第24話・剣は語る

レフトの身体中闇の胞子で蝕んでいて、顔には爪で引っかかれた傷があって既に息を引き取っていた。デスボダは体が勝手にヤズパの方へ向いていた。デスボダの一撃一撃が大量の魔力が込まれていてヤズパが躱すといえど周りには影響があって闇の胞子達を破壊した。

「スネクダなんだから殺して当たり前っしょ」

ヤズパは爪を尖らして飛ばした上、何かをデスボダに投げ付けた。何を投げ付けたのか確認する間もなく、デスボダは危険性がある何かだと思ってそれを躱した。地面に落ちた為何なのか確認すると魔法陣が描かれていた小石で、その魔法陣の中心にはヤズパの血が付着していた。

「”光”が元々含んでいたから取り除いたんだ」

デスボダは小石を足で粉砕して、攻撃を再開しようとした時、ヤズパはレフトを縦替わりにした。デスボダは既に息を引き取ったといえどそのまま真っ直ぐ突っ込んで攻撃は出来なかった。ヤズパはレフトの額にキスをして何かブツブツ言い出した。




レフトは激しい体全身に見舞われつつ、ゆっくり起き上がると目の周りには倒れているライトの大群がいて、目の前の高台にてレフトにソックリで、自分では無い存在のレフト・シンがいた。このライトの大群はレフト・シンが殺したのは明らかで手元は血で汚れていてまだ一人残っていたライトが後ろから襲いかかると、一瞬で斬り殺した。

「安心しな、コイツら全員偽物だ」

レフト・シンが指を鳴らすと倒れていたライト達は血となってレフトにもその血が飛び散った。すると何故か魔力が高まった感覚があって理由を聞こうとしたがレフト・シンは顔を横に振った。


「お前は”ほぼ死んでいる”。 それは俺には都合が悪い」

レフトはその言葉の意味を理解出来なかった。俺が死んだ?何故だ?少しずつ記憶を辿っていくと安らぎの蛹内での出来事が思い出していき、中でデスボダと長髪でガタイの良い男がいてと徐々に記憶を辿っていくと自分は殺された事を悟った。しかし、レフト・シンが言った”ほぼ死んでいる”という言葉が引っかかった。もしかしたら蘇生する方法でもあるのかと期待したが、よく考えたらそんな方法があったら今までの被害者一人でも蘇生してても可笑しくないからだ。頭を抱えているとレフト・シンが何処かに向かおうとした為、後を追う事にした。


神殿のような建物が現れ、もしかしてグレアスの話にあった”神授魔力”が受け取れる神殿だと思ったが、その考えは直ぐに否定した。何故なら自分には相応しくない能力だと思ったからだ。デスボダの役にも立たずに呆気なく殺されて、皆の期待に答えられなかったと自分を責めていると

「考えるな。 俺に従うだけでいい」

乱暴なレフト・シンの言い方だったが、それとは裏にレフトの励ましにもなってレフトは一度頭を空っぽにして気合いの拳の一撃を自分の顔面に食らわした。


神殿の壁は見た事がない文字で埋め尽くされていて一歩ずつ歩く度に靴底と地面の密着部分から高い音を響かせた。グレアスの言ったような祭壇は奥に無くて代わりに見覚えの剣が置いてあった。その剣はレフトの父親が自宅に大切に保存してあった剣であって一度も剣を振るった事は見た事がなかった。それにしても何故ここにあるのか分からなかったが、レフトが剣に触れた瞬間にどうやってここまで剣が来たのかの過去が頭に流れ込んできた。




男は一度も剣を振るう事が無かった。何故なら先祖からその剣には”呪い”が込められていると語り継がれていたからだ。男は屈強な体だが怖い話が大の苦手で子供の頃は特に虐められていてその話は息子達には一度も話す事は無かった。男は息子達に剣の使い方を叩き込ませた。自分のような恵まれた体に加えて自分には無い強いハートを持つように。双子の息子はどんどんたくましくなっていき、自分の数少ない有り金叩いて鍛錬所にて質の良い剣を作って二人にプレゼントしようとしたが、男は突然何者かに斬られて殺された。プレゼントしようとした二つの剣は襲った人間に奪われてしまった。男の最期の言葉は

「レフト、ライト……強く生きろよ……」


剣には魂が宿っていた。男に一度でも剣を振るって欲しいと思ったがその願いは打ち砕かれた。剣はその男の息子の双子を一度だけ見た事があった。それは双子が男がいない内に部屋に忍び混んだ際だった。黒髪の方が剣に気付くと早速手に取ろうとしたが、男に気付かれて双子は怒鳴られると部屋から出て行かされた。それから長い年月が経ち、誰も部屋に入って来る事がなく放置されているとある日、遠くから怪しげな光が見えたと思ったらその光は剣の方に向かってくると光と剣が触れた瞬間に剣は光に包まれて空中に浮かぶと光に導かれるように飛んでいった。飛んでいる際に意識は遠のいていき、今一人の青年が手に取った時意識が戻った。




レフトは試しに近くにあった大岩に対して剣を一振しようとしたが、急に剣が喋り出した。

「剣じゃなくて拳使わんかい!!」

レフトは勘違いだと思ってもう一回大岩に対して一振しようとしたが、剣が勝手に動いてレフト・シンの後ろに隠れた。レフト・シンは剣を手に持ってこの剣について説明した。

「”The・凄い剣”だ。まずコイツと仲良くなって覚醒しろ」

それだけを言ってレフト・シンは何処かに去ってしまい、後を追うにも剣だけを残す訳にもいかない上、何だか不穏なオーラを放っていた為半ば仕方なく剣を手に取って又大岩に対して一振しようとした。

「人の気持ちを汲み取らんかい!!」




ヤズパはレフトに何か喋り終えると爪を尖らして姿が残ること無く葬ろうとした時、デスボダは目を瞑って手を合わせて集中して目を見開いて周りに雷雲を作り出した。

「”魔力創造・雷界”《まりょくそうぞう・らいかい》!!」

デスボダ全身に雷を帯びてそのままの状態でヤズパに対して攻撃を仕掛けた。ヤズパは急いでデスボダの一撃を躱そうとしたが、躱した先で雷撃を食らった。ふらついたのをチャンスと見たデスボダは拳をヤズパ顔面向けて殴り付けて上手くクリーンヒットした。ヤズパは遠くに吹っ飛び、それをデスボダは追って連撃を食らわした。連撃は全て当たってヤズパは反撃する事なく、デスボダの攻撃は続く中、やっと繰り出したヤズパの反撃である闇を集めた波動だったが、デスボダの魔力創造の特徴である攻撃とスピードが徐々に上がる事を利用して余裕でそれを避けた。デスボダは攻撃を再開しようとした時、急に嫌な感覚を覚えた。デスボダは一旦足を止めた瞬間、掌に魔法陣が描かれていた事に気付いた。その瞬間意識は途絶えて濃い闇が襲って来た。

「はい、勝ち確」

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