第15話 ほのぼの?朝ごはん
何だこれ。美味しすぎる。
今、俺の目の前には味噌汁、塩鮭、卵焼き、胡瓜の漬物、そして白ご飯。
そしてエプロン姿で微笑む山本美貴さん。
「どうですか? 森高さんと戸田さん」
「マジで
「ふふ、やった。私こう見えて結構お料理上手なんですよ」
いや、こう見えても何も、見た目通りな料理上手。まさに理想の奥さんコンテストで1位になれる逸材。
そもそもこんな朝ごはんらしい朝ごはんを食べたのは何年振りだろうか。これは理想のお母さんコンテストでも1位で2冠だろう。
それに何だこのできる女性らしさ全開の小奇麗でお洒落な部屋。
完璧かよ。
「美味しいです。山本さんは毎日こんなにしっかりとした朝ごはんを作られるのですか?」
戸田もとっくに状況は理解している様で、そんなことを口にしながら美味しそうに山本さんの料理を食べている。
とりあえず、俺がこっちに来た時に初めに見た光景は戸田が山本さんにこれでもかと頭を下げている光景。それはそうだ俺も頭を下げたんだからな。まぁ、そういうところはこいつの方が俺よりもしっかりしているのは間違いないだろう。謝る時にはちゃんと謝れる女だ。まぁ、俺にだけが何故か例外。
「はい。一応。でも戸田さんにも気にってもらえたようで良かったです」
「はい、本当に美味しいです。こんな料理上手な彼女さんがいるなんて、山本さんの彼氏さんが羨ましい限りです。ね、森高」
「本当にそれな。これが毎朝食えるのか。山本さんの彼氏になれる人は最高だな」
本当に美味い。特に何だこの味噌汁。出汁か? 詳しいことは全然わからないけれど、とにかく旨味が半端ない。この卵焼きも俺が好きな甘くないタイプのもの。冗談抜きで朝からご飯何杯でもいける。箸が止まらない。
「いえ、戸田さん。私、彼氏いないんです。絶賛募集中です」
ほんとこれで彼氏がいないのが不思議で仕方がない。世の中の男は一体何をしているんだ。
「えー、本当ですか?すっごく意外。もし私でよければ全然紹介しますよ」
「ふふ、ありがたいのですがお気持ちだけいただいておきます。私、募集中とは言っても一応、好きな人いるんです」
「そ、そうなんですか。それはお力になれなくて残念です」
美味い。この鮭も何でこんなに美味いんだ。普通の鮭だろ? 焼き加減とか?
とりあえず、こんなに美味しいごはんが作れる山本さんに好かれているその男は幸せ者に違いない。俺も力に慣れるのであればぜひ協力してあげたい。
こんな良い子は早々いないからな。
でもやっぱり味噌汁が格別だ。やばいペース配分間違えた。ご飯がもう......
「いえいえ、ありがとうございます。でも、戸田さんこそお綺麗ですし、やっぱり彼氏さんとか旦那さんがもういるんじゃないですか? 羨ましいです」
「いえいえ、山本さんの方がお綺麗ですし。それに残念ながら私も相手はいません」
「え? ほんとですか? 逆に私が紹介しますよ。社交辞令じゃなくて本当に」
「いえ、私もありがたいのですが、実が狙っている相手がいるので。お気持ちだけいただいておきます。すみません」
何だ。こいつにも狙っている相手とかいるのか。
じゃあ昨日のヤケ酒はそっち方面のことで何かあったとかそういうことだろうか。ならあんまり俺が踏み込まない方がいいな。
「あ、森高さん。もし良かったらご飯のおかわりとかどうですか?」
「え? い、いいんですか?」
「もちろんです。と言うか、これからももし森高さんが良ければいつでも食べにきてくださって大丈夫ですよ。何だかんだでいつも作りすぎちゃうんです」
そしてさすがにそれは社交辞令。子供でも分かる。
「ふふっ、森高。山本さんは良い人だからこう言ってくれているけど。真に受けちゃ駄目よ。実際に行ったらとてつもない迷惑を彼女にかけることになるからね。山本さんもそんなことを言ったらこの男は毎日でも行きかねないんで気をつけた方がいいですよ」
「いや、行くわけないだろ。さすがの俺でもそれはわかってるから。お前は俺がどれだけバカだと思っているんだよ」
本当に。
「いやー、こっちは本当に森高さんなら全然いいんですけどねー」
「もう本当に山本さんって優しいー。森高、絶対にこんな良い人に迷惑かけたら駄目よ。私みたいな見ず知らずの女を泊めてくれるんだから。山本さんは誰にでも優しいのわかる?」
「ふ、そんなのお前に言われなくてもわかってるから。一番迷惑かけたお前には言われたくない」
でも、何だかんだで山本さんも戸田もニコニコと仲良さげで良かった。
昨日は真剣に大変だったが完全に癒された気がする。
まぁ、今日も一日、何とか頑張れそうだ。
でも、それにしても本当に美味しいな。この味噌汁。
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