第19話 とりあえず現地集合で
とりあえず現地集合か。
いや、正確には現地の真ん前にあるコンビニに集合か。
ちょっと早いかもだが。電車のこともあるし、そろそろ家を出た方がいいな。
でも、ああいうところに行く際には先に飯は食って行った方がよかったのか? いや、向こうでラーメンでもあいつと適当に食うことに結局なる? それとも店で?
まぁ、そんなことはどうでもいい。とりあえず金は念のためにそれなりには降ろしておいた。
万が一あいつが足りないとか言い出したらやばいからな。
一体どれくらいが相場なんだろうか。ネットで調べても幅が大きすぎて全然わからない。
なんせ本当にああいうところとは一切縁がなかったからな。
そういうところも俺は面白みがなかったのかもな......。
傘は.......大丈夫か。
まぁ、もし雪が降ったとしてもコンビニかどっかで最悪は買えばいいしな。
とりあえず、玄関から外に出て感じる空気的には何も降りそうにはない。
いつも通りにただただ寒いだけ。
「あれ? 森高さん。今からお出かけですか? しかもズボンがスーツ......」
ん? あぁ、山本さん。今日はまだ出てなかったのか。
「はい。ちょっと。山本さんは今からまたお仕事ですか?」
本当に大変だな。ちょっと罪悪感だ。
「はい。そうです。森高さんはもしかしてこの前の女性とデートとか.......?」
「戸田ですか? いやいや、あいつとは全然そんなんじゃないですから。ちょっと、乗り気ではないんですがどうしてもって昔の友達に急に誘われて今から飲みに。ほんと山本さんが今からお仕事って時にすみません」
飲み。別に嘘ではない。間違いなく酒を飲むことにはなるだろう。高い酒を。
「へぇー、いいですねー。いえいえ、いつも森高さんもお仕事頑張っているんですし羽目を外すのは大切です。ぜひ楽しんできてください」
「は、はい。ありがとうございます」
そして、今も目の前にはまるで聖母の様に微笑む黒髪で清楚な落ち着いた女性。
山本さんの姿。
別にクラブとかキャバクラとかで働いている人に偏見はないが、間違いなく彼女はそういう世界とは縁のない女性。
しかも今からまさに人の為、世の為になるお仕事に行くときた。
口が裂けても本当のことは言えない。
真剣に、そういうところに耐性がなさそうな分
下手をすればゴミを見る様な目で見られてしまう可能性もなくはないからな。
隣人としてそれはちょっと困る。絶対嫌だ。
癒し時間がなくなるのは嫌。
「目的地までは電車ですか?」
「ん? はい。電車で」
「な、ならどこへ行かれるのかはわかりませんが、途中まで一緒に行きません? もちろん森高さんが良かったらですけど」
「あ、はい。全然僕はオッケーです」
「やった」
そして本当に何だ。その天使な様な笑顔。
やばい。疲れが浄化される。そしてさらに罪悪感。
「ふふ、何気にこうやって二人で歩くの初めてかもですね。嬉しいです」
何だ。この人。
本当に天使か? やばい。生きているけどこのまま成仏しそう.......
「こちらこそ」
とりあえず、行くか。
でもクラブか。あいつが言うには大人の社交場みたいだし、ネットでもそんな感じの場所だとはわかったが、やっぱり緊張するな。
大丈夫だよな......。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます