第11話 いつまでもアンタのことを待ってる
家族との永遠の別れ。それは自分の人生において二度目となる。
一度目は一方的に家族を殺されたとき。
二度目は自分の夢を叶える為に。
本音を言えば、家族と別れたくなどない。
変わらずこれまで通りのまま夢を追い続けたい。だが、それは許されない。
「そろそろお時間になります。答えは出ましたか?」
「俺は…」
「行きなさい。アンタの夢なんだろ。こんなところで諦めてどうするんだい」
「おばさん……」
気付くと部屋の入り口におばさんが立っていた。
「部外者の立ち入りは禁じたはずですよ」
萩原元帥が鋭い眼光でおばさんを威圧するが動じる様子もなく、強い眼差しのまま言葉の矛先を萩原元帥へと向けた。
「悪いけどこれは親子間の問題だよ。私とこの子が納得して縁を切るのが一番最善なんじゃないのかい? それとも、どちらかに禍根を残したまま縁を切らせるのかい?」
「……分かりました。仁科、少し席を外しましょう。我々がいては話しにくいと思いますからね。5分だけ猶予を与えますのでじっくり話し合ってください」
苦虫を嚙み潰したような表情で部屋を後にした元帥の後を仁科さんが慌てて追う。
「やれやれ5分もいらないんだけどね。私は一言だけアンタに言いたいんだよ」
「俺は5分じゃ足りないけどね…」
「まったく困った子だよ。いいかい。親子の縁を切っても私らが赤の他人になるだけで会えなくなるわけじゃない。辛くなったらいつでも帰ってきていい。
母親として、ではないけど一人の友人としてそのときは暖かく迎えてやるから。だから、アンタは自分の夢を追いかけなさい。私はここでアンタのいつになるかわからない帰りを待っているからさ」
「うっ……うぅ……ぐすっ」
「ほら、泣くんじゃないよ。これから頑張るんだろ。泣くのはこれで最後。いいね?」
おばさんが俺を優しく抱きしめる。その温もりは俺が忘れていた温もり。
微かに震える手からはおばさんも泣きそうなのを懸命に抑えているのだろう。
それからしばらくは俺は時間を忘れて、ただ泣き続けた。
「話はまとまったみたいだな」
「そうですね……」
仁科の表情は決して晴れやかなものでは無かった。
どこか遠いなにかを見つめるような視線の先にあるものとは一体。
「これで役者は整いましたか」
萩原は仁科、亮平を交互に見比べ静かに空を見上げ、芝居がかった口調で誰に言うわけでもなく呟き、笑みを浮かべる。
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