第35話 クリスマスにドライブ


 天気予報の通り。また雪だ。


 「ふふっ、どこもかしこもカップルばっかりだね」


 そして、ハンドルを握りながら信号が青になるのを待つ俺の隣にはお洒落で綺麗な髪の美女が一人。

 今日はやはりそういう日だからか見るからに交通量も多い。おかげで心なしか、いつもよりも車が信号につかまってしまっている気がする。

 

 「ま、クリスマスだもんね。しかもホワイトクリスマス」


 そして、そう。

 運転をする俺の隣の助手席には美桜。友達の米倉美桜がいる光景だ。


 「あぁ、そうだな。本当にどこもかしこもだな」


 それにしても、何だか不思議な感じだ。今年は完全に独りだと思っていたからな......。

 

 いや、それよりも彼女が今日この様に隣にいることの方が不思議なのだろうか。

 何気に架純以外で隣に乗せたのは彼女が初めてか?


 「でも、本当に美桜ほどの女ならクリスマスは引く手数多だったんじゃないのか?」

 「うん。かなり色んな人から誘われた。えーっと会社の人でしょ。昔の同級生でしょ? 取引先の人でしょ。あとえーっと」


 まぁ、だろうなとは思っていたが。ちょっと想像の斜め上を超えていきそうだからもう数えなくていいぞ.......。


 「いや、なんで断るんだよ。彼氏ほしいって言ってたろ? まさに選り取り見取りだろ」


 それともやっぱり、結局なんだかんだでずっと好きだけれども訳あって手が出せないとか言うその相手のことが忘れられないのか? わからないけれども。


 「ふふっ、クリスマスは修平と一緒に過ごしたかったからって言ったら理由になったりする?」

 「いや、ならねぇよ。まぁ、深くは聞かないけれどもな」

 「えー、聞いてよー」


 でも、やっぱり改めて不思議だな。

 いつからだっけか。俺にこんなに楽しそうで綺麗な笑顔を見せてくれるようになったのは。とりあえず、初めて俺に微笑んでくれた時の記憶は何故か今でも覚えている。

 まぁ、それまでとのギャップをありすぎて不覚にもドキッとしてしまったからだろうか。素直に彼女のことを可愛いと思ってしまった記憶がある。


 なんせ今でこそ。休日に二人に遊びに行くぐらいに仲が良い関係だが、本当に初めはお互いに印象が最悪だったかからな。


 結果的にはわかってもらえたし、美桜も騙されていただけだから何でもいいけれど。後にも先にもあれが最後だろう。腹から血を流して病院に運ばれるのは......。


 全くもう痛みはないが、今もその時の傷は綺麗に残っている。

 まぁ、まさか誰もが人格者だと思っていたサークルの部長があんな男だったとは思わないし思えないだろう.......。記憶では付き合ってはいなかったものの美桜とも何だかんだでいい感じになっていた気がするしな。


 そう考えると.....好きな男がいるけど手がだせないから誰とも付き合わなかったって言うのは建前で、もしかしたらまだ男に何かしらの抵抗があるのかもしれないな。

 わからんけども。


 「あ、サンタさんと小さな子だ。ふふ、はしゃいじゃって可愛いなー」


 確かに。微笑ましいな。俺もあれは素直に可愛いと思う。


 「いいなー。私もあんな子供ほしいなー。修平は欲しくない?」

 「いや、まぁ欲しいとは思うけども」

 

 でもまぁ、そもそもの相手がいなくなったからな。


 「ふふっ、一緒ね。でも、絶対に修平は良いパパになると思うな。ね、パパ!」

 「な、何がパパだよ」


 ち、ちょっと今のはまた不覚にも......って、青か。

 す、進まないとな......。

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