第36話 クリスマスに割引

 「もうすっかり夜だね。時間の流れが早いなー」

 「確かにそうだな。あっという間だったな」


 本当にな。

 

 今日も何だかんだで美桜と二人でブラブラとしていただけではあるのだが、隆志と二人の時に比べると本当にあっという間に時間が過ぎた気がする。まぁ、普通に楽しかったし。それにまぁ、比べる対象が隆志ならば誰でもそうなるか。


 あいつ、本当に口を開けばミキちゃんの話しかしないからな.......。


 あとクリスマスだからなのだろうが。どこもかしこも人がかなり多かった。

 特にカップルと子連れの家族.......って、当たり前か。


 「で、これからご飯だっけ?」

 「あぁ、でも本当に悪いな。急に付き合ってもらう形になっちまって」

 「全然。普通に嬉しいから。お寿司でしょ。お寿司。超好きだから」


 とりあえず、運転する車の中から見える外の景色ももう真っ暗。

 そして、そう。俺たちは今、元々は架純と食べに行くために予約をしていたお寿司屋さんに向かっているところ。確か次の信号を左折してそろそろか。


 会社の後輩に予約を譲ろうかとも思ったが、さすがに新婚ほやほやのあいつに破断で相手がいなくなったから二人で行ってくるか?は縁起が悪いと思い断念。

 

 それにやっぱり有名なお店で予約を取るのも苦労したから自分でも食べたいと言うのが本音だ。既にお金も振り込んでいるしな。まぁ、さすがに一緒に行ける人がいない場合はキャンセルをする予定ではいたけれども、ちょうど美桜からの誘いもあったから行っちゃおうかなと。


 まぁ、キャンセルを忘れてなければ本来なら精神的にも予約はすぐに取り消していたのだろうが、せっかく忘れていたんだし、いつまでもウジウジしているわけにも行かないからな。今回は行く。


 なんせ金額も割引があってもやはりかなりの........って


 「あっ」

 「ん? どうしたの?」


 か、完全に忘れていた。割引.......

 そうだ。予約をしていた頃は完全にもう今頃は結婚しているつもりでいたから


 俺はよくわからない的な割引を使って事前にお金を振り込んで.........


 いや、さすがに大丈夫か。男女二人だし。そこまで深くは確認なんてされないか。されないよ.......な?


 いや、でももしかすると免許ぐらいはやっぱり確認されるのか? となると美桜には黙っておくわけにはいかない........のか。 そうだよな。あらかじめ口裏を合わせておく必要があるもんな。


 でも、ちょっとこれは言いづらいというか何というか。


 「修平? 本当にどうしたの? 何かあった?」


 それでも一応、言っておくべきだよな。普通に。そうだよな。

 まぁ、拒否されたら普通に店には謝ればいだけだしな。


 「その.......美桜さん。ちょっと非常に申し上げにくいのですが......」

 「ふふっ、何よ急にそんなに畏まっちゃって」


 まぁ、死ぬほど嫌がられたりしたらちょっと傷つくけれどもそれは仕方がないか。


 「いや、嫌なら嫌で普通に断ってくれてかまわないんだけど......」

 「うん。何?」


 すまない。

 

 「ちょっとこれから、美桜になってもらえたりとか.......」


 「え?」

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