第2話 穏やかな日常

 花の高校生活がいよいよ幕を開ける!

中学時代には無かった新たな出会いがそこにある。そう考えただけで胸がワクワクで一杯になるというものだ。入学式を終えて、それぞれのクラスに移動する前に級友の名前を貼りだされたクラス表で確認する。

「これ、なんて読むんだ?」

俺の隣の席になる子の名前『蓼原真希』。名前からして女性なんだろうけど苗字が読めない。

上に小さく振り仮名がないか見ていると

「たではら、よ。たではらまき、それが私の名前」

「そ、そうなんだ。俺は上村亮平かみむらりょうへい。隣の席同士、これからよろしくな!」

「ふーん。ま、私には関係ないことだからどうでもいいけど。先に言っておくわね、私は勉強をするためにここにいるの。だから、気安く話しかけないでね」

性格は結構キツイ子みたいだ。

入学早々、この調子じゃ俺の楽しい高校生活は程遠いものになりそうだなと思えた。

それからは担任からの学校案内や行事などの説明が行われたが正直、内容は頭に入らなかった。理由は自分でも分かっている。

「なに?」

「いや、特に用ということはないんだけど。隣同士だからこれからよろしく…くらいは」

「言ったよね。私は馴れ合うつもりはないって。勉強する為にいるんだって」

「まぁまぁ、蓼原さんも落ち着いて。勉強しに来たのなら、その勉強を教えてくれる友人の一人や二人いたほうが効率も良くなるとは思わないかい?」

「それは…そうだけど。てか、誰よ、アンタ」

「僕? 僕は石井拓海。人生の遊び人さ」

蓼原さん、石井さん、俺のクラスには変わり者しかいないのかなー。そんなことを思いながら見上げた天井はいつもより高い位置にあるように見えた。


そんな俺たちではあったけどなんだかんだ一緒にいることが多かった。

時に勉強を教えあったり、テストの結果で一喜一憂したりと普通の高校生となんら変わりない生活を送れていた。

とても楽しく今までを振り返ってもあれほど有意義で満たされた時間は無かったように思う。

だからこそ、強く思った…神様は残酷だなと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る