第4話 独りになった男


 やっぱり家で食べるのは落ち着くな.......。

 そんなことを考えながら俺は独り、ネットで見逃し配信のドラマを見ながら晩御飯の豚丼を口に頬張る。


 これまでも好きで毎週見ていたドラマ。面白くないはずがない。

 

 ないのに、何故だろう。


 何も感じない。そもそも内容が頭に入ってこない。

 何も余計なことを考えたくないから、好きなものを食べて好きなドラマを見て自分の世界に何とかして入ろうとしているのに、どうしても脳裏を横切ってしまう......


 自分の中ではポジティブにもう割り切ったつもりでいたけれど、どうしてもこう独りの場面になると彼女のことを思い出してしまう。


 .......。


 結婚は破談になったが、10年もずっと一緒にいたんだ。本当にずっと.....。

 そんなにすぐに忘れられるわけがない。少なくとも俺は忘れられていないみたいだ......。あくまで俺はだが。


 自分でも女々しすぎると思う。あの時、彼女のあの行為を許せさえすればまた元通りの彼女と一緒になれる未来が待っていたのだろうか。自分からフッた癖にそんなことを何度も考えてしまっている。

 

 正式に別れることが決まった時の架純の涙も何度も俺の頭には浮かんできてしまう。

 あの誰よりも笑顔が綺麗でいつも笑っていたはずの彼女がずっと涙を流していた時のことが.......


 でも、あの涙は浮気をしたことに対する罪悪感からの涙なのだろうか? それとも俺と別れることになったことに対する涙なのだろうか......。

 今となってはもう彼女が浮気をした理由も何もかも、知る由もないけれど。 

 

 俺の選択は正解だったのだろうか。


 もしかすると彼女はなんだかんだであの浮気相手と一緒になったりするのだろうか。それならば俺はどちらにせよ道化。別れて正解だったのだろう。

 でも、そんなのはわからない。


 わかっているのは、もう彼女と俺との未来がないと言うことだけ。


 そして、彼女以上の女性が俺の人生にはもう現われることはないだろうということだけだ。

 もし、逆に俺のことを好きになってくれる人がいたとしてもだ。俺は架純と比べてしまってきっと首を縦には触れないのだろう。

 

 よほど素敵な女性が現れない限りは......


 外では一応何事もなかったかの様に気丈に振舞っているつもりではいるけど、本当に自分がここまで女々しい男だなんて思わなかった。


 今も誰かからのlineがスマホにあったことがわかる着信音が聞こえたけれど。

 もしかしたら架純じゃないかなんて一瞬考えてしまうレベルでやばい。


 そんなわけないし、向こうはもう何とも思ってない可能性だってあるのにな。


 しかも明日はあろうことか祝日。

 気分転換にどこか外に出ようかと思う。さすがに今日のこの感じを明日も続けるのはまずい。まだ仕事をしていた方がましなレベルで。


 とりあえずは彼女のことを完全に頭から忘れさせないと。


 でも、今回こそはと思っていたんだが、まぁ.......。

 もう呪いか何かだと割り切るしかないとさえ感じてしまう。

 そんなものあるわけないのに。

 一番が手に入れられない呪いなんてあるわけがない。

 結局は自分の責任だ.......。


 そしてださい。ださすぎるな俺。

 何で泣いてしまっているんだろうか.......。駄目だ。止まらない。


 本当に気分転換が必要なのだろう。

 このままでは絶対に駄目だ。



 とりあえず、さっきのは誰からのlineだろうか......


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