第31話 最寄り駅で集合


 「すまん、隆志。今もう向かってるから。あと少しで着く」


 まさか。少しとは言え、本当に寝過ごしてしまうとは。冗談が本当になってしまった.......

 何年ぶりだ。俺が時間に遅れるなんて。

 真剣に小学生ぶりぐらいか?


 まぁ、やはり隆志だから問題ないか。

 何だかんだであいつには待たされた記憶がかなりある......。


 それに実際にもう駅には着いた。後はこの階段を登って改札へ向かえばそこに隆志がいるはずだ。良かった、最寄り駅が集合場所で。


 もう頭痛も引いたし、身体もほぼいつも通りだ。


 それにしても、本当に今日は昨日が嘘の様に天気がいい。

 急いだからかもしれないが、気温もいつもより暖かく感じる。


 ま、とりあえずそんなことを考えているうちに俺の足はもう階段の最後の段。

 そしてはい、到着.......



 って、........。



 俺はふいに目に飛び込んできた光景に、思わず階段を上がってすぐの所にある自販機の裏に身を隠してしまう。 



 な、何で......。



 確かに隆志は改札の前にいたけれど。



 な、なんでそこに



 まで......



 いや、何で。

 再度俺は状況を確認するために自販機の横から顔を出す。


 すると彼女は早歩きでまた出口の方に......


 何で。


 そしてとりあえず俺は急いで改札の前に立つ隆志のところに。


 「ちょ、遅ぇよ! 今ついさっきまでここに架純ちゃんいたんだぞ!」

 「いや、知ってるよ。さっきそこで見た。何で? 何話してたんだよ?」

 

 最寄りとは言え、また.....


 「いや、お前をここで待ってたらさっきばったり。てか、架純ちゃんお前のこと心配してたぞ。私は大変なことをしてしまったけど彼は大丈夫ですか?って」


 心配.....?


 「てかよ。架純ちゃんマジで変わったな。一瞬誰かわからなかったぞ。顔は相変わらず美人だとは思うけど、服装とか何よりオーラが全くなくなってたわ。覇気がない。お前といる時はあんなに楽しそうだったのにな」


 まぁ、それはこの前に俺も見たから知っているけど。

 あと本当に楽しかったかどうかなんてもうわからないだろ.......。何も。


 「でもやっぱり、当たり前だけど反省はしているんだろうな。もうすぐ修平が来るから待っているか聞いたら、大丈夫です。ごめんなさい。って逃げるように向こうに歩いていったからな」

 

 逃げるように......か。


 「正直なところ。お前は架純ちゃんのこと許してやる気はねぇの? 多分あっちはまだお前のこと......いや、すまん。やっぱ何もない」


 架純がまだ俺を......

 いや、でも俺は架純とは縁を切った。

 それにあくまでこいつの憶測だ。その一瞬で本当に何がわかる......。


 「ちょ、気持ちは分かるけどお前そんな辛気くさい顔すんなって。おし、今日は出血大サービスで昼も奢ってやるから。よしスタミナつけにまたラーメン行くか?」


 

 くっ、何だよ、また意味がわからなくなってきた。まぁ、別に俺にはもう関係ないけれど.....


 とりあえず『大丈夫か』はこっちのセリフだろ.....


 そして何で今日に限って時間に遅れた。

 遅れなければまたこんな気持ちにはならずに......


 とりあえず、もう終わったんだよ。


 俺達は..... 


 とりあえず......


 「よ、よし。修平! トッピングに揚げニンニクも奢ってやる。な、だから元気出せって。な、今夜はミキちゃんが待ってるぜ!」

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