第6話 休日のオフィス街
「でも本当に寒くなったよねー」
「それな。さみぃ......」
「ふふ、でもセールだったし、いっぱい買ってもらっちゃった。ラッキー。私の懐は暖かい!」
こいつ、ここぞとばかりに.......
まぁ若干、思っていた金額をオーバーしたにしてもだ。普通に許容範囲ではある。祝儀のお返しだけではなく、こうやって一応は俺の気分転換に付き合ってくれているんだもんな。問題はない。
俺が両手いっぱいにこいつの荷物持ちみたいになっているのも......まぁ問題はない。今日に限っては。
「次どうする? ちょっと早いけどランチにでもする? そっちは私が奢るから」
「そうだな。どっか入るか。さすがに寒い」
外も相変わらず明るく日は照っているものの、いつの間にか風の方が強くなってきたみたいだ。
さっきから冬特有の氷の様な冷たい風が俺の身体に吹きつける。
現に。少し前を歩くお洒落なコートの彼女の長い髪もその風に大きく揺られている様。
でも、絵になる様な光景とはまさにこういうことを言うのだろうか。風に靡く綺麗な髪も相まってか、後ろ姿まで完璧美人とは。
本当に恐れ入る。米倉美桜。
確かにこれは半端な男じゃそもそも手はだせないだろうな......
やはり昔よりもさらにパワーアップしている。
それにしても、休日のオフィス街はやっぱりカップルが多い気がする。
場所にもよるのだろうがお洒落な飲食店系もここはいっぱいありそうだし。
そう言えば、ここではないけど架純ともよくこういうところでデートしたっけ......
「って、冷たっ!」
「ふふっ、どう? あれ? 修平のほっぺ超やわらかい。おもしろー」
「何してんだ......」
いや、本当に。
「修平がぼーっととしてるのが悪いんじゃん。ほら、ついたよ。ここで食べよ」
「え? あ、悪い」
ん?
「ここ何の店? ち、ちょっと高そうじゃないか?」
見るからに敷居が高そうな......
「鉄板焼。ここかなり美味しいから。それにさっきから言ってんじゃん。私が奢るって。だから大丈夫。それにランチはかなりリーズナブルだから」
も、もしそうだとしてもだ。持ち合わせ足りるかな。
くそ、こういう時の為に電子決済に対応しておくべきだったか。いまだに俺は現金派。
「ほら入るよ、修平。失恋の痛みは美味しいもので癒すって決まってるんだから。ここでいっぱいお肉食べて元気だしなよ」
「え、あ、あぁ」
そして俺は彼女に手を引っ張られながらなすがままに足を前に進ませる。
「ふふっ、でも気に入ったら今度はお高いディナータイムに絶対私を連れてってよ」
「何だよ。そっちかよ。ちょっとでも優しいと思った俺が損したわ」
「もちろんそっちよ。むしろそれだけが目的。ま、ほんのちょーっとだけ。ほんとにちょーーっとだけ修平に元気になってもらいって気持ちもあるから。ちょっとだけね」
「はいはい。ありがとな」
まぁ、こんなこと言ってはくるけど。さっきから俺のことを色々と心配してくれているのは目に見えてわかる.......。
昔から本当に美人だとかそう意味じゃなくて単純に良い女性だとは思う。
優しいし、気遣いもできるし、美人なのにそれを鼻にかけることも一切ない。
久しぶりだったけど、いい意味でやっぱり何も変わっていない。
架純は失ったけど。本当に俺は良い友達に恵まれていると思う。
本当、こいつも早くその好きな男に振り向いてもらえるといいな。
誰かは当然知らないけれども、心からもったいない男だと思う。
俺も何か力になってやれるといいな。
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