第23話 お互いの最寄り駅にて
そこにいるのは間違いなく架純.......。
でも、どうした。架純らしくない。
架純らしくない地味な服装に。明らかに元気がない雰囲気。
誰かを待っている? あの時の男.......?
いや、スマホを確認しているだけで今から帰るところ?
とりあえず人ごみのなかで一人、出口の方へとゆっくりと歩いていく。
彼女のその悲しげな表情には一体どういう意味が込められているのだろうか......。
架純......。
直接、声をかけて聞けたら何も苦労はしないのだろうが、俺は足も口も動かない。
動いてくれない。実際、俺が彼女になんて声をかける。
体調でも悪いのか? あの男とうまく行ってないのか? 大丈夫か?
色々と聞きたいことはまだまだあるけれど、かける言葉が見つからないとはまさにこのことなのだろう。
俺は本当に一体どうしたいのだろうか。
正直、俺と別れたことに架純が後悔していると思いたい自分がいまだにどこかにいるのだろうか。
彼女が俺とよりを戻したいと思っているなんて、これでもかと都合の良いことを考えてしまっている自分がいるのだろうか。
でも、あれからあっちから連絡も全くない。
つまりはやはりそう言うことだろう.......
全て俺の都合の良い解釈。
彼女ならどこに行っても誰の元でもうまくやれる。
美人で愛想もよくて性格も.......良かった。
そして気が付けば構内の小さな本屋の前で立ち止まる彼女の姿。
一体、そんな虚ろな目でぼーっと何を見ているのだろうか。
そこには俺の見る限りでは結婚情報誌が積み上げられている様に見える......。
いや、だから都合の良い解釈はやめろ俺.......。
完全に俺と彼女の縁は切れた。もしかしたらあっちの男のとの結婚かもしれない.......。芸能人とかでもいたけれど、意外にも浮気相手が原因で別れた後にその浮気相手と結婚なんてことも少なくはないみたいだ。
そう。だからもう今日で彼女のことは完全に忘れようと思う。
今日こそ。
いや、もう決めた。最後に残していたこの連絡先も消す。
「本当に大丈夫ですか? 森高さん?」
「あぁ、すみません。全然大丈夫です」
よし。消した.......。
これで本当にもう俺と彼女とを繋ぐものはない。
これで、女々しくてダサい俺とも完全におさらばだ......。
「とりあえず、心配ですし、また家まで一緒に帰りましょう。山本さん」
でも、彼女もまだここら辺に住んでいるんだな。
いや、それも俺にはもう何ら関係のないことだ。
とりあえず、本当に帰ろう。家に。
幸せにな。架純.......。
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