第6話 友との別れ
目指す裏口はもうすぐそこ。
だが奇妙だと思うところがある。なぜ奴らは俺たちを追跡してこないのだ?
ここまで問題も無く来れたのはなぜなんだ。
「……い、おい!」
「え…あ、なに?」
「なにじゃないだろ。裏口はすぐそこだ。なにがあるかわからない以上、気を引き締めろよ」
「あ…う、うん。そうだね」
不安そうな蓼原さんの表情は俺と同じ考えなんだろう。こういうときに深く考えず目の前のことに集中できる拓海のことを少し羨ましく感じた。
「奴らは…いないようだな」
「ねえ、やっぱりおかしいよ。なにか罠があるんじゃない?」
「考えるのは後回しにしようって言っただろ!」
「でも…」
玄関に比べると彼らの存在がまるで無いことを前に蓼原さんの不安が爆発した瞬間だった。
このまま出口へ直進するのが正解なのかは正直、俺もわからない。でも、明らかに様子がおかしいのは一目瞭然だ。
「拓海、俺も蓼原さんの意見に賛成だ。奴らがいないか慎重に様子見しながら行くべきだと思う」
「あっそ…折角、亮平だけでも出してやろうと思ってたのに馬鹿じゃねえの? このままおとなしく従えばいいのに…ほんとバカしかいねえで笑える」
「拓海?」
拓海が高らかに手を挙げたのを合図に奴らが四方から飛び出し一斉に銃口をこちらに向ける。これだけの人数が一体どこに隠れていたんだ…。
「さぁ、真希。アンタが望んだ日常の崩壊だぜ。
そんな最高の贈り物を前に喜ぶどころか不安になっちまってもったいない女だぜ、アンタ。俺たちの道具になる代わりに願いを叶えてやったのに」
「どういう意味だ!」
「さあな? さて、真希。アンタに二つの道をやろう。一つはこのまま俺たちと来る道…変わりに亮平は助けると約束しよう。もう一つは二人ともこのまま死ぬって道だ。
ほんとは裏口から出たあとに隙を見て拐って雲隠れの予定だったんだが、その前に俺が茶番に飽きちまった」
「ねぇ、私を殺すって言ったけどその結果として損をするのはあなたたちよ。それでもいいの?」
「流石に賢いなぁ、アンタ。でも、安心してくれよ変わりとなる奴はいくらでも作れる」
なにがなんだか訳がわからないけど一つ分かるのは拓海は敵だということ。でも、どうして…?
さっきの行動、言葉は嘘に俺は思えなかった。
いや、それよりも今はこの状況をどうするかだ。
「蓼原さん」
「うん、分かってる。今、どうするべきかも……」
最後の部分がか細く聞き取れなかった。
その言葉が何だったのか聞くより前に彼女は動いていた。
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