第8話 変わりゆく世界のなかで

 あの日から2年が経過した。

俺は家族、友人、生まれ育った家、それらすべてをあの大地震で一瞬にして失った。

街は壊滅、残った住民も一人残らず死亡。生き残ったのは俺一人だった。

あの後、俺は唯一の生き残りとして政府機関や警察からの事情聴取が繰り返された。

そして、あの大地震は日本以外にも世界各地で起きていたことを知った。被害も日本と同じく甚大なものだったそうだ。

そんな大地震で唯一の生き残りである俺を世間は「奇跡の子」として大々的に取り上げた。

正直、そっとしておいてほしかったけどそんなことは許されなかった。

両親を失って友人まで失ったのに、世間の目からは奇異の目に晒されるうち、心は摩耗していく一方だったが今日まで耐えれたのは引き取ってくれたおばさんの優しさと復讐心があったからだ。


「いつまでじっとしているつもりだ。悔しくないのか、街を友人を奪われて」

「悔しいに決まってるじゃないか!」

「だったら、立て。これから日本は大きく変わっていく。俺たち自衛隊が軍としてこれから日本を牽引していくことになりそうだ」

「それって……」

「まだ確定事項ではないがほぼ間違いないだろう。おかげで俺たちもあっちこっちと大忙しさ。奴らに対して復讐したいと言った気持ちがあるのなら力を持て。

武力だけじゃない。それなりの地位が無いと厳しいぞ。それはお前も分かっているはずだ」

「はい……」

彼が言っているのは、あの日経験したことすべてを話したが結局、徹底した箝口令が敷かれ、公にもされなかったことだ。それはつまり重要機密として処理されたことを意味していた。

「もし、この件に関わり続けたいのなら自衛隊に入れ。茨の道かもしれんが、出来る限りの支援はしてやろう。ま、その前に成人することが先だが。二年…長く感じられるかもしれないが耐えることも時には必要だ。俺の連絡先を渡しておく、時が来たら誰よりも早く俺のところへ連絡をしろ」


それが俺をあの日、保護してくれた人……仁科さんとの約束だった。

あれから二年。ようやく、俺はスタートラインに立つことができる。長かった。

たった二年の間に社会も大きく様変わりし、軍が政治実権を握っている。

でも、そんなことは関係ない。俺がやることはただ一つ。

それを果たすことだけを今は、考えろ。

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