きな球体と同期してるかのように光り始めた。


「貴方はこの世界が”平和過ぎ”て”退屈”してないかしら?」

「”退屈”? 何言ってんだ?」

レフトは女の言葉を理解出来なかった。今までそんな事を考えてこなかった。

「私はこの世界に面白さを追加してあげるのよ。優しいでしょ」

「まさかお前……」

地響きが大きなくなり、モニターが見えなくなり、周りが暗くなって、大きな球体から稲妻が発生し始め、女はナイフを取り出し、ナイフで自分の左腕を傷付けた。傷口から出る血が本を汚し始めた。

「”サヨナラ平和な世界”」


その時、レフトの意識が朦朧し始めて、ライトの声が聞こえた。

「兄さん!! これは一体!?」

「ライト……逃げろ……」

レフトはライトに手を伸ばした。ライトも手を伸ばす。が、大きな球体は破壊され、時計台事崩壊し始めた為、ライトの手を取る事が出来ず、ライトが外に身を投げ出されてしまった。

「レフトーーーー!!」

「兄さん……」

ライトが何か喋り、レフトの意識はそこで途絶えてしまった。




レフトの意識は回復し、レフトは急いで立ち上がった。が、レフトは何故かヌヌメイ村の自宅にいた。レフトは直ぐに違和感に気付いた。足元を見ると、血の海が出来ていた。レフトは血の海の所為で中々動けなかったが、扉を開けて、外へ血の海が流れ出して、レフトは外の様子に目を疑った。


「な……何が起きてる?」

満月に赤い空に、複数あった筈の住民の建物が崩壊していた。肝心の住民は死体となって、レフトの方を見ていた。レフトはそれを見て腰が抜かしてしまった。

何とか立ち上がって、野菜畑の方を見ると、野菜は腐りきっていて、動物に荒らされたような跡もあった。レフトはそれよりも気になる事があった。

「ライト!! ライト何処だ!?」

レフトはこんな状況でもライトを探し始めた。勿論この状況は気になって仕方が無かったが、何よりも弟の無事が先だと直ぐに足を動かした。

ヌヌメイ村は静かでレフト以外誰一人声を発せず、レフトは死臭により、鼻が駄目になりそうになり、鼻を押えたが、口から血を吹き出した。レフトの体はズタボロでろくに動ける体とは言えなかった。レフトは一度自宅に戻り、表札が落ちているのに気付き、拾い上げた。


「シン? シンって何だ?」

レフトのファミリーネームであるカモラヲではなく、知らないファミリーネームであるシンという文字が記載されていた。

「この村にそんなファミリーネームの人いないはず……」




一方弟ライトはーーー

「適性者を手に入れた事だし、第二の作戦に」

ライトは意識を失っていて、女によって不器用な機械に捕らわれていた。女は微笑んでいると、女は口から血を吹き出した。女は自分の心臓辺りを見てみると、槍が刺さっていた。

「お前は駒としてよく働いた。ここで死ね」

男は女の心臓に槍を刺して、槍を引っこ抜き、槍の先端を舐めて女の血の味を確かめた。生まれ変わったミバヤコルホにて何かが動き出した。

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