第26話 未来へとつなげるモノ

北陸へ向け、輸送機は飛び立った。

輸送機の中には武装用の銃と防弾チョッキが積み込まれていた。

そして、もう一つ機体に充満するもの…それは元帥への疑念である。

仁科も不安と疑念を隠しきれず、先ほどから落ち着かない様子だ。

「なぁ、どうして元帥はあそこまで上村少佐に過剰に執着するんだと思う?」

「都合が悪いから、だろうな。たぶん、本人もそのことには気付いてるはずだ。

だが、まるでそのことを表に見せようとしない。いや、が正確かもな」

「当たり前ですよ。あの子はまだ、18なのですよ」

そう言いながら、二人の視線は下の景色を見るべく後部にいる少年に向けられる。

目を背けたい、見たくないであろう災害の爪痕を見ようと必死だ。その姿は痛々しすらあった。

「俺たちがあの子を守る。何があるかは知らんが、この任務は相当にヤバい気がする。おまえももう少し、落ち着け。でないと、肝心な場面でしくじるぞ」

そう言って頭をくしゃくしゃと撫でまわす石崎さん。

大抵、石崎さんに不安があるときはこうして誰かの頭を激しく撫でまわすことを仁科は知っていた。

落ち着け、と言いながら本人が一番不安なのかもしれない。

「さてと、俺は仕事をしてきますかね。上官殿は着陸までに気持ちに余裕を持てるようにしとけよ」

「仕事って?」

「あの子に銃の使い方や持ち方を教えるんだよ。必要ないこと、覚えなくていいことと言いたいが軍人となればそうはいかないだろ。今からの初任務を前に扱えないじゃ、何かあったときが大変だろうが」

「嫌な仕事して頂きありがとうございます…」

「気にするな。それが年長者の役回りだ」 

重そうに腰を上げ、彼へ歩み寄る。

何を話しているのかは分からないが、石崎さんが楽しそうにしているのは傍目からも一目瞭然だ。

石崎さんが話す内容を一つひとつ真剣に聞いている彼とそれを楽しそうに教える二人のやり取りはまるで親子のようだと思う。

こうして、未来が形作られるんのだ。これからを生きる彼らにとってより良い未来となるようわたしもわたしに出来る最大限を尽くさねばな。

石崎さんを老兵というつもりはないが先人に負けているようではじぶんもまだまだだと思う。ここから先、少しは頼れるところを見せたいものだ。



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