第7話 例年にも増して寒い12月
やっぱり電車の中はあったけぇ......
そんなことを考えながら、俺はちょうどさっき美桜と別れてひとり電車の中でつり革片手に揺られているところ。
外が寒すぎる分、尚更そんなことを思ってしまう。
さっきネットのニュースでも見たが今年は例年にも増して12月の気温が低いみたいだ。今日は特に夜にかけて冷え込むらしい。
電車の外に見える景色も心なしか雪が降りそうな気配に変わっている気がする。
あくまで気がするだけだが。もう夕方も近いからただ単にそれに合わせて暗くなっているだけ?
まぁ、そういうわけもあって今日はとりあえずもう解散した。
でも実際、あいつのおかげでちょっと元気でたかも。
ステーキもかなり美味しかったし。確かあれはフランベって言うのか?
鉄板の上で炎がぼわっとなるやつ。とりあえず、本格的だった。
ただ、いくらランチとは言え本当にあれがリーズナブルなのか?
実際、奢るとは言われてもお金は出そうと思っていた。
だから彼女がちょうどお手洗いに席に立ったのを見計らって先にいくらかはわからずともお会計も済ませようとした。
なのに店員の人から帰ってきた答えは『お代は既にお連れ様からいただいております』
そして値段やんわりとはぐらかされて教えてもらえなかった。
一体どういうことだ。彼女が席を立ったのはその一度だけ。
お会計を済ませるなんて時間は確実になかった。例え電子決済であったとしてもだ。
意味がわからない。
考えられるとすれば、既にもう事前に予約されていて上手く俺が美桜にあそこに誘導された........? それもあんなに自然に?
しかも、やっぱりネットにも一応あの店のサイトはあるけれど。
ステーキの値段は『時価』。
正直、恥ずかしい話をすると肉で時価なんて言葉を見たのは初めてだ。それにディナーの予算は乗ってはいるけどランチの値段なんて乗っていない。
もし万が一、これがランチも同じ値段だっとするのであれば普通にかなりの金額だ。
何だよ、あいつ......。
本当に完璧すぎるだろ。何もかも........。
お返しするつもりが、みごとにそれ以上のお返しをされた。
いや、そもそも俺はあいつに何もあげていない。
ただただ、また元気づけられただけ。
本当にこれはあいつさえ良ければだが、あの時に美桜が言っていた様に冗談ではなくディナーに今度は俺がちゃんと奢った方がいい気がする。
まぁ、形はどうであれ何かしらで返さないと
このままだとさすがにちょっと.......。
でも本当に、あいつほどの女が手に入らない男ってどんな男なんだろうか。
もしかして既に結婚している人を好きになったとかそういうことか?
それならば合点も行かなくはない.......。
ただその場合は.......。
だからそうでないことを祈るばかりだ。なんせ美桜は不倫みたいなことは性格的に死んでもしない女だからな。
そしてもう最寄りか。
動く電車の外も、もう完全に見慣れた景色。
ただ、今日でわかったけどそうか。
一応、もらった祝儀は現金で全員に返すつもりではいるけど、受け取ってくれない人には何か別の形で返さないといけないよな。
難しいな......。
いや、まぁ大体の人はそのまま受け取ってくれるか。
俺だったそのまま受け取るしな。そうだよな。
あぁ、それにしても美味しかった。
それに何だかんだで楽しかったな。普通に。
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