第22話 現れては消えて、消えては現れる
財津 八郎という人物は旧自衛隊に在籍、階級は当時、一等陸佐。
厳しさと優しさを兼ね備えたまさに文武両道のような方だったようだ。
彼は事件後、自衛隊を辞めておりそれ以降のことは何も知らないという
家族構成に関しては妻に先立たれ、娘を男手一つで養っていたがそれ以上の話を本人から聞かされてないため名前などの情報は何もない。
「どうだ。俺が知っている情報でなにかわかりそうか?」
「全然分かりそうにありません。むしろ、謎が増えたというか…どうして事件後に辞めたのか。あと、娘さんの存在も気になりますし」
「辞めた理由なぁ。事件から半年の間は軍事政権樹立のために過激派が政治家を暗殺したりといったテロ事件が多発していたから巻き込まれないうちに逃げたってのが俺の意見かな。実際、そういう理由で自衛隊を離れた人間は結構いたからなぁ」
確かに一人娘がいたのなら尚更、自分だけでなく娘にまで危害が及ぶ前に逃げるのは当たり前か。となれば、彼の消息をこれ以上辿るのは厳しそうだ。
せっかく見つけた唯一の手がかりでもあっただけにショックはかなり大きかった。
「そんな顔をするな。もしかしたら、またどこかで大きな手がかりを見つけられるかもしんないだろ」
「それはそうですけど。やっぱり、当時の記録が無さすぎてどうしたらいいのかわからないんですよね」
「気持ちは分かる。だが、意外と見落としているだけで案外大きな手がかりを見つけてるだけかもしれないぞ。もう一回、一から見直してみることだな」
大きな手がかりねぇ。簡単に言ってくれるけど本当に俺は見つけれてるのかな。
「辛い記憶かもしれないが当時のことをよーく思い出してみろ。そこになにかしらの食い違いが起きているかもしれない。
当事者だから分かることがあるってことは見方を変えれば、それ自体が都合が悪いと隠そうとするはずだ。結果として起きるのは食い違いだ。
なぜ隠してる? ここが違う。そこをよーく考えるんだな。トップがあんたを呼んだのもそこになにかしらの理由があるからだと俺は睨んでるぜ」
「あ、ありがとうございます。いま、教えてもらった部分を頭に置いてもう一回見直してみようと思います」
「あぁ、そうしてくれ。だが、その前に集合の時間だ。先にそっちを終わらせないとな」
言われてみればもうすぐ13時になろうとしていた。
「今回は全員に集合が掛かってるから初対面の連中もいるだろうが身構える必要はないぞ。みんな、いいやつばかりだからな。ただ、全員集合ってのはちょっとヤバいかもな…」
石崎さんは緊張を解そうとしているのか、気を引き締めろと言っているのかどっちなんだろ。まぁ、多分どっちもなんだろうな。
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