第23話 向き合う覚悟
他愛ない話で時間を潰していると、程なくして仁科さんが部屋に入ってきた。部屋の中を見回し。俺たちが揃っているの確認するとゆっくり話し始めた。
「まずは急な集合に応じてくれて感謝する。誰一人遅れることなく、こうして集まってくれた君たちの勤勉さにまずは礼を述べさせてほしい」
「前説はいいからさっさと本題に入ろうぜ、上官殿。入隊したばかりの新人も交えた集合ってことはなにかあったんだろ。歓迎会って雰囲気でも無さそうだしなぁ」
「さすが石崎さん。分かった。では、早速、本題に入ろう。
昨日、そこにいる上村亮平少佐がここに配属されたのはみんなも知っての通りだ。
まだ、若いながらもここへ配属されたことにはわたし自身も正直、驚いている。そして、彼の実力がどれほどのものがあるか確かめたいと萩原元帥は仰られた」
「体力測定とかそんな生易しいものではなさそうですねー」
「その通りだ、平江くん。実は、以前より北陸に人が目撃されていてね。
ただ、あの地域は被害も甚大で現在は廃棄され、一般の立ち入りは禁止されているままだ。いずれは復興も考えているが、まだそこまでの余裕が無いのが現実だ」
話の全容が見えてきた気がする。
つまり、萩原元帥が俺にやれせようとしてるのは。
「早い話がそこにいる新人に調査に行けってことでしょ。とは言っても、過酷すぎませんかね。あの災害の生き残った子に、災害の爪痕を見せて調査しろとか」
先ほど『平江』と呼ばれた人が声を荒げる。
正直、言って俺もそんな場所には行きたくない。だが、もしかしたら、そこでなんらかの手がかりがあるかもしれない…。
「行きます。俺のことなら全然大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「そ、そうか。なら、いいが…無理だけはすんなよな」
「まったくわたしを無視して話をまとめないでほしいものだね。確かに、上村少佐の調査を萩原元帥は希望されているが、一人で行けとは言っていない。
わたしと石崎大尉、そして上村少佐の3人で行ってこいとの仰せだ。わたしは問題ないが」
「俺も構わねえぜ。今まで無関係だったが、ちょっと興味が出てきた」
「決まりだな。では、わたしが不在の間、平江大佐にここの事は任せてもいいかね?」
「全然、問題ございませんよ。いい報告、期待して待っておりますぜ」
「よし、そうと決まれば明日出発する。準備を怠ることのないように!」
まさか入隊して翌日にさっそく仕事とは…。
正直、萩原元帥に対しての思いが目に見えない恐怖として芽生え始めていた。
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