第28話 吹雪とホテル


 うお、それにしてもこの部屋すごいな。見るからに豪華で広い。

 それに、吹雪もまだすごいとは言え何より夜景がさっきよりも嘘の様に綺麗に見える。美桜も今、別の部屋でこの夜景を堪能しているのだろうか。いや、でも確か階層的に美桜よりも俺の方がかなり高い階だったな。お風呂だって何だこれ。でかっ。ジ、ジャグジー? 

 って、お風呂からも夜景見えるぞ、やばすぎるだろ。ベッドもでかい。でかすぎる。これがキングベットか?


 こ、ここを独り占めとはちょっと.......。

 

 やばい。ちょっと値段が怖すぎて調べるのが億劫。絶対に高い。高くないわけがない。ちょっと想像以上。


 まぁ、結果しては助けられたから何も言えないけれど。これはやばい。


 あと、やばいで言えばさっきの美桜。本当にちょっといくら何でも酔いすぎだったな.......。

 大丈夫かあれ。不覚にもドキッとしてしまうことが何度もあった。

 まぁ、俺だから大丈夫だし。俺だったからあんな感じになるまで飲んだんだと思うけれども、別の奴の前で。それも好意のない奴の前であんな感じになってしまったら襲われちまうぞ。真剣に。ただでさえ美人なんだから.......。

 でも、昔の美桜は本当に酒に強かったはずなんだけどな。やっぱり5年経てばそれなりに変わる人は変わるのかもな......。


 と言うか、もしあれだったらこの部屋を美桜と交換してやったほうが良いのか?

 いや、性格的に逆に気を使わせてしまうか? とりあえず向こうさえ良ければ明日の朝こっちに呼んでやろう。

 

 でも、とりあえず色々と考えている俺もなんだかんだでやっぱり酔っていた様だ。ものすごく眠たい。

 って、また電話か。


 今度は、また戸田か。


 「はい。森高です。てか、ものすごいなこの部屋。戸田のその友達ってものすごくお金持ち? え? 立て替えたお金の返済はいいから今度は今日の鉄板焼きの店奢ってってか? い、いやいやさすがにそれは釣り合わないだろ? 実は友達が福引で当てたから実質無料? いや、嘘だろ。絶対」


 さすがにそれは嘘だろ。何故かこいつは偶に自分に損になるであろう嘘をつくことがあるから困る時がある。


 「いや、ちゃんと形は何であれ返すから。今度ちゃんと金額教えてくれ。うん。え? あぁ、美桜は別の部屋だ。うん。いや、明日の朝は迎えにきてくれるって? いや、悪いしそれは大丈夫。いや、まぁ、明日の朝には雪もだいぶと収まるだろうけど本当に大丈夫」


 だって


 「だって、ほら。戸田も知ってるだろうけど隣の山本さんいるだろ。ついさっき電話があってさ。何かやっぱ山本さんもしっかりとした人だからこの吹雪を見越して車で通勤していたみたいでな」


 本当にしっかりとしている。俺と違って.......。


 「うん。で、戸田と同じ様に悪いから断りはしたんだけど。どっちにしろ場所的に帰りに通る道らしくてな。迎えに来てくれるって何度も言ってくれて。うん。だからもう悪いけどお言葉に甘えて乗せてもらうことになってるから大丈夫。家も隣だしな」


 色々と山本さんにも状況を聞かれて答えていたら最終的にそうなった。

 でも、本当に心配かけて面目ないと思う。

 ちょうどここに来る前に家の前でまた会って色々と話していたから、この吹雪に気にかけてくれたのだろう。本当に優しすぎる。しかも心よく二つ返事で美桜まで乗せてくれるって。戸田の時もそうだけど本当に恩しかない。


 結果的にまた明日も朝ごはんを一緒にどこかで食べることになったけども......。

 お祝儀のお返しだってまだまだ返しきれそうにないのに本当に悪いと思う。

 もっと高いモノを食べにいこうって言ってるんだけど、謙虚で良い子だから安い店ばかりを言ってくる。俺は全然いいし、彼女がそれでいいのなら問題はないんだけど、これでは後何回一緒にご飯に行くことになるかわからない。

 まぁ、癒されるし俺は本当に問題はないんだけど。

 

 それに、何を言っても向こうは俺には命を助けられた恩があるとか言うけど、本当にあれはたまたまだからな.......。誰だってあの場にいたらあの行動をとるはずだ。


 「うん。でも戸田も今日は本当にありがとな。真剣に色々と助かった。うん。絶対に借りは返すから。うん。じゃあおやすみ。ありがとう」


 ほんと戸田も素直ではないことも多いが、根はマジで優しい奴だからな。

 助けられてばっかりだ。


 でも、どうしたんだろう。何か急に虚ろな声になって。心ここにあらずにな感じになった気が......? 大丈夫か?


 あ、でも俺もやばい。何か本当に一気に酔いが回ってきた気が。



 こ、このままもう寝てしまいそう......。

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