5
入り口に立っていた男達の脇を過ぎ、廃カラオケ店から離れる。
ああ、かなりしんどい事になりそうだ。
見てはいないが、血だらけの男子トイレが頭に浮かぶ。
一歩間違えば自分があんな目に遭っていたのだ。今更ながらに手足が震えてくる。
「……だからこそ」
御厨みくりは殺された?
そんな疑念が胸裏に浮かぶ。
ノブレスカイトなんてイカレタ連中の集会に出ていたのなら、御厨が事件に巻き込まれた可能性はある。
大いにあるどころか、あのオニとかいう奴は御厨みくりを知っている人間を容赦なく捕まえようとした。
形が変わる程に殴られた、御厨の顔が目に浮かぶ。
「バカな事を。御厨の死に顔は綺麗なものだったじゃないか」
何をバカな事を……警察が解決しなかった事件を、俺がどうにかできるものか。
「っ!!」
突然鳴り響くスマホの着信音。
慌てて確認すると、御厨のスマホに電話が掛かってきていた。
「お前がさっきの奴だな」
気を抜いていたことを後悔する前に、後ろから声を掛けられた。
「……君が彼氏くんか」
御厨のスマホには『彼氏くん』の文字が躍っている。
俺を呼び止めたのは、小柄で痩せ型の男。
彼の手には発信中のスマホがある。
「ちょっと面貸せよ」
男が発信を切ると、御厨のスマホの着信も止まった。
この男が彼氏くんで間違いないのだろう。
話は聞きたい。
しかし、危険な事には首を突っ込みたくない。
「ん?ああ、あいつらは関わらせねーよ」
彼氏くんは廃カラオケ店を顎でしゃくると、別の方角に歩き出した。
見た感じこの男もノブレスカイトの関係者だろうか?
――ついて行くのは危険だ。
「分かった。ついて行くよ」
一難を凌いだとは言え、俺は監視カメラに写ってしまっている。
何も手を打たず、ジャケットの男達に学校に来られると厄介だ。
誰かしらノブレスカイトの知り合いを作っておいた方がいい。
そう考えて小柄で痩せ型の男の後に続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます